第15話 ドラゴン
首都からかなり離れた森の中にその姿はあった。
山の様な巨大な体はとろろによって埋め尽くされていた。
藻掻いてはいるようだが強力な粘着力で蠢いているようにしか見えない。
お姉さんは無数のひげ根を伸ばすとドラゴンの頭に突き刺していった。
するとドラゴンは足掻く事を止めて大人しくなっていく。
ドラゴンの脳にアクセスして操っているのだろうか?
「もう大丈夫よ。とろろを吸収して」
私は無数の山芋を伸ばしとろろを吸収していった。
姿を現したドラゴンは大人しくしている。
「ドラゴンを操っているんですか?」
「いや、話しているのよ」
どうやらお姉さんはドラゴンの脳と直接コミュニケーションを取っている様だ。
巨大なドラゴンはお姉さんの前で犬が伏せる様な格好で控えていた。
「うっ…うっ…うっ…」
暫くするとお姉さんは涙を流していた。
話の内容はわからなかったが悲しい出来事を語られているに違いない。
「どうしたんですか?」
「この子、可哀そうなのよ…えぐっ…えぐっ…」
お姉さんの話ではこのドラゴンはまだ子供の様だった。
人間で言ったら13才くらい。そして親を失っていた。
親が亡くなった原因の一端は人間による環境破壊。
首都から流れ出た汚水によって住処にしていた沼地は次第に荒れ果てていった。
汚水に毒された水や食料を取り続けドラゴンたちは体力を削られていく。
身体の自由が利かなくなると、首都からやってきた冒険者たちがドラゴンたちに薬を渡す。
しかしそれは薬ではなくドラゴンたちを討伐する為の毒だった。
結局は何もかも仕組まれた話だった。
環境破壊などではなく最初から毒を流されていた。
人間たちの罠にまんまとハメられていたと気付いた時には後の祭りだった。
力を無くしたドラゴンの元へ薬を渡した冒険者たちが現れ、両親は討伐されてしまう。
両親に匿われたドラゴンは難を逃れ、復讐を誓い首都を壊滅させようと今に至る。
「大変だったのねぇ~えぐっ…えぐっ…」
お姉さんの涙に誘われたのか、ドラゴンも大粒の涙を流している。
こぼれ落ちる涙が大きな水溜まりになっていた。
「まったく勝手な話だわ!許せない!」
それには私も同調した。
ドラゴンたちは人に迷惑にならないようにと人里離れた沼地を住処にしていたのだ。
討伐などといって正義感を出しているが虐殺と変わらない。
「人間たちを懲らしめるんですか?私も協力します!」
私はいつになく張り切っていた。
「オジサンも協力しなさいよね!」
ドラゴンにビビって影を潜めていたおっさんにも活を入れる。
「は、はい…」
おっさんは気乗りがしないのか返事が曖昧だった。
腹が立った私はおっさんのお尻をポコポコと蹴とばしていた。
「イタ!イタ!やりますヨ!やりますってば!」
おっさんが痛がる滑稽な姿を見てほんの少しだけドラゴンが笑ったような気がした。
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