神通力

正歴・2022年、1人の男の子が誕生した。


生まれてすぐ親に病院前に捨てられた。


捨てられた赤子は四六時中泣いていた、泣くのに疲れると眠り、起きるとまた、泣いていた。


病院の新生児室で周囲に居る他の子よりも大きな声で泣いた。




正歴・2032年・神奈川県の某所にある孤児院。


そこに捨てられた男の子は居た。


僕の名前は三田統太、10年前ヤク中の犯人に撃たれて死んだ。死後、神とか言う胡散臭い奴と口論?になり信仰心がどうとか言われて、この世界に転生させられました。




僕は前世の記憶は残っている事もあり、この時代が歴史の教科書やゲームで見た事のある、


ヨーロッパに似ていて、国を国王が収めている、領地には領主が居て、住んで居る者は高い税金を支払わないと自分の命が保証されない、そんな日々に怯えながら暮らしているらしい。




なんて世界に転生させられる事も無く、前世の日本と同じ!これがパラレルワールド


っていう世界なのだろう。




僕が居る日本は「神々」を崇拝しているのは変わりが無く、神は遥かな昔、


一度だけ人の前に現れた事があるらしいのですが、その神の姿を描いた肖像画が、


僕をこの世界に飛ばした、アイツに似ています。




雰囲気は似ているが、でも!絵に描かれている様な、両手を広げ人々に向ける優しい笑顔、


それが本当に胡散臭い。




死ぬ前にもこんな笑顔をしている奴は多かった、平日の昼間に押しかけて来る営業マン、


駅前で綺麗事を言う政治家、日曜の昼だけに来る分厚い本を持ったおばちゃん2人、


誰にでも気さくに話し掛けるクラスでヒエラルキートップの女子、


明らかに人を騙している宗教家。


だからあの絵を前にすると、自分の嫌な記憶と色々と複雑な感情が入り乱れて、


あの時に戻れたら・・・なんて思います。




確かに、僕が悪いですよ?でもクラスの人気者の星野さんが毎日挨拶をしてくれて、


授業で分からない事は隣の星野さんが教えてくれて、帰宅部の僕が下駄箱で部活の準備をして靴を履いている時に「また明日」なんて言われたら——————勘違いするでしょう!


