第24話

チュンチュンと小鳥がさえずる音が聞こえる。

微睡みの中でゆっくりと意識を浮上させると、目の前には絶世の美少年がいた。


そうだ、昨日は遥の部屋に泊まったんだった。

時計を確認すると時刻はまだ5時を過ぎたところであった。いつもならまだ二度寝をし、惰眠を貪るところであるが、一度部屋に帰り制服に着替えないといけないことや爽の朝ごはんのことを考えるともう起きた方が良いだろう。

遥を起こさないようにゆっくりとベッドを出る。


「真澄…?」

静かに出たと思ったが、やはり揺れで起きてしまったようだ。小さな声で僕の名前を呼んだのがわかった。

「遥。ごめん、起こしたね。」

「ううん。…今何時?」

「まだ5時だよ。寝てても大丈夫だよ。」

目を擦る遥の頭を撫でて二度寝を促すが、遥は首を横に振り否定の意を表す。

「真澄…送る…。」

どうやら僕を寮まで送ってくれるつもりらしい。


遥は制服に、僕は昨日着てきた部屋着に着替え、部屋を出る。

「送ってくれなくても別に良いのに…。」

「いーいーの!僕が送りたいんだから!それより!どう!?僕可愛い!?」

昨日泣き腫らしたことを気にしているのか、何度も鏡を見て僕にも確認をしてくる。

「可愛いよ。」

「まあね!ちゃんと目元も冷やしてて良かった。」

ふふんと自信に満ち溢れた顔で笑う遥に、やっぱり遥にはこっちの方が似合うななんて考えていた。


朝の早い時間であるため、澄んだ空気が鼻を通る。まだまだ朝は冷えるなぁと薄い布に包まれた二の腕を擦りながら考える。

たわいもない話をしながら寮の自室に帰ると、冷蔵庫の中をチェックする。

「爽君はまだ寝てるね。」

「まぁまだこの時間だからね。それに爽は起きるのももっとギリギリなんだよね。」

うん。これなら遥の分も朝ごはんが作れそうだ。

「遥、朝ごはん食べていく?」

「え?良いの?」

「うん。まあ洋食で良ければなんだけど。」

「全然気にしない!!食べる食べる!わー!真澄の手料理なんて初めて!」

わくわくと効果音が付きそうなほど喜んでくれると、こちらも嬉しくなってくる。

ささっと制服に着替えるとエプロンを身につけて朝食の準備に取り掛かる。

「何作るの?何か手伝おうか?」

「遥はお客様なんだから、座っててくれて良いのに。」

「でも暇なんだもーん。ねぇ何かなーい?」

「ふふ。じゃあ飲み物入れてもらっても良い?」

「任せて!粉とかはどこにある?」

僕が作っている間に遥がカフェオレやコーヒーを入れてくれ、いつもより早く準備が終わる。


「爽君はまだ起きてこないの?」

料理も並べ終え、さあこれから朝食だという時には時刻は7時を指していた。

「本当だね。いつもならもう起きてくるはずなんだけど…。」

のんびりとマイペースな爽であるが、そろそろ起きておかないと遅刻してしまう。

昨日は猫に会いに行くと言っていたから夜更かしをしたんだろうか。

「ね、僕が爽君を起こしてきても良い?」

「それは別に構わないけど。」

「良し!じゃあ起こしてくるね!」

遥はニヤリと何かイタズラを思いついた顔で爽の部屋まで駆けていく。




「わぁぁぁぁーー!!!!」

数秒後、僕らの部屋には爽の絶叫が盛大に響いた。

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