第2話 - アトラリア






「成功だあああ!!」

「勇者たちっ!!」

「うおおおおおおっ!」

「これで救われるんだ!!」


あの白い部屋から、俺たちは王の間みたいな場所へ転移された。周りを見れば

高そうな服の人達とこっちを警戒している騎士たちが居た。


(貴族か?)


「勇者たち、突然のことで驚いているであろう。どうして皆様がここに召喚された

のかを説明するので、どうか聞いてくれ」


その広い部屋の奥で王座に座っている王と女王みたいな二人が立ち上がり、王の方

が俺たちにそう言いた。


説明はまさに異世界もののテンプレだった。

この世界に、アトラリアに魔物があり、それらは遥か昔からこの世界の住人を

苦しめている。その長年の敵に立ち向かうために天から授かった力、レベルと

スキルを使って戦ってきた。


そして計り知れない時間を超えて、ついにその戦いで優勢に立つ側が現れた…


魔物たちの方だった。


この世界では魔物の脅威を測るためにランクが使われている。

F、E、D、C、B、A の順で区別されており、Aランくの魔物は単独で一つの街を

破壊できるほどの化け物だ。


だがアトラリアには数十年に一度、そのランクに留まらない強さの魔物たちが

現れる。Sランクだ。そのSランクの魔物たちが生まれる度に優劣が変わり、

倒すことが出来ても、犠牲が多くて、国々の力は段々と弱ていた。


そして数年前にSランクがまた現れ始め、状況が一段と悪化していく中でこの

エルンダ王国が天からとある力を授けた。それは勇者召喚の魔術だった。


話ではある日、世界中の王達が女神の声を聞いたそうだ。その声は勇者の存在と

その召喚方法を教えてくれた。それに従い、今日で世界中の王国で勇者たちが

召喚されている。


勇者たちは女神からSランクにも匹敵するほどの力を貰い、その力で世界を救う。



(本当に分かりやすいだな。それにしても、女神は召喚したのは自分じゃないって

言ったが、これじゃ関係者だろう。それとも違う女神かな?)


現状についての説明を終わり、王と貴族たちは頭を下げて、俺たちに助けを

求めた。


「勇者たちよ、どうかっ! 我々に力を貸してくれ!」


それを聞いて、すぐに一人の学生が前に出た。


「王様、俺たちは望んでこの世界へ来ました。力があるなら、俺はこの人たちを

助けたいと思っているけど、皆はどうする?」


その学生は後ろに居た俺たちの方へ振り向くと、そう聞いてきた。


「私も!」

「俺も!」

「俺にできることがあるなら」


っと、次々と皆がそう返事をした。俺も一応は頷いた。


「勇者よっ! ありがとう! 」


俺たちの返事に感動して、王と周りの貴族が感謝の言葉を言って、泣き始めた人も

居た。


「それでは勇者達、君たちのステータスを確認しよう!」


(ステータスがあるのか)


他の9人もその言葉を聞いて、すぐに何のことが分かったようだ。


(女神の言う通りで、こいう手の漫画か小説が好きだったか)


「ステータスオープン」


その言葉を言ったのはスーツの男だった。それを言った瞬間に目の前に半透明な

画面が現れた。


「勇者殿、もうステータスの言葉を知っていたのですか!?」


スーツの男が自分でステータスを開けたことに驚いて、一人の騎士が声を上げた。


「ええと、俺たちの世界でこれに関する本を読んだので」


(漫画でよく使われているんだな)


他の人達もそれを見て、自分のステータスを開けた。


(頭の中だけでステータスを見ることが出来ないかな?)


それを考えた瞬間に、俺の目の前でもステータスの画面が現れた。


(出来ないかあ。それとも俺だけに見えているのかな? とにかく、俺のステータス

はどんな感じだろう?)


―――――――――――――――――――――


【ステータス】

名前: ―― ← 『名前を決めてください!』

年齢: 25 種族: 人間

称号: 勇者

レベル: 1 - 経験値【0/150】

SP: 110


HP: 282/282

MP: 36/36

攻撃: 148 防御: 107

魔攻: 73 魔耐性: 68


筋力: 15 [16]

魔力: 6 [6]

知力: 39 [39]

速さ: 36 [36]

器用: 25 [25]

運: 10


【アクティブスキル】

-『身体強化 Lv.1』

-『治癒 Lv.1』



【パッシブスキル】

-『支援魔術 Lv.1』

-『治癒魔術 Lv.1』


【一般スキル】


【特殊スキル】

-『言語理解』

-『魔物鑑定 Lv.1』


【装備】


『武器』

『防具』

『アクセサリー』


―――――――――――――――――――――



(おお、ちゃんと勇者だ ! ってあれ?名前を変えてもいいのか⁉)


念の為に他の人を見たら、みんなも名前のところをいじっていた。


(念の為にこれはまだ変えない方がいいな)


名前変更を後回しにすることを決めたと同時に、二人の使用人らしき人が

小さなテーブルを運んできて、その上でグラスみたいに透明な板が置かれた。


「勇者の皆様。これは鑑定の魔道具というもので、上に手をかざせばステータスが

私たちに表示されます。どうか、皆様のステータスを見せてください」


それを聞いて、最初に動いたのは学生達と先生だった。


(早速きたか、ステータス判明。スーツ男のステータスを見た限り、俺のとそう

変わっていなかった。問題はここでチートか外れが出たら、追放展開とかも

ありそうだな。怖え~)


「それじゃ、俺から」


青年は使用人に手順を教えてもらい、その透明な板に手をかざした。その時に板が

光りだし、広間の上で周りの貴族たちにまで見られるよう、巨大なホログラムで

そのステータスが映した。



―――――――――――――――――――――

【ステータス】

名前: 大山おおやま 大吾だいご

年齢: 15 種族: 人間

称号: 勇者

レベル: 1 - 経験値【0/150】

SP: 110


HP: 342/342

MP: 54/54

攻撃: 168 防御: 126

魔攻: 90 魔耐性: 73


筋力: 20 [21]

魔力: 9 [9]

知力: 40 [40]

速さ: 37 [37]

器用: 30 [30]

運: 10


【アクティブスキル】

-『身体強化 Lv.1』


【パッシブスキル】

-『剣術 Lv.1』


【一般スキル】


【特殊スキル】

-『言語理解』

-『魔物鑑定 Lv.1』


【装備】


『武器』

『防具』

『アクセサリー』


―――――――――――――――――――――


(他の学生の反応から、名前は前のままにしたか。ステータスは俺と似たような

ものだな)


その青年のステータスを見て、貴族の人達がざわめいた。


「素晴らしい!」

「女神様の言う通りだ!」

「レベル1でSPが110だなんてっ!」

「勇者の証である称号だ!」



(SPってのがいいみたいだな、何だろう?)


「他の勇者たちも! お願いします!」


使用人は嬉しそうな顔で俺たちを呼んだ。


(先ずは他の奴のステータスを見よう。チートみたいなものが無いといいが)





つづく

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