第7話 精霊の力
オバサンの姿は別人の様に生まれ変わっていた。
会った頃の何処か思いつめた虚ろな感じは今はどこにもない。
ハツラツとしていて他愛のない動きにもキレがありキビキビしている。
少し前の拷問めいた悲惨な出来事は無かった事の様に清々しかった。
「どう?凄いでしょ」
お姉さんの様子は鼻高々だった。呆然とする私を見てクスっと笑っている。
得意げな様子のお姉さんを横目で見ながら私は「どんな能力なんだよ!」と思っていた。
「オバサンは今どんな気分なんですか?」
「ああ…そうだね。生まれ変わったみたいだよ…」
「気分は晴れましたか?」
「何を言ってるんだい!晴れる訳ないだろう!絶対に復讐してやる!」
オバサンの鬼の様な形相は禍々しかった。
心を癒したんじゃない。パワーを与えただけだ。
復讐に燃えるその姿はメラメラと燃えていた。
「これじゃあ、何も解決してませんけど…」
「解決⁈私、解決するなんて言ってないけど?」
「このままにしたら復讐の権化になりますよね?」
オバサンは「復讐じゃあ~!」と言いながら辺りの草花に当たり散らしている。
活力が増幅して、ただの荒くれ者みたいだ。
収拾のつかない状況をどうするのだろうか?
「復讐の権化だって良いじゃない。生きる気力が湧いたんだし」
いや、そうゆう問題ではないだろう。
「復讐に憑りつかれた荒くれ者なんて言い訳ないじゃん!大勢の人間を巻き添えにして自滅するに決まっている」
「じゃあ、どうしろって言うのよ」
「せめて犯人を見つけてあげましょうよ。オバサンの心も晴れると思うわ」
お姉さんはしかめっ面で瞳をクシャクシャにさせながら口を尖らせていた。
腕を組みながら私からそっぽを向けている。
大人げないお姉さんの様子に私は呆れながらも宥める様に背中を撫でてあげた。
「もう!一回だからね!」
何が一回なのかわからなかったが、お姉さんの頭から触手のような物が出て大地に向かって伸びていく。それは山芋から伸びるひげ根によく似ていた。
伸びたひげ根が大地から光るものを吸い込んでいく。
キラキラと光るものがひげ根を通してお姉さんの頭に集中する。
「大地に張る根っこに繋いで情報を集めたの」
さらっと言っているが気色の悪い状況に私はドン引きしていた。
血の気の引いた顔からは表情は消えていた。無感情の冷え切った目で呆然と眺めていた。
「これで犯人の目星が付いたわ」
「根っこで犯人がわかったんですか?」
「あのね。大地には無数の根っこが張り巡らされているの。地上で起こった出来事は大地を通して伝わって記憶してるのよ」
何のことだかわからなかったが凄い事なんだろうなぁと感心した。
お姉さんは褒めて欲しいのか餌をねだる犬の様に私の様子を伺っている。
「凄いですねぇ~それで犯人は誰なんですか?」
「ふふふ…犯人はバンパイアよ!」
「バンパイアって実在するの?」
お姉さんは得意げだったが私は疑いの眼差しを送っていた。
モンスターがいるのだ。バンパイアがいたって不思議ではない。
しかし、お姉さんの話には根拠がない。
「いるわよ。普段は人の姿と変わらないから見分けが付かないけどね」
「今どこに居るかもわかるんですか?」
「もう捕まえてるわよ」
そう言うとお姉さんから伸びたひげ根のようなモノが頭に収納されていく。
伸びきったひげ根は大地からシュルシュルと巻き取られていた。
しかしその先端部分に差し掛かるとボコッと鈍い音が大地から響く。
現れたのはひげ根に絡みつかれて動くことのできないおっさんだった。
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