「うちの息子がすみません……何とお詫びしたらいいか……」


 母さんが、頭を下げてないてる。ぼくは母さんの手をぎゅっとして、じめんをジッと見てる。


「頭を上げてください。確かにアヴィオール君がやってしまった事ですが、彼は十分反省しています」


 スピカの父さんが、やさしくそう言ってた。

 ハンセイってなんだろう。ぼくの、このかなしいキモチのこと? でも、このキモチだけでゆるしてもらえるようなことじゃないって、ぼくでもわかるよ。


「スピカは暫く療養させます」


「どちらへ?」


「アンティキティラです。親戚が腕の良い医者を知っていますので」


 お医者さんにみてもらったら、スピカのヤケドはなおるの? かおに大きくヤケドしたから、キレイになおるといいんだけど。


「アヴィオール君。おいで」


 スピカの父さんが手まねきしてる。ぼくは母さんから手をはなして、スピカの父さんに近づいた。スピカの父さんは、しゃがんでぼくのかおを見る。


「星屑に火をつけたらどうなるか、わかったね。火はとても危ないから、大人がいない所で使うのは駄目だ。約束できるか?」


 ぼくはうなずいた。


「スピカはなおる?」


「……ヤケドの痕が残るかもしれない」


「女の子のかおにケガさせたら、セキニンとらなきゃなんだよね?」


「そこまで気に病むな」


「えっと……」


「ああ、すまん。難しかったな。

 落ち込むなってことだ」


 スピカの父さんは、ぼくにわかるように、カンタンなコトバで言ってくれる。でも、ぼくがやったことは、カンタンなコトでどうにかできるものじゃないよね。


「もしスピカが、また君と遊びたいって言ったら、遊んでくれ。それだけでいい」


「わかった」


 スピカの父さんは、ぼくの頭をなでた。

 ぼくのココロは、ぎゅうぎゅうされてすごくいたい。やさしくされると、すごくイヤなんだ。


「では、失礼します」


 母さんは、スピカの父さんにおかしの箱をわたして、スピカの家を出た。ぼくは母さんのうしろにくっついて歩く。


「本当に、あんたって子は……」


 母さんはためいきばっかりついてる。これが、あきれられるってコトなんだとおもう。

 母さんにあきれられるのも、父さんにおこられるのも、スピカの父さんやさしくされるのも。そのどれもが辛いけど、それよりもぼくは、スピカのヤケドをおもい出すのが辛かった。


「ふええ……」


 おもい出したら、目からなみだがボロボロおちた。

 ココロにいっぱいの、ごめんねっていうキモチ。つたえたいけど、会えないからつたえられない。

 キライなフリをして、いやがらせして、ごめんね。ぼくはただ、はずかしかっただけなんだ。

 でもね、ぼくはキミのこと、すごく好きみたいなんだ。


 だって、キミにケガさせたことが、こんなにかなしくて、つらいんだもん。

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