星野さんなんでサッカー部の佐藤と付き合ってる事を、教えてくれなかったんだよ。




さて、そんな事より毎朝のお祈りも終わったので、これから皆と朝ごはんを食べる時間です。


贅沢な朝食という訳じゃありませんが、毎食食べられる事に感謝しないといけませんね。


皆さんにはご飯を食べている間に軽く、これまでの事をお話しておきますね!






~~~10年前~~~


この世界に飛ばされ気が付いた時には、病院の前に放置された状態でスタートした。


僕は詰んだ!そう思いました、転生したら時代も世界観も違うと思っていた。


僕は騒々しく聞こえるトラックのクラクション、新聞屋のバイクの音。




聞き覚えしかない音達に「これって輪廻転生じゃ?」


腕を組んで考え込みたくなるけど、余りにも腕が短い。


とりあえず誰かに助けて貰わないと、こんな真夜中は成人でも寒くて死ぬ!




冒険に出る前から毒状態の瀕死は、宿屋で回復しないとヤバい!回復を優先しよう!


もう出来るだけ泣きました。モンスターは出なくても状態異常はヤバい!


喉が潰れるかもしれない!そんな不安よりも・・・こう思っていました。




僕がこんな形で終わる訳には行かない!そんな強い決意があったんです。


「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあぁぁぁぁぁ」


*訳(誰か!誰か!漏らしたからおしめ交換してぇぇぇぇ。)




あの時の僕は使命感に駆られました!転生したのはこの世界を救うのが、


この世界に平穏な時代を齎すのが僕の役目なんだと理解しました。




*当時の本人の言葉


「おぎゃあ!おぎゃあおぎゃあおぎゃあ!おぎゃあおぎゃあ」


*訳(あの神殺す!あの野郎を絶対に殺して、この世界を征服してやる!)




僕は三日三晩泣きました(嘘)。ここで終わっては、人々を助ける事も出来ない。


そんな前世から受け継がれた、僕の志が僕を奮い立たせたんです!




*当時の本人の心中


(あぁ、なんでこうなったかなぁ?帰りてぇ。こんなに外に居たのいつ以来だ?


中学の時はもう画面の中にしか友達いなかったからな?帰宅時間早かったもんな?


でも外でゆっくり過ごすのも悪くないな?いやいや!いい加減寒いぞ!


誰でも良いから早く助けろよ!)




僕は当時から世界の事を考えて、みんなが笑顔で楽しく過ごせる、それには何が必要なのかも考えていました。




*当時の本人


(あぁ、誰か助けてくれないかな?助けてくれた奴の家で俺は一生引き篭ってやる!前世から磨き上げた、親のすねをかじる「スキル・明日から頑張る。」をフル活用してやる。)




そんな時に救急で運ばれて来た人を迎える為に、外に出て来た看護師に発見された。


優しく抱きかかえてくれた看護師は僕に微笑む。


「もう大丈夫だよ、よく頑張ったね」


それだけ言うとゆっくりと歩き出し、僕はその柔らかく、前世では味わえなかった胸で


そっと目を閉じた。




「あぁ、神よ、今だけはお前が俺をこんな姿にした事は許してやるよ。良くやった!」




目が覚めると小さなベットで寝ていた、左右に動かすのも苦労する首を酷使して部屋を見渡し、天井を見つめながら「でっか!」陳腐な表現しか出て来なかった。




窓の近くに置かれたベット、窓の外には小鳥たちがどこか楽しそうに鳴いている、


静かな部屋で1人、今までの事を思い出していた。




(*新生児室で誰よりも大きな声で泣いていました、本人の記憶が都合よく改善された為に訂正しておきます、当人はヨーロッパに憧れあり。by師匠の目連)




前世での自分が惨めな人間で、母を亡くした時はそれを受け入れる事も出来ず、殻の中に籠って、父とは真面に会話もしなくなり、僕は死んだ。


母も居なくなり、空気と同じだったと言っても、自分の死が父に悪影響を及ぼさない事を心の隅で願った。


自分は何をしていたのか?何もしていなかった。始めるチャンスは平等に訪れるのに、自分に都合の良い言い訳を並べて何もしなかった。


終わってしまった今、たられば、また自分に都合の良い言葉が頭を過った。




中学の時に部活の顧問に言われたな、


「だって、だけど、そんな言い訳するような人生は送るな!世間はお前たちのお母さんじゃ無い!」


