第14話 決戦
王宮の王の間で私たちは正式にドラゴンの討伐を依頼された。
国王の前に跪き私たちはその依頼を承諾した。
まるで式典の様な形式じみたやり取りは延々と続き、そして恙なく終了した。
新月の夜にはまだ7日程の期間があった。
王宮の客間を提供された私たちはドラゴンの討伐までのんびりと過ごしていた。
豪勢な客室の豪華なソファーで、寝転んで過ごす姿はまるで穀潰しだった。
これからドラゴンと対峙するという緊張感はどこにもない。
「オジサン…それ取って~」
女神とは程遠い、ぐうたらな姿に王宮に勤める者達も呆れている。
不自由の無い扱いは私の生活習慣をとことん堕落させていた。
「お姉さん、ドラゴンをどうやって討伐するの?」
「生け捕りにしましょう」
私にはドラゴンをどうやって生け捕りにするのか想像が付かなかった。
倒す事だってイメージできないのにどうするのだろうか?
~そして新月の夜~
月明かりが微かに照らされる暗闇の中で私たちはドラゴンを待ち構えていた。
城壁の屋上の通路には私たち以外に弓を構えた兵士たちが大勢スタンバイしていた。
居壁の隙間から引かれた弓矢が上空に向けて標準を合わせている。
「そろそろ現れるわよ!」
お姉さんの言葉に周囲に緊張が走った。
輝く月が巨大な影に覆われていく。
私の想像を遥かに超える巨大な影は辺りを暗闇で包み込んだ。
上空を大きく旋回するその姿は大きな鳴き声と共に周りの人間を威圧する。
真っ赤な姿のドラゴンは街を覆いつくす程の巨大なものだった。
パニックになる兵士たちが合図も無いのに無造作に弓矢を放ち始める。
放たれた弓矢は硬い鱗に阻まれて貫くことなく弾き飛んでいた。
「とろろを出すのよ!」
「えっ?」
私はきょとんとしていた。この場面でとろろを出してどうするのだろうか?
「とろろをトリモチの様にイメージしてドラゴンに向けていつまでも放ち続けるのよ!」
言われた通りトリモチをイメージしてドラゴンに向けてとろろを放った。
『ベチョベチョベチョ…』
いつもより粘着力がありそうなとろろがドラゴンに向かって放出される。
ドラゴンの体に絡みついたとろろはその巨体を埋め尽くしていった。
粘着力でその動きは次第に鈍くなっていく。
必死に藻掻くその姿は蜘蛛の巣に絡みついた虫の様だった。
翼にも絡みつき羽ばたく事も出来ないのか、ゆっくりと下降していく。
苦し紛れに炎を出すが既に手遅れだった。
『ドスン!!』
巨大な地響きと共にドラゴンの体は地面に叩きつけられる。
地上に叩きつけられたドラゴンの姿はとろろに覆われ本体が見えなかった。
「さあ、行くわよ!」
歓喜をあげる兵士たちを横目にお姉さんは叫んだ。
「えっ、どこに?」
「ドラゴンのところよ!」
不敵に微笑むお姉さんの表情は冷酷なものだった。
悪魔を連想させるその姿に私はブルブルと震えていた。
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