第3話 翌日の会社にて

川のせせらぎを耳に入る宿しながら、斜め後ろから魅入る。この角度からムッツリ眺めるのが好きだ。

胸星人なら、真横か上面なんだろうが、私は違う。尻星人であり、華奢な肩からうなじと横顔が好きだからだ。

なるべくうっすら眺めて僅かに満足と興奮をしてから心を鎮めて、「今日はそれ程暑くないなぁ」と天気のような無の心へと導きつつ、まだ恋愛に発展してない相手へと身も心もレベルを合わせていく。


「そうね」で終わるか、「そうね、よかったね」と一言足してくれるかで、こちらのテンションも僅かに高めに推移することが出来る。

 そして彼女はきっと、足してくれる。もう既にそこまでの関係にある。つまり、友達程度の関係だ。


しかし、人間。魔が差すとはこういうことか


頭では平凡に妄想で済ますつもりでも、突き動かされて… こうなるのだ

斜め後ろから眺めてて、いつの間にスイッチが通電へとジワーっと、本体を温めだしていたのだ。それは車のアイドリングより、もっと大人しくもっと手前の段階。イグニッションキーをONにしただけ。まだエンジンを動かしてない。


そう、電力をONにし、エンジンオイルのマークが点灯、異常なし。バッテリーマークも点灯、異常なし、ブレーキのマークが点灯、異常あり。


それには気付かない、いつものルーティンが異常なく進んでいると、流れのままに意識も曖昧に、発車オーラーイへとなんの疑いもなく流れていく。

 視線は、あの頬を斜め後ろから眺めている。振り向く気配を感じながら、意識はお互いの腰の高さに重くどんよりと漂っている。


振り向いたらヤバい。

いやしかしそれまでなら我慢出来る

目さえ合わなければ

目に笑みの光も無ければ

そう、何もなければ


もう無意識に言い訳してしまってる事に、気付きさえしない自分がいる。気付かないふりの自分かもしれない。


目を合わせられない

下を向く

下を見てしまった

俺の好きなのがあるのに


あーやばい。

バツイチか。過去の経験はどうなんだ

大人しい印象だけどバツイチだったな

どうしよう。

妄想がエンジンスタートONか

それとももう暖機は始まってるのか

息が。暖かく。もうフカしてるのか。

前へ接近するのか

ブレーキは?

パーキングなのかDriveなのか

ここは会社なのに

会社のちょっと皆から死角なだけの


魔が差すってスローモーション

まがさすってすろーもーしょん

ピタリ ビッタリ

ぴたり ぴったり

スローに

すろーに

バツイチとバツなしが魔が差した

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