第17話(遥視点)
僕が真ちゃんを好きなのは周知の事実となったが、本人には告白することが出来ず黙ったままでいた。当の真ちゃんは、噂を知らないのか知ってて何も言わないのかは分からないが、振る舞いが変わることは無かった。
僕たちは結局、友人のまま中等部へと上がることになった。
中等部からは寮生活になるので、同室にならないかななんて考えていたのだが、僕は向日葵寮、真ちゃんは牡丹寮に入寮することが分かり、その夢は砕かれてしまった。
「君が美作遥君?よろしくね。」
「よろしく。」
その代わりに同室となったのは僕と同じ可愛い系の子だった。
「えっと…。」
「あは。初めましてだよね、優希っていうんだ。」
「ごめん…。」
「いやいや、僕は目立たないし、知らなくて当たり前だよ。」
自慢ではないが、僕は可愛かった。
幼稚舎の頃からそれは現れており、一緒にトイレに入るのが恥ずかしいと言われたり、女の子と間違えられることも多々あった。
そのため、自分が目立っているという自覚もあり、1度も話したことの無い優希が自分の名前を知っていても何も不思議に思わなかった。
ここでふと気になったのが、真ちゃんの同室の人はどんな子なんだろうということだった。
僕は真ちゃんのことが好きだと公言しているが、真ちゃんはそうではない。これから寝食を共にする相手が真ちゃんのことを狙ったらどうしようか、反対に真ちゃんが好きになったらどうしようか…と、不安が沸き起こっていた。
「これからの生活のことなんだけど、家事とかは出来る?」
「まぁ、一応…。」
今後の話し合いの時もその事ばかりが気になって、心ここに在らずという感じであった。
何度か聞き逃してしまい、その都度聞き返しては優希を困らせてしまった。
「じゃあ、分担とかはこんな感じかな?」
「それで構わないよ。あ、部屋の荷物の整理をしても良い?」
「うん。どうぞ。」
話し合いが終わったことを確認し、部屋に入ると真っ先に真ちゃんに電話をする。
『もしも…』
「もしもし!?真ちゃん!?ねぇ、真ちゃんの同室の子って誰!!?」
電話のコール音が途切れ、真ちゃんが出るやいなや質問をぶつける。
「名前は?可愛い系?綺麗系?」
『…どっちも、違う…。』
「そうなの!?えっ?名前は!?」
『宝条…颯…。』
その名前は聞いたことがあったし、何より1度見たら色んな意味で忘れられない男だった。
僕と同じく幼稚舎からこの学園におり、同じように外国の血が入っていてブロンドの髪をしていた。
でも、風貌は全く異なっており、僕とは正反対の意味で目立つ男だった。頭脳もずば抜けていて、小学生ながら研究論文を出しただとか、アメリカでは飛び級で高校生を終わらせただとか騒がれていた。
そんな宝条(今は会長って呼んでるけど)が同室だと分かり、僕はすごく安心した。
だって、宝条は男同士の恋愛に興味が無い。ましてやガタイのいい真ちゃんだ。間違っても惚れることはないだろう。
そう確信すると、とても嬉しくなった。
真ちゃんを誰にも取られない。
それは、僕にとって何よりも幸せだった。
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