第13話 王宮
王宮に向かう馬車の中で私たちは事の成り行きを話し合っていた。
国王を前にして話し合うには難儀だった為、お姉さんのひげ根を使ってコンタクトを取っていた。
《いったいどういう事?》
《さあ、お告げとか言ってたから誰かがあんたを女神だとでも言ったんじゃない?》
《だいたい女神って何?》
《その名の通り女性の神って事じゃない?》
私は開いた口が塞がらなかった。
この見すぼらしい格好のどこが女神に見えるのだろうか?
それに少し前までは首輪と鎖に繋がれた奴隷だったのだ。
「あのぉ~お告げって何なのでしょうか…?」
私は腫れ物に触れる様に国王に話しかけた。
気分を害させていきなり「打ち首じゃ!」なんて事になったら堪ったもんじゃない。
「うむ…数日前の事です。王宮に代々伝わるお告げの書に、この国の危機とそれを救う女神の事が突如、記されたのです」
国王は気の良いお爺ちゃんの様に私の質問に答えてくれた。
悪い人では無いのかも知れない。私の心に希望が広がった。
「そのお告げにはこう書かれておりました。新月の夜、1匹のドラゴンが現れ全てを焼き尽くし国を亡ぼすであろうと」
そのお告げの書というのは信頼できるものなのだろうか?
国を亡ぼすようなドラゴンを私が何とかできると思っているのだろうか?
「そして窮地に陥った国の危機を救うのが旅人に扮した女神さまであると」
「それが何故、私であると?」
「お告げの書にはもっと詳しい事まで書かれております。今日のあの時刻に串焼きの肉を頬張る売女を連れた汚らしい幼女が女神様だと…」
私の希望はものの見事に崩れ去った。
この国王の口に山芋を詰め込んでやろうかと思った。
隣のお姉さんも怒りから体をプルプル震わせている。
「私にドラゴンを倒す程の力はありませんよ!」
「私にも信じられないのですがお告げの書は外れる事がありません」
お告げの書に随分信頼を寄せている様だ。
今までにも沢山の国の危機を救ってきたのだろう。
そうしてる間に馬車は王宮へと入って行った。
物々しい厳重な警備を抜けると、見たことも無い程の豪勢な建物が立ち並んでいる。
豪勢な建物にはあちらこちらにキラキラと光る装飾品が埋め込まれている。
贅沢三昧の光景に私はキリキリと奥歯を食いしばっていた。
しかし私の能力でドラゴンを倒す事などできるのだろうか?
ドラゴンの鱗は硬く鋼鉄すらも通さないと聞いている。
それに口からは全てを焼き尽くす程の炎だって吐くのだ。
《ドラゴンなんて倒せるの?》
《倒せない事はないと思うけど…》
珍しくお姉さんは歯切れが悪かった。
それ程の強敵という事なんだろう。
《倒さないでペットにしましょう!》
聞き違いだろうか。何か凄い事を聞いた気がする。
私は馬車の外に目を向けて遥か遠くを眺めていた。
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