第18話 - ダンジョン 発見





棍棒フロッグの後をつけ、巣であろう小さな洞窟にたどり着いた。


だけど……


(……ダンジョン)


その洞窟は蔦や苔で隠れていて、見つかるのは難しいが、変わったところは

そこじゃない。洞窟の入口には透明な水の泡みたいなものが張っていた。


(違いないな、あれは女神の結界だろう)


この世界には色んな種類のダンジョンがあるが、魔物が出ないように女神たちは

入口に結界を張っているだそうだ。


それでも完全に防ぐことが出来ないから、こうして魔物が外に出てくる。


(ダンジョンが本当にあるって確認ができたのは嬉しいが、危険だな…)


魔物がダンジョンの外に出ているということは中に溢れているくらいの数が

いるのを意味する。


(結界がまだ残ているのが幸いだ)


結界が張っている限り、外に出られる魔物の数が限られている。

問題はその結界が壊されて、ダンジョンの中から魔物が暴走することだ。


漫画でよくある『スタンピード』だ。


(さて、どうしたものか…)


棍棒フロッグ共はダンジョンの前で猪らしきものを食べ始めて、ここに気づいて

いないみたい。


(鑑定を使ったが、あの4匹を倒すことは出来ると思う。だが本当の問題は

ダンジョンだ)


魔物図鑑に書いてあった情報では結界がある限り、ダンジョンから同時に1~5の

魔物しか出ないそうだが。


(ここはどう考えても逃げるべきだなぁ)


異世界のどデカイ森の中で一つの国から逃げている俺の言うことじゃないが、ここ

で無茶をしたくない。


(ダンジョンを攻略したいが、今までは計画通りにことが進んでいる。勢いでそれ

を乱すのは馬鹿な判断だ)


ダンジョン攻略を諦めた俺は静かにその場所を去った。


………

……


ダンジョンを見つけてから3日間が過ぎた。


俺は今、高い木の上に登っている。


あのダンジョンを攻略出来なかった代わりに、今まで以上に魔物を積極的に

狩りながら森の中を進んでいたが、次の魔物を探していると、少し遠いところ

からになんと、人の声が聞こえた。


(村だ!!!)


木に登り、その上から見えてきたのは大きな村だった。


(すげええ… ファンタジーだ…)


その村全体はまるで森と同化しているように作られていた。木々の上にも建物が

あり、その間は橋で繋がている。


(遠いからよく見えないが、人が多いなぁ)


物語のエルフはなんとなく数が少ないという印象だけど、ここの人口は普通に

多かった。


(さて、村を見つけたのは嬉しいが、どうしよう…)


国境を超えて、数日も走っているが、まだエルンダ王国に近い。ここで俺のことが

知られている可能性がある。


だからこんなすぐの村にじゃなく、もっと北の方へ向かうつもりだ。


(はあぁ………せっかく見つけたダンジョンはダメ、せっかく見つけた村もダメ。

早くいい場所を見つけたいぜ)


正直に言って、疲れている。無理もない、何日も魔物が蔓延る森の中で過ごして

いる。


(って言っても状況が変わらないがなぁ…… よっし! 続けよう!)


結局、俺は自分に慎重に行こうっと言い聞かせて、村を遠回りして、また北へ

向かった。


…………

………

……


6日後。


あの村を見つけてから6日間が経過し、今も走っている森の光景が少し変わった。

木々が少し減っていて、視界も良くなっている。


あれから村そのものは見つけていないが、馬車の通った痕跡がある道を幾つか

見つけたので、村と村の間をちゃんと通しているのだろう。


(それにしても24日かぁ)


あの城から出て、もう24日間が過ぎている。

流石に正確な距離はわからないが、数百キロメートルも離れているだろう。


(次の村に落ち着いてもいいじゃないかなぁ?)


スキルなどのお陰で、さほど知識が無い俺でも森で自給自足が出来ている。

だからこのままで~っと思うようになったが、それではダンジョン攻略のための

武器やアイテムが買えないというシンプルな理由で諦めた。


(それじゃ、村に行こうか)


一応であるが、村に入る方法は考えてる。

この世界には約束のギルドカードが存在していて、世界中の人は15歳になると

ギルドで貰えるだそうだ。


ギルドカードは身分証みたいなもので、名前、年齢、生まれた場所や職業などが

書かれている。


俺は持ていないが、冒険者ギルドで登録したら貰える。

そして、騎士から聞いた話によると冒険者登録は15歳以上だったら誰でもできるだそうだ。


(本当だったら、自分のことを聞かれないのは助かるけど)


問題は冒険者ギルドじゃなくて、その前に村の門番だ。


この国の街は防壁で囲まれていて、4つの方向の入り口に門番を置ている。

俺が探しているのはそういうのがいない田舎の村だ。


(まあ、門番が居ても打つ手はあるけど、面倒を減らしたいなぁ)


………

……


そして、地図を片手に、村に入る方法を考えていると、遂に見えてきた。


(おいおい、こんな運が良かったのか、俺?)


見つけた村は正に田舎そのものだった。




つづく

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