第3話 - スキル





俺を含めて、全員があの鑑定の板でステータスを見せた。

他の人は剣術、弓術、攻撃魔術などのスキルを持っていたが、治癒魔術もいい

評価だった。


(そういや、王達は何も言わなかったけど、他に名前を決めていない人も

あったなあ)


ステータスの詳しいことは後で教えてもらえるから、今は待てくださいっと

言われて、俺たちは各自、自分の部屋になるところへ案内された。


(さて、これからどうなるだろう)


部屋に着き、俺は窓際でこれから起きることの可能性を考えた。

今までは本当に漫画や小説の王道展開そのもので、ここの人達の対応も丁寧な

ものだった。


(あの女神の話では、本来の魔術は強引に勇者を召喚するもののようだが、王たち

はそれを知った上で使ったかどうかが問題だ)


知っているなら、最悪なことも起こりえる。


俺たちを無理矢理に魔物と戦わされるかもしれない。

隷属の魔術か魔道具で言いなりにするかもしれない。

今まで全部が嘘で俺たちで遊んでいるだけのかもしれない。

他の勇者がチートを持っていて、裏切るかもしれない。


その他にも色々あり得る。漫画の展開なんて、数えるものじゃない。

だから何もかもを丸呑みにするのは危険だ。


(やっぱり、やることは一つだな)


窓の外の森を見ながら、俺はやるべきことを決めた。


(まずは準備だな)



部屋の外で俺たち一人一人を"護衛"している騎士と使用人が待機している。

その二人に気づかないように俺は部屋の中に役に立つ物を探し始めた。


(っと言っても、見つけたのはテーブルの引き出しにあった予備のロウソクくらい

だな)


ロウソクを見つけたが、部屋を照らしているのは天井にある電球みたいな

石だった。部屋に入る時、使用人は壁にあるスイッチに手を乗せたら小さな

魔法陣が現れて、石が光り始めた。あれは何と聞いたら、当たり前のように

魔道具と答えた。異世界だ。


っと、部屋に即座に使えるものはないけど、他にやることもある。


(一番大事なのはスキルだ)


これも効果の一つか、使い方はなんとなく分かっている。


俺は音を立たないためにベッドで横になり、身体強化を使ってみた。

体の真ん中から手足の先までを何かが流れていくようにを意識したら、実際に

何か熱いものが体中を巡るのを感じた。


(本当に魔力か、これ?)


音を立てずに両腕を動かしてみたら凄い早さだった。心なしか、何だか目が

冴えている感じがした。


(すげえっ!早くこれを使いたいな…)


スキルを解けて、ステータスを見たらMPが1減っていた。


(確定した量じゃなく、発動している間にMPを使うのか?)


気になるが、その確認を後回しにして、治癒魔術を使ってみた。

爪で腰のあたりを少し傷づいて、治癒を使ってみたら発動した。手のひらサイズの

薄い緑色の魔法陣が現れたから、外にばれるっとビビったけど、大丈夫だった。

治癒はちゃんと効果を出して、即座じゃないが、傷はみるみるうちに消えた。


(魔術を使ったことにはちょっと感動だが、残念ながら喜んでいる状況じゃない)


MP経費が3ということを確認して、俺は次の検討へ移した。

また身体強化を使い、MPの経費を調べた。見た感じ、発動で1MPを経費して、

その後は30秒ごとにまた1MPが減るようだ。


全MPの36が29にまで減ったところでMPの回復量と時間を調べてみた。

結果は2分に1MP回復だった。


(そのままで計算したら、1時12分で全回復だな、慎重に使おう)


それらの確認を終わった俺はベッドから降りて、もしもの時のために静かに

身体強化で足の動かし方を試した。


(外の騎士が怖くてこれ以上はやりたくないな。呼ばれるまではこれに慣れよう)


それをしながら、先の話のことを考えた。


正直に王たちの態度に噓は見えなかった。

必死で俺たちの助けを頼んでいる姿に真剣さが伝わってきた。伝わってきた

だけど…


(やっぱり心から信じられない…)


だからっというのは違うが、俺のこれからの目的はやっぱり一つだけだ。


元の世界で毎日のように考えたこと。


そう……


異世界に転移したら、俺は何をするのだろう?


あれを見たい! これをしたい!

他の転移者もそうだろう。みんなファンタジーに憧れて、自分がその世界に

行けたら、何をするかを想像していただろう。


(それが今、俺の目の前で起きてるんだ!もう居ても立っても居られない!

俺はやっぱり、やりたいことをやる!)


異世界に転移したら、俺は何をするのだろう?


決まっている! 俺は…


冒険者になりたい!





つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る