星屑の結晶を爆発させる話(星の賢者)
1
ぼくは、あの子がキライだ。
ようちえんのころから同じクラスの。一ねん生になっても同じクラスの。スピカっていうなまえの女の子。
学校がおわってベルがなる。ぼくはとちゅうまで友だちといっしょにかえってたけど、舟つき場で友だちと別れた。
うしろの方で、キライなあの子の声がする。あの子も友だちと別れのあいさつをしてた。
「アヴィ、いっしょにかえりましょ」
ぼくは声をかけられた。ぼくはメンドくさくて、何も言わずに歩く。
「ひどーい。なんでムシするのー」
すこしムッとして、スピカをふり返った。スピカは早歩きでぼくに近づいてきた。
「いっしょの道だから、いっしょにかえりなさいって、先生もそう言ってたじゃない」
「えー……なんで?」
「こっちの道をかえる友だち、ほかにいないの」
「ぼくは一人でいいもん」
先生の言うことをよく聞くイイコちゃん。そんなスピカがどうも気になるようで、気になりたくない。だいいち、ぼくは一人でかえりたいんだけど。
「このまえ、フシンシャが出たって、先生言ってたじゃない。アヴィは一人でこわくないの?」
「こわくないよ。そんなやつ」
「わたしはこわいわ。だから、いっしょにかえりましょ」
そんなの知らないよ。だからぼくは返事をしなかった。
「なんでアヴィは、わたしをムシするの?」
「なんでって……」
やたらおしゃべりだし、おせっかいだし、先生のごきげんうかがいが上手だし。かみがキレイで、目がおっきくて、笑ったかおが、なんかムカつく。
「しらない」
「なにそれー」
ぼくが冷たいこと言っても、ヘラヘラ笑って流しちゃうんだ。気にしてないみたいに。だから「すこしは気にしろよ」って思って、フイッてしちゃうんだけど。
「またそっぽ向くー」
「はあー……」
わざとため息ついたら、それがおもしろかったみたい。また笑ってる。
「キミはどうしてぼくに声かけるの?」
スピカのたくらみが知りたくて、そうきいた。そしたら、スピカは首をかしげて考えた。
「なかよくなりたいから、じゃ、ダメかしら?」
ぼくとなかよくだって? なにそれ。ぼくはキミのことがキライですよーだ。
「いつもキミにイジワルしてるのに?」
「イジワルなんて、されたかしら?」
あれ? 気づいてない?
「じゅぎょう中、先生にあてられてた時に、ぼくがこたえ言ってジャマしたじゃん」
「あれ、わたしこたえ知らなかったの。だから、たすけてくれたのかと」
「え? ドッジボールの時、キミをずっとねらってたのも気づかなかった?」
「あれは作戦でしょ? レベッカの方がにげるの上手だったから、ヘタなわたしをねらってたんじゃないの?」
ぼくのイジワルに気づいてない?
あーもう! なんなんだよそれー!
「てっきり、アヴィは友だちになってくれるとおもってたのに……」
ああ、シュンとしてる。そういうかお、やめてよね。なんか、心がぎゅっとなるんだよ。
「なかよくはなれないよ」
「えー」
スピカは口をとがらせる。
ほんとにしつこい。ぼくは、スピカとなかよくなりたいワケじゃない。今はまだクラスメイトでいいんだよ。ちょっと気にいらないだけの、タダのクラスメイトでさ。
「だって、ぼくは男子とあそびたいもん。スピカは女子とあそんでたらいいじゃん」
「セイベツで友だちをえらぶなんて、わたしはいやよ?」
「女子と友だちなんて、からかわれるもん」
……これがホントのりゆう。男子の友だちにからかわれるのがイヤなだけだ。
だからキライなフリしてるだけ。
……いや、フリじゃない。ほんとにキライ。
「そうだ。イイモノ見せてあげようか?」
イイコトをおもいついて、ぼくはスピカにそうきいた。スピカはキゲンがよくなったみたいだ。ぼくに早足で近づいた。
「イイモノってなあに?」
ぼくはポケットから石をとり出す。
黄色くキラキラ光る、星くずの結晶。ツメの先くらいの小さい結晶だけど、とってもキレイなヤツ。
「星くずの結晶じゃない。これ、どうしたの?」
「それはいいの。
これね、火をつけたらおもしろいんだよ」
かおがニヤけちゃう。きっとスピカ、びっくりするな。
ぼくはスピカに結晶をもたせて、マッチをこすった。火がついたそれを、スピカの手の中にほうりこんだ。
ぼくはにげる。ダットのごとくってやつ。そしたら、うしろの方で、バチバチって音がした。
やったぞ。スピカをおどかしてやった! これで「いっしょにかえろう」なんて言われない!
「ぎゃーー!」
びっくりするような声がきこえて、ぼくはふり返った。
スピカがへたりこんで泣いてる。かおをりょう手でかくして、大声で泣いてる。
え、やめてよ。ぼくがヒドいことしたみたいじゃん。
「大げさだなー。びっくりさせただけじゃん」
スピカのうでを引っぱると、かおから手がはなれた。
ぎょっとした。
「え、なんで……」
スピカのかおが真っ赤にただれてた。ヤケドだ。
星くずの結晶は、火をつけると花火みたいにバチバチばくはつする。ツメの先くらいの結晶なら、大したことないとおもったんだ。
「いたい、いたいイタイイタイぃぃ!」
スピカがさけんでる。ヤケドが痛くて泣いてる。泣いたらなみだがしみて、泣き声が大きくなる。
どうしようどうしようどうしよう。
やってしまった。泣かせてしまった。
ケガさせたかったワケじゃないのに。
「家どこ?」
スピカのうでを引っぱって、ムリヤリ立たせる。スピカはまえが見えてないみたいで、足がふらふらしてる。
とにかく大人に、スピカの父さんにたすけてもらわなきゃ。
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