第17話 鋼の牙
鋼の牙は英雄と言われるパーティーだけあって中々出会えなかった。
私たちは作戦を変更して討伐先に先回りして捕える事にした。
予定では今日の討伐は迷いの森に出没するサイクロプスだ。
「お姉さん、サイクロプスってどんなモンスターなの?」
「一つ目で角を生やした大きな化け物よ」
私は一つ目小僧の大きい版を思い浮かべていた。
そんな可愛いモンスターもいるものなんだ。
それもペットにしても良いかなぁ~と考えていた。
「ガオォー!!!」
しかし現れたサイクロプスは想像とはまるで違った。
異様にグロテスクだし、ちっとも可愛くない。
やる気をなくした私はおっさんに討伐を任せた。
しゃがみこんで小石をイジイジしている。
任されたおっさんは「うわぁー!」と言いながら必死に逃げまどっていた。
「ちょっと!ちゃんとやりなさい!」
「はい。わかりました…」
私は言われた通りサイクロプスにとろろを放った。
『ビチャビチャビチャ…』サイクロプスは絡みつかれて藻掻いている。
可愛くないモンスターなんて地べたで蠢いてるのがお似合いだ。
「これはどんな状況なんだ?」
冒険者のパーティーが現れ、この状況を見て呆気に取られていた。
このパーティーのリーダーっぽい20歳くらいのお兄さんは、高そうな防具とカッコいい剣を装備して両手に女性を侍らせている。
少しはやりそうな精悍な顔つきをしているが、かなりチャラそうだ。
後方にいる控えめなおじさんは30半ばくらいで見た目と同様に装備も地味な感じだった。
表情も変えずに突っ立てると思いきや、冷静に辺りを分析している。
そして魔女っ娘の格好をしたお姉さんと僧侶の格好をしたお姉さん。
どちらとも20代くらいでキャピキャピして、余り賢くはなさそうだ。
結構な美人だが私たちのお姉さんには敵わない。
「あなた方が鋼の牙?」
「そうだが…あんたら何だ?」
お姉さんの言葉に鋼の牙のリーダーが怪訝な顔を見せる。
不気味に微笑むと、お姉さんは私に目配せした。
「うぉりゃー!!!!」
私はいつも以上に張り切ってとろろを飛ばした。
鋼の牙のパーティー達は「キャー」とか「うぉー」とか言いながら逃げまどっていた。
しかし全ては手遅れだ。パーティー達はとろろに絡みつかれ足掻いていた。
「何なんだ!これは!」
「あんたら誰なんだよ!」
「助けてぇー!」
「気持ち悪~い!ネバネバする~!」
様々な声が順序も無く響き渡る。
お姉さんは鼻高々に4人を見下していた。
「参ったか!この無慈悲な奴らめ!」
その言葉にピンとこないのか4人はお姉さんの顔をボケーっと眺めていた。
ひげ根に縛り上げられる姿にも、どこか納得いかないという顔を浮かべている。
「お姉さん…もしかして、この人たち酷い事をしたっていう自覚が無いんじゃ…」
確かにそうかもしれない。
私もお姉さんから話を聞くまではドラゴンの事情など考えていなかった。
「う~ん…とにかくギルマス含めてドラゴンの元へ連れていきましょう…」
寂し気なお姉さんの顔に強い思いが込められていた事を私は知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます