星屑の結晶をばく発させてから、たぶん半年くらい経ったとおもう。

 スピカがいない間、友だちとあそんでても、何となくつまらなくて。ぼくは本をよむことがおおくなってた。

 スピカが学校にかえってきたら、色んな本のことおしえてあげようとおもって。スピカ、本よむのすきだったからね。


 学校からのかえり道、ぼくは本をよみながら一人であるいてた。小学生の一年生にはむずかしいって言われてる、ながい小せつの本。言いまわしがむずかしくて、顔が本に近くなってしまう。

 だから、前も後ろも見えてなくて、それがあんまり急だったからびっくりした。


「アヴィ、何よんでるの?」


 前から声がきこえてきて、ぼくは顔を上げた。

 スピカがえがおで話しかけてきたんだ。


「スピカ……!」


「その本、おもしろいの?」


 スピカはふつうなかんじで本をのぞいてくる。

 って、いやいやいや! ちょっとまってよ!


「スピカ、もうだいじょうぶなの?」


 そうきいたら、スピカは笑った。ちょっとぎこちないのは、たぶんヤケドのコウイショウってヤツだろうとおもう。でも、キズは全然のこってなくて、元どおりのスピカの顔だった。


「もうだいじょうぶよ。シンパイさせて、ごめんね」


「あやまらないでよ。わるいのはぼくなんだから」


 ぼくらは並んであるいた。本はカバンの中におさめて、スピカがいなかった半年のことをはなしてあげたんだ。

 スピカは本とうにたのしそうで、声にだしてわらってる。ちょっと顔が引きつってるのが気になって、ジィっと見てたら、スピカがきょとーんってカンジでぼくを見てきた。


「わたしの顔、何かついてる?」


「あ、いや、ううん。何でもない」


 ぼくはあわてて別のとこを見た。

 ごめんねってキモチと、もうケガさせたくないなってキモチ。あと、守らなきゃって思った。

 そういえば、フシンシャってやつ、まだつかまってなかったなぁ。女の子が一人でかえるのはアブナイかも。


「ねえ、明日もいっしょにかえろっか」


 スピカにそうきいたら、すごくうれしそうな顔をした。


「ええ。いっしょにかえりましょ」


「やくそくね」


 ぼくは、スピカと小指をつないで、ぎゅってした。

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