第20話 - ダンジョン






翌日の朝。


警戒をして、あんまり眠れなかったが、無事に朝を迎えた俺は宿の部屋で

冒険者カードを見ながら、今日の予定を考えた。


(もう決まているがな)


今日、というより、今日からはダンジョンを探索する。


このエニッシュ村の周辺には4つのダンジョンが存在する。

Fランクが2つ、Eランク1つ、そしてCランクが1つ。


この世界ではF、Eは一番数多く存在するダンジョンだが、攻略の難易度は比較的

に簡単で、普段は一般人でもレベルとスキルを上げれば攻略可能だ。


だが、それ以上になれば魔物の力が飛躍的に上がるため、Cランクのダンジョンが

発見された場合、その近くに村、そして冒険者ギルドを作り、魔物が溢れない

ようにDランク以上の冒険者に攻略させる。


このエニッシュの村も十数年前に発見されたCランクダンジョンの攻略のために

作られた。


(っと、受付のお姉さんが説明した)


今日はその一つのFランクダンジョンを探索する。


(話は聞いているが、どんなところだろう…?)


そんなことを考えながら、部屋を出て、朝食を食べるために1階へ降りた。


「おはようございます、ペトラさん」


「おはよう、ギリェルメさん。朝食を食べるかい?」


「ええ、お願いします」


女将さんの作ったものは朝食にしては量が多くて、味も濃いものだった。


(腹が減っては戦はできぬってか)


食べ終わった俺は早速、ダンジョンへ向かった。


今日入るダンジョンはエニッシュ村の北側にある。


(30分離れているだったけ)


昨日、ギルドで受付嬢から聞いた情報を自分の地図に書いた。


この村から各ダンジョンへ続く道があるので、迷わずに目的地を見つけた。

そこはあの棍棒フロッグの巣と同様な洞窟で、入口には薄い水の泡が見えた。


そして、その入口の前に二人の女性が話をしていた。


(宿のお姉さんだ)


一人は女将さんと食事をしていたお姉さんで、もう一人は魔法使いの帽子を被った少女だった。


遠くから俺に気づいていたお姉さんは道を開けた。


(スキルを貰ったばかりかな)


お姉さんはダンジョンのことを少女に教えているみたいだ


邪魔しちゃ悪いと思って、軽く礼をして、俺は結界の前に立った。


そうすると、目の前にステータスみたいに半透明な画面が現れた。


―――【Fランクダンジョン - 洞窟型】―――


ソロ推奨レベル: 5~10

パーティー推奨レベル: 1~5


―――――――――――――――――――――


(やっぱりゲームそのものだなぁ)


この推奨レベルは全ダンジョンにあり、人が無意味にダンジョンに入らないようにっと、女神たちが作ったらしい。


だけど、あくまで推奨で、Sランクダンジョンでも、レベル1だろうと、

100だろうと、誰でも入ることが出来る。


(まあ、俺は低ランクからコツコツっと行くがな)


画面から目を逸らし、洞窟の中を見ようとしたが、真っ暗で何も見えない。

少し怖くなってきたが、いつまでもそうしているわけにもいかず、俺は装備の

確認をして、ダンジョンへ入った。


結界を通すと、太陽の光が消えた。


後ろを見ると泡の結界がまだいるが、向こう側にいるはずの森の光景は暗闇に

変えた。


(なんだこれは⁉)


そのことに慌てた俺はすかさずに結界を通した。

そうしたら、そこには以前と何も変わらない森が広がていた。


(は……?)


ポカンと口を開けた俺は頭を回し、周りを見たが、やっぱり先の森がそこに

あった。


(って、やっべえ!森だけじゃなく、あのお姉さんたちも居る)


ダンジョンへ入って、5秒もしない内に戻ったので、二人は何事かっとこっちを

見ている。


(中から外が見えないのか?これは城で学んでいないぞ……)


「すみません。一つ聞いていいですか?」


怪しまれるかもしれないが、ここは二人に聞くことにした。


「ええ、何でしょう?」


お姉さんの方が返事をした。


「ダンジョンに入って、後ろを見たらこっちは真っ暗だったですけど、それは普通

ですか?」


「あら、普通よ。フフフ、そうか、それで戻ったのか」


(よかった~ 俺だけだったら怖いぜ)


「ははは、初めてダンジョンに入るので、びっくりした。教えてくれて、

ありがとうございます。それじゃ」


二人に礼を言って、俺は再び結界を通し、ダンジョンに入った。


………

……


「ライト」


盾の魔法を使って、見えてきた洞窟の中の広さは5メートルくらいだった。


(狭い通路を想像したが、以外に広いだな)


周りを見れば、少し苔のある壁以外、何もないところだ。


(確かに、入口の50メトール以内に魔物は近づかないだったな)


結界のお陰で、入るなり魔物に襲われる恐れはない。それをいいことに、

光が届かない前方を注意しながら。収納袋から鎧を取り出した。


外にはあの二人がいるけど、見られる心配はない。この世界のダンジョンは

MMORPGと同じく、ダンジョン内は違う空間になっていて、他の人が入ったら、その人だけのダンジョンに転移されるみたいだ。


例外はパーティーを組んでいるとみんなで同じダンジョンに入ることができる。


(………いや、だから、ゲームか?)