この言葉は妙に心に残っている。


黄昏泣きを言い訳に少し謝らせて欲しい。


ごめん、父さん母さん。本当にありがとう。




泣いていると誰かが、新生児室に向かって廊下を歩いて来る音が聞こえて来た、何かを持っているのか、走る訳でも無く、いくら赤ちゃんは泣くのが仕事ですよ?




なんて言われても中身は、前世の記憶を引き継いだままの18歳の大人!


泣き顔を見られたくない、プライドが泣くのを止めさせた。




泣き止んだところで冷静になり、今の自分の姿を客観的に考えた。


この両手はどうしていれば良いのか?赤ちゃんは泣いている時は手をグーにしているのを


テレビでよく見ていたが、泣き止んだらどうしているの?




「待てよ?泣き止んだ、赤ちゃんはアニメだと寝るか、笑っているかの二択だった気がする!」




そうか!となれば寂しくて泣いた!で来てくれた人に、とりあえずの、ありがとうの笑顔を向ければ問題は解決だな!後は自然と来た奴が覗き込んでくるから、興味の無い奴が相手でも手を前に出して、適当な事を発していれば馬鹿みたいに笑顔で帰るだろう!




そんな作戦を立てているウチに足音が部屋の前で止まった、ゆっくりと扉が開くと、


人が入って来た。




さっきの看護師さんだった!正直嬉しい!


あっママだぁぁぁ!ぐらいのテンションで行けば抱っこ間違いなしだな!


となればここは一発かますぜ!待っていろよ。




そんな下心丸出しで如何わしい事を考えていた時、看護師が話し掛けて来た。


返事も出来ないから、適当にしていると看護師が顔を近づけて来た、急な事に驚きつつも


無い事に期待して目を閉じ、頭の中は妄想でいっぱいになっていた。




「童貞ニートは何を考えている?」




ん?嫌いな声がした?それにこの呼び方は!目を開けると手が届きそうな距離まで顔を近づけている「神」。


嬉しそうに口角を上げ、気色悪い笑い声を出している。


「クッヒッヒ」




神と目が合う、その瞳は潤い、時折、涙を垂らさない様に瞼を閉じていた。


神といえ流石に自分が転生させた者が、こんな事になっていれば涙も流すのだろう。


と普通の神経をしていればそうなるのだが、この神は違う!笑いに来たのだ絶対に!




「人間事気が良く俺様を理解できたな?褒めてやろう!それにしても滑稽だな!お前は何も出来ない。そのせいで全てを人に頼らないと生きて行けないのだ!糞尿の後始末さえも出来ず人にやってもらうとは、羞恥心を持ち合わせている俺様、神には耐えられないぞ」




そう言うと神はまた笑った。


俺だって人にやって貰うのは嫌だ、が考え方を変えたんだ。




「今しかこんな痴態を晒す事は許されない!少し歳を重ねた子供にさえ出来ない!合法的にかつ!お互い将来的には忘れる!」




自分で言っていてかなり危険思考なのは分かるが、今はこうしか言い返せない。


それに神でも通って来た道だ、それこそお互い様だ!




涙目になりつつも、安いプライドが神に対して反論させた。


自分でも惨めなのは分かっているが、悲しい事に口は動いてしまう。


そんな弱者を相手にしている自分がバカらしくなった神は、呆れ顔で冷めた目で話す。




「お前の変な趣味には興味は無い。まぁこんなつまらない話をする為に、こんな人間の中に入っているのも気持ち悪いから本題に入るか?」




神はそう言うと、覗き込んで来ていた体を戻し、俺からギリギリ見える程度の場所に立つと、


話し始めた。




「ここはお前が居た世界に似た世界なのは、童貞ニートでも気が付いていただろう?この世界では、過剰な神への信仰心から過去に神の力を欲した愚者が現れた。その者は自分の君主が無残に死に神に力を求め、国中に住んで居た、民の命を犠牲に神の力を手に入れようとした」




急に真剣な表情で話し出す神に新生児室に誰も居ないのでは?と錯覚させる程に空気が変わった、圧迫感を雰囲気だけで感じ取った。




突然、話した事に理解が追い付かない、この世界はやっぱり異世界ではあるが、日本には変わりないようだ。だが、これからの話の流れが読めない、この神が何を考えているかは分からない。変な緊張感がこの小さな体に悪い。また漏れそうだ。




