第16話 - 国境






最初の棍棒フロッグを倒してから5日が過ぎていて、この森に入ってから、今日で

7日目。


毎日13時から18時くらいまでを休むために使い、それ以外は走るか、魔物を

狩るで使っている。


最初は走るというよりは全力疾走だったけど、前みたいにならないように、

今は走るペースを少し下げている。


それに、こうして無事に一週間も逃げているので、あと数日もすれば国境を

超えるかもしれない。


(その時のために体力を温存しないといけないからな)


それはこのエルンダとエメルデイオの国境に寄り添い、複数の街が存在する

からだ。


幸い、2国も巨大な土地を持ているので、街と街の間は大きい。それが森の中

なら尚更だ。


エメルデイオ側のエルフ達は大きな街だけじゃなく、森の中でも多数の村に

住んでいるが、エルンダ側ではその数は比較的に少ない。


その村々の間を見つからずに通すことが目的だ。


問題は俺の逃げ道を防ぐために、その村々の間に騎士たちが居るかもしれない

ということだ。


だから今日から3日間くらいは体力を回復させることに集中する。


(っと行きたいところだがなぁ)


収納袋の食料(パン)が底を突きたので、今日は荒らしウサギを狩らないと

いけない。幸いにスライムの次で、荒らしウサギはこの世界で二番に数が多い

魔物だ。


(確かに、葉っぱが多い場所の地面に穴を掘って、巣を作るって魔物図鑑に

あったな)


森を走っていたら結構な数に遭遇しているが、索敵なしで自分から探すとなると、

ウサギ達の巣を見つける方が早い。


そのために今は体力回復も兼ねて、葉っぱが多いとこを探しながら、ゆっくりと

森の中を歩いていた。


探すこと2時間ほど、遂に目的のものを見つけた。


(明らかに不自然だなぁ)


数メートル前にあったのは50センチの高さもある葉っぱの山だった。

今までみたいに走っていたら見逃していたかもしれないが、周りと比べたら

葉っぱが多いから、自然なものじゃないのは分かる。


(さて、どれくらいの数が中にいるのが問題だな)


今までに遭遇した中で一番大きな群れは6匹だったが、今の俺なら10匹くらい

と同時に戦えると思う。


行動を決めた俺は石を拾い、葉っぱの山へ投げった。


ガザッガザッ


石が当たった瞬間に中から荒らしウサギが次々と出てきた。


(待つつもりはないがな!)


全てが出る前に俺はウサギを倒し始めた。遭遇の回数が多いお陰で倒し方は

結構つかめている。


群れで居るときは結構凶暴な魔物で、自分から攻撃をしてくることが多い。

だけどステータスは低いので、こっちから仕掛けて、攻撃を許さずに一撃で倒す

ことが簡単だ。


(こっちが強いっと見せれば大体の奴は逃げるからな。戦いたくない時は助かる)


こうして、無事に巣から出た12匹の荒らしウサギを倒した。


ドロップボックスを拾い、早速に解体を始めようっと思ったが、少し気になる

ことがあった。


(そうや、ウサギの巣に何かないのかなぁ?)


12匹もあったので、もしかしたら食べ物があるかもしれないっと思ってその

巣穴を剣で探てみた。


(…ん?お⁉)


その中にはなんと、野菜と果物がいっぱい詰め込んでいた。


(うほほほ!こりゃあラッキーだ!)


ウサギたちの食べ残しが多いけど、まだ手を付けていないものも結構あった。

しかも大体は城や緑風の森で食べた物ので、毒の心配はないと思う。


(知らないものは後回しにしても、これだけあれば数日は保つなぁ)


こうして、収納袋に野菜、果物とウサギ肉を入れた俺は久しぶりにいい気分で

その日を過ごした。


………

……



3日後。


(見つけた!)


無事に休んだ俺は今日も森を進んでいた。そして遂に、とある場所を見つけた。


(これが地図にある川だろう)


方位磁針はないが、緑風の森で貰った地図は持ている。

その地図には国境の近くに小さな川があり、その川を超えたら一日で国境に

たどり着くと思っている。


(この川を見つけたのは大きい)


緑風の森に行った時以外に外へ出ていないから、もしかしたら王城で学んだ

地形や他のことが噓かもしれないと思ったが…


(これで地図の信用性が上がったが、喜ぶにはまだ早い)


茂みの中で姿を隠し、川辺の様子を見ながら考えていた。


(川があるってことは村もあるかもしれない。それに、ここは魔物の飲み場でも

あるだろう)


目の前の川はそれほど大きくはないが、森と違って、開けた場所だ。それを

超えているときに襲われたら危ない。


そして人も。森から出て、川を超えているところを誰かに見られたら噂になる

かもしれない。


(それに、今までは収納袋の水で我慢していたが。流石に体を洗いたい)


茂みの中で10分くらい待っていたが、何も起こらなかった。


(行こうか)


誰もいないと判断した俺は革鎧を外し、素早く川に入った。収納袋に水を貯めて

から、汚れを落としながらも川の浅いところを進み、向こう側に着いた途端に

森の中へ走った。


そして茂みで革鎧を装備して、また歩き出した。


(体を洗ったから、気分はいいが、今はとにかく進むことだ)


この川から一日中で国境があるということはこの辺りに人が居ても

おかしくない。俺の道を防ぐための騎士達もだ。


だから今から2日間は静かに進み、誰かを見つけたら、隠れながら逃げることだ。


(魔物も避けるべきだな)


今までは倒した魔物の死体は魔石を取り出した後は木の陰などに穴を掘って、

隠したが、それらを俺の追跡に使えるかもしれない。


(まあ、とにかくだ。ここを超えればエメルデイオにたどり着く。もう少しの

頑張りだ)






つづく

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