今更ながら、それを置いといて、城で教えてもらった鎧の着方を終わった俺は

初めてのダンジョン探索を始めた。


ライトで照らされていない所は暗くて何も見えない。

幸い、人それぞれの違う空間でもダンジョンの形は皆一緒なので、冒険者ギルドの

お姉さんから貰った地図でルートが分かった。


それを頼りに、前へ進んでいると水音がして来た。その音の原因は洞窟のあちこち

で水が滴って、安全地帯からちょうど50メトールくらい離れている場所に水溜り

が増えてきた。


(こりゃあ、滑らないように気を付けないと)


それ以外の変化はなし、剣と楯を手に3分くらい歩ていたらぷよぷよしている

あいつを見つけった。


(さて、ここでダンジョン内での初戦闘だ)


見つけたのはこのFダンジョンの唯一の敵、スライムだ。


(魔物鑑定っと)


―――――――――――――――――――――


【ステータス】

【名前】: スライム

【種族】: 魔物

【ランク】: F

【レベル】: 1


HP: 228 / 228

MP: 40 / 40

攻撃: 41 防御: 39

魔攻: 31 魔耐性: 27


筋力: 7 [7]

魔力: 5 [5]

知力: 2 [2]

速さ: 3 [3]

器用: 2 [2]

運: 10


【スキル】

- ? ? ?


―――――――――――――――――――――


(うむ、問題ない)


確認のために鑑定をしたが、図鑑の情報で知っていた。


森で慣れているので、俺は周りを警戒しながら、そいつに攻撃を入れた。

スライムは反撃しようとしたが、俺の方が早くて、そいつを真っ二つに

した。


(流石にレベル1のスライムはコアを破壊しなくても倒せるか)


外の魔物と何か違うところがあるかと思ったが、そいつは森で倒したのと

同じくHPが0まで減ったら水溜りになった。


「ん?」


(違いがあったか)


水溜りになったスライムは地面に吸収されて、消えていた。


(こういうのも漫画で読んだことがあるな)


ダンジョンの中で倒された魔物の死体は回収できるが、地面に置いたら数秒で

ダンジョンがリサイクルする。ダンジョンそのものが一種の魔物、もしくは魔法

という展開は結構ある。


魔物が死んだらそれを使って新しい魔物を作る。逆に魔物が人を殺したら、その人を吸収する。


(宝箱はちゃんと貰えるみたいだな)


スライムが消えた所にいつものようにドロップボックスが現れた。


それを拾って、探索を続ける。


ダンジョンに入ってから2時間。あれから数匹のスライムを倒した俺は洞窟の奥に

ある広い空間にたどり着いた。


(あれだな)


ダンジョンには普通の魔物以外にもボスがいる。

ここも例外なく、俺から20メートルくらい離れた場所にそいつがいた。



―――――――――――――――――――――


【ステータス】

【名前】: 骨溶かしスライム

【種族】: 魔物

【ランク】: F

【レベル】: 10


HP: 960 / 960

MP: 97 / 97

攻撃: 152 防御: 144

魔攻: 84 魔耐性: 76


筋力: 22 [22]

魔力: 11 [11]

知力: 7 [7]

速さ: 9 [9]

器用: 11 [11]

運: 10


【スキル】

- 自己再生lv1


―――――――――――――――――――――



そこには1.5メートルくらいもある変な緑色のスライムがのしのしと動いていた。


こいつのことは図鑑に載っている。

倒し方は普通のスライムと同じくHPを削るか、体の中にある魔石を壊すかだ。

気を付けるべき点はその大きさ上、のしかかったらなかなか離せることが

出来ないことだ。そのまま顔まで塞がれたら終わりだ。



(他よりも高いステータスだけど、気を付ければ倒せる相手だ)


辺りにボス以外のスライムがいないので、戦いに集中できる。

剣と楯を構えた俺はそいつにゆっくりと近づく。


ぶるるんっ‼


俺に気づいたか、スライムは激しく震えた。

戦い方は他のスライムと同じが、こいつの体は名前の通り骨すら溶かす。

剣でHPを削ることもできるが、金に余裕がない今、剣が壊されたらヤバい。


だからここは体の中で浮かんでいる魔石を壊しに行く。


(金のために魔石は欲しいが、エンチャントの剣と比べ物にならない)


そう判断した俺はスライムの5メートルくらい近づいたところで身体強化を使て

一気に攻撃を繰り出した。


いきなりのことにボススライムはついてこれず、なすがままに俺の剣はそいつの

体に上から切っていく。


腕に力を入れて、その勢いのままに剣を魔石に力ずくにぶつかった。

ゼリーみたいな体の中なので、音はしなかったが、魔石は衝撃に耐えれず砕けた。


っ‼


それを確認してから、剣を壊さないために必死に引き抜いた。

その瞬間、ボススライムの体はまた震えてから、力なく地面に溶かしいく。


「よっし」


その横に木製の宝箱が現れたのを見て、勝利を確信した。


(緊張したが、初探索、案外に楽勝だったな。勇者だからだろうけどな)



―――――― ダンジョンボスの討伐を確認 ――――――

―――――【Fランクダンジョンの攻略に成功】――――


―― Fランクダンジョン初攻略の報酬として、以下の物から選びください ――


【50SP】

【収納袋 (小)】

【金貨50枚】




(おっ、出た!)


宝箱の後、目の前にそんなメッセージが現れた。

これも女神たちが作ったもので、初めてそのランクのダンジョンを攻略したら

貰える報酬だ。


(金に余裕がないけど、何を貰うかはもう決まている)


実はこの報酬にも勇者補正がかかっている。

収納袋 (小)はそのままだが、この世界の人が選択できるのは25SPと金貨25枚。


迷いなく50SPを選択したら、無事に俺のステータスに加えた。



こうして、アイテムボックスから銀貨1枚を拾い、剣をふきながら俺は入り口へ

向かった。





つづく


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