「そんな愚者を俺様が葬り去った、だがその者を蘇らせようとする者達が近頃、派手に


動き回っている?そこで前世で何もしていなかった、お前にその者達を倒す事を命ずる」




え?何?倒す?なんで俺みたいな、生粋のニートを任命するの?てか話を聞くと本当に転生ものみたいに頑張らないとダメな奴じゃん!俺は部屋に引き籠って漫画に囲まれてアニメを見まくる、そんな人生を謳歌したいんだよ!労働なんて時間の無駄な事していられないんだ。


それに、こんな可愛い赤ちゃんの俺を戦闘させようなんて、アンタは神というより悪魔に見えるのは俺だけじゃないはずだぞ?ここは時間を貰って上手く逃げ切る事を考えよう。


じゃないと強制イベントを開始させられる!




「俺はまだこんな体だ、戦いたい気持ちはあるがまだ時間が掛かる、20年は時間が欲しい、それまで俺も体を鍛(えたりしておくからまた来てくれ」




よし!この答えは納得のいくものだろう!さすがに幼児になったから戦ってこい!なんて言えないし、俺も丸々20年時間を稼げる!20年たった頃にまた作戦を考えれば良いか。


その答えを聞いて神はニヤついた。




「安心しろ!お前には最強の力を与えてやろう?明日からでも一般人ぐらいなら簡単に倒せる様になるが、蘇らせようとしている者達も神の力を少なからず借りて戦うだろうからな?その為にはお前の言う通り体を鍛えないと流石に死ぬだろう?」




嘘でしょ?そんな簡単に力を貰っても困るんだけど!ゆっくり推し事も出来ないじゃん!


いや?待てよ?最強の力って言っていたよな?となれば相手が雑魚な事を祈って鍛える時間をアニメに割けるのか?でも死ぬって言っていたよな!えっ俺また死ぬの!嫌なんだけど、


誰か代わりに戦ってくれないかな?そうしたら俺は平穏に生きて行けるのに。




心の中が乱れ、生まれたばかりの赤ちゃんの額には似合わない汗の量、必死な余り、目が血走っているのは本人だけが知らなかったが、次の日に影響が出ていた。




「最強の力って何だよ?」




「神通力って聞いた事あるだろ?お前には修業した僧侶でも到達する事が出来ない領域、釈迦を超える力をやろう」




言い終わるとベットに近づいて来た、顔の前に手を翳すと閃光が視界を襲った。


突然の事に驚いたが一瞬で終わった?




「何をしたんだ?」




「もう力は与えた、鍛えるのをサボらない様に厳しい奴を用意してやるよ!釈迦より力を持ったスタートなんだ頑張れよ?童貞ニート?」




神は言うと姿を消した、最後の一瞬笑っていたが、嘲笑う様に鼻で笑われた気がした。




「あれ?私はなんでここに居るのかしら?」




看護師は記憶がない様な素振りで新生児室を出て行った。


ともあれ静かな時間が戻って来た。




「あの赤ちゃんは捨てられて、ここに来たんでしょ?どうするのかしらね?」


「院長は報道関係者を呼んで、ここで保護するって言って病院の宣伝をしようって動いているらしいわよ!」


「うわぁ、酷いわね?でもあの子一人で売り上げが上がるなら楽よね?」




目を閉じていたら、何処からともなく、声が聞こえてくる。頭の中に勝手に入って来る声に驚いた。




「えー、本日はお集まり頂き有難うございます。先日俺様々の病院前に捨てられていた、新生児の男の子を保護しました。産婦人科に確認しましたが今通院されている方の中に出産を迎えた方はいない、という事を確認しました。自宅出産された方が育児に困窮され、俺様々に助けを求めたと予想されます、この男の子は俺様々が保護します。今後につきましては行政の方と相談していき、保護した子には明るい未来を生きられる様に最善の努力を俺様々もして参りたいと思います。」




「何度言ったら分かるの!先生の言う事も聞けないの!だから孤児の子は嫌いなのよ!」




「おい!お前はなんで参観日に誰も見に来ないんだよ?あっ!親に捨てられた可哀そうな奴だったな」




「なんだ?運動会にも誰も来てくれないのかよ?親の居ない奴は可哀そうだな!」




「おい!お前は買って貰えないだろうから見せてやるよ?良いだろ?」




なんだ!これは自分が小学校に行ったらイジめられてる映像が頭に!それにあの記者会見は?どうしたんだ。




「それは神通力の力ですよ?」




部屋に1人の男が立って居た。白いワイシャツ