確かにそこに愛があるなら

 君は言った。

「愛してる」

 忘れもしない取りこぼした鍵。共有した瞬間は互いに永遠を確信しながら今はもう手元になく、過去の中で輝き続ける、永遠の成り損ない。


 本気だった、嘘じゃない。愛の本質、それは君だと断言できた。その時は。


 戻ってきて欲しいなんて言わない。それが互いのためだと思う。だってほら、君はこうも言っただろう。「さよならは、新しい機会が待ってる証拠」。

 そう聞いた時、俺はそんな機会など願い下げだと否定した。だけど今は君が正しかったと理解している。変化を恐れた瞬間、人は膠着の僕になる。この世が諸行無常であるならば、それは茨の道でしかない。


 心が動かなければ、人を愛せない。

 経験を増やさねば、未知なる未来を受け止めきれない。

 知性を磨かねば、助けになれない。

 失敗をせねば、痛みを分かち合うことなど不可能。

 そして何より、歩み始めなければ、君は俺にとって「後悔の記憶」の主犯のまま。そんなの嫌だ。絶対に。


 理由は明確。確かにそこに愛があったからだ。

 君と幸せに成りたいと願い、行動した。向き合った。愛して、愛した。充分だ。


「愛してる」

 忘れもしない、最愛の思い出への鍵。

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