第12話 - Eランク魔物





初日を除けば、緑風の森の探索を初めて、2日目。

今日は騎士たちに頼んで、少しペースを上げた。


(これでちょうど30匹だなあ)


ヒーゼルの索敵でEランクの魔物が見つけたようで、今はそこに向いている途中。

道中で見つけた魔物もちゃんと倒しているので、レベルアップは順調のようだ。


そして騎士たちから索敵スキル取得のコツも教えてもらっているが、なかなか

上手くいかない。


(簡単に覚えるものじゃないとはわかっているがなあ)


昨日はFランクしか見つからなかったので、少し焦りが出ている。


それは本来なら、いいことだ。俺たちが今いるのはまだ森の浅いところだ。

ここにいる魔物は森の奥にいる強い魔物に追い出された奴らだ。もしもここに

強い魔物が現れたら、それはそいつよりも更に強い魔物が奥にいるということになる。



そうして、走ること20分、俺たちは小さな洞窟へたどり着いた。


「ここだ」


木の陰に隠れて、ヒーゼルは俺に指示を出した。


「洞窟の中に5匹の石食いネズミが巣を作っているようだ。良平りょうへい殿

は以前、あの城にある魔物と闘いたいっと願ったので」


「覚えてくれたか、ありがとう」


ヒーゼルが俺の師匠になってから2週間が過ぎた頃。少し自身が付いて、

レベルアップのために団長が連れてきた石食いネズミと闘いたいっとお願い

したが、あっさり断れた。


(まあ、あの時は魔物図鑑の情報を見て、行けるんじゃないかなあっと思ったがな)


そんな訳で、今日はそいつと闘える。


「では、俺は4匹に挑発のスキルを使う。残り1匹は石で自分のところへ

呼び寄せてくれ」


頷いて、俺たちは洞窟の前へ移動した。


キイイィッーー!!!


以前に学んだ通り、石食いネズミは縄張り意識が強くて、俺たちの足音を聞いた

だけで鬼気迫る表情で洞窟から飛び出した。


ッバンッバン ! ! !


それと同時にヒーゼルは剣を盾にぶつかり、挑発スキルを使った。


挑発スキルは名前の通り、相手を挑発し、自分を目標にするスキルだ。

俺も取得したいが、単に相手の注意を集めるだけじゃなく、敵に自分の魔力を

投げることが必要だそうだ。


(流石に俺の魔力の扱いはまだそのレベルじゃない)


そして、5匹のネズミがヒーゼルのところに走っている中、一匹だけ動くのが

遅かった。そいつは走り出した仲間を追っているだけで、挑発スキルの効果を

受けていないようだ。



―――――――――――――――――――――


【ステータス】

【名前】: 石食いネズミ

【種族】: 魔物

【ランク】: E

【レベル】: 7


HP: 707 / 707

MP: 48 / 48

攻撃: 144 防御: 128

魔攻: 52 魔耐性: 48


筋力: 21 [21]

魔力: 6 [6]

知力: 9 [9]

速さ: 14 [14]

器用: 11 [11]

運: 10


【スキル】

- ? ? ?


―――――――――――――――――――――


(ステータスは城のヤツより低いか)


「ッ!」


そいつに石を投げて、こっちを見たところで盾と剣を大袈裟に振り回した。


キイキイイッ !


怒ったのか、石食いネズミは俺の方へ走り出した。


(さて、こいつのスキルは土魔術か身体強化のどっちだったな)


土魔術を持っている時は荒らしウサギ同様、数メートルで足を止めてから

撃てくるが、この石食いネズミはこっちへまっすぐ走ってきた。


(身体強化か)


石をも砕くこいつの歯に手足を取られた人の話は図鑑で載っていた。その上で

身体強化を持っている個体は鉄鎧も恐れずに襲ってくる。


城で教えてもらった闘い方を意識して、俺は盾を構えた。


距離が2メートルになったところで石食いネズミは口を大きく開き、身体強化

されたその巨体で俺に襲いかかった。


それを待っていた俺は盾を引き、身体強化でそいつの体を弾いて、右手の剣で

斬ろうとしたが…


カッチッ !


「クッ !」


盾で防いても、そいつの刃みたいな歯並びが顔の20センチくらい前で空を

噛み付いた。それに怯え、剣を動かなかった。


(まるで恐怖を感じない野生の野獣だ。いや、まるでじゃなく、野獣そのものだ)


俺に構わず、石食いネズミはまた襲ってきた。今度は足に噛みつこうとして

いたが、荒らしウサギのように蹴り飛ばすのは危険ので。俺は後ろへ下がり、

剣をそいつの顔に振り払った。


キシィィーッ !


流石に顔を斬られたら引くか、ネズミは頭を振って激しく身悶えった。


「フッ!」


チャンスを逃さないように、俺は必死に剣を何度も振り下ろした。


正しい剣筋もクソもないが、痛みの叫びを止まったそいつの横で現れた宝箱を

見て、初めてのEランクを殺したことを確認できた。


(銅貨3枚か)


っと、1匹相手に恐怖で体を震わせている俺と裏腹に、ここから10メートル

くらい離れたところで4匹の魔物の攻撃を盾だけで防いでいるヒーゼルが居た。


(ハンパねえなあ)


そのお陰で気を取り直し、俺はもう1匹の石食いネズミに石を食らわせった。





つづく

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