第2話 帰宅
仕事での疲れの中に、甘酸っぱい思い出を切りとって、ギュウギュウ隅に押し込みながら、膨らまないように固めるように小さくして、それに反比例するように、家の事を少しづつ考え思い出し、家庭の顔と心に戻っていく。
車を走らせて40分でつく。走りなれた道ならいつの間にか着いてしまうものだ。
だが途中でコンビニへ寄る。そこでちょっとつまんで腹になんか少し入れたりすることで、会社と家とのスイッチが入れ替えれる
妻に文句はない。ただ自分の好みとかに見た目や会話を合わせてくれてないような気がするだけだ。
そらそうだ、妻とはいえ、彼女も独立した人間だ。自分の好みもあるし、自分の話したいこともある。
家に着けば、お金のこと、子供のこと、考えることは自然と浮かんでくる。それに会社で浮気をしてきたわけじゃない。仕事と仕事の励みを妄想しただけだ。
自分はいい夫でいい父かは分からないが、何があっても家庭を壊したり捨てたりするつもりはない。何よりも大切なものだ。
私の力にかかってくる部分は大きい。なんとかなる、なんとかする、そんな気持ち、意気込みだ。それを、壊さないように自分にも言い聞かせて固め続けて大人になっていく気もする。
所詮男も弱いものだ。強がってなんぼだ。
出来れば、家庭は幸せな笑いが溢れていてほしいとどんな男も願っているものだと思う
勝手だが、妻の愚痴や苛立ちの声とかは聞きたくないと思ってしまう。聞けば、俺のせいだ。妻を幸せに出来てない、そう思ってしまう自分がいる。
そう思わず、ぐちを聞いて、そうそうと頷いたりしてればいいんだよ!と心の中の赤の他人がアドバイスしてくれる。
でもやはり落ち込んでしまうのだ。そんなときに、自分に優しく微笑みかける幻の女性を追い求めるように視線を天井に向け、だからこういうのは駄目なんだよと自分を叱って、何故かそれで、心の平穏が取り戻せる。
なんか家に帰って毎回こんなくだりを行ってるのかなと、ふと思い返してみるが、それも詰まらない態度になると中断する。
そして、子供の話へと何気なく移っていって、夫婦の会話から、家庭の会話へと、パパママへとなっていくのだ。
一緒に暮らすほど、なぜにこんなに男と女は違うのだろうと思う。
恋愛中は同じ事を思って欲しいと思い、
振られる相手には、一見会話が合ってもその底辺に異質の源流が冷たく平行線に流れるのを脳の奥で予感し、
結婚すると、細く交わった川がいつの間にか太く深く、氾濫の危機や、どっちの支流の川なのか分からなくなり、主導権争いにも例えられるのか、気付けば、お互い川の対岸からお互いを見つめながら過ごしている。
川が畝って荒れて見えるときもあれば、穏やかなながれにもなる。
それでいいのだ。でも
きっと恋は違うのだろう。と不埒に意地悪に思い浮かべてしまう。
きっと恋は、清流の小さな湧き水が産まれい出るような。そんな瞬間に立ち会いながら、眺めたり、手で掬ったり、毒がないか嗅いだり舐めてみたりして、少しづつ一本の流れになるように、手で水を汲んでは流して作っていくのだろう。
そして、冷たさが触って、生ぬるくなって行くことを望みながら、冷たさにハシャギ、騒ぎ、震えたりもしながら、いつしか腰まで浸かるような流れと、冷たさへの慣れに、身を任せられるようになっていくのだろう。
それは、自分で作っているようで、やはり自然が作用したような力も借りて大きくなって行くのだろう。
治水工事を行うには、計画性も必要だ。みだらにグネグネ作ってはそこら中に氾濫の危機が迫ってしまう。まさに氾濫もした。
かといって真っ直ぐ造っては河の勢いがどんどん加速し、あっという間に終わってしまう、又はそれもやはり氾濫を生みそうだ。
まずは、湧きいでるせせらぎから小さく始めて、滝があり、滝あれば滝壺で受け止め、時に氾濫しそうな箇所もなんとかやり過ごし、平坦な大地までは悪戦苦闘して石にぶつかりながらの乗り越えて行かねばだろう。
果たして今はまだ滝の前の小川程度の関係なのかと、考え出した所で、いかんいかん、続きは会社で考えよう!と自分を諌める。もっと諌める。押し込める、忘れ去ろうとする。
でも心のメモに明日考えることとして書き留めておく。駄目なパパだ。
ともなれば、夫婦は川でも対岸でもなく、大海原に乗り出した小舟であろうと、ふと気付く。そんな祝辞の言葉もありそうだ。聞いた気もする。
不安があっても何があっても、呉越同舟といえるものだ。いや、敵ではないからそうではないが、一蓮托生というべきか。
何しろ恋は川、結婚は海。
別物だ。そう妙に納得して解決したような心持ちで、これで家庭も平和だと言えたらいいのに。
平凡な助平な男に、
当然のように安息が約束されているとは限らない。どうなることやら。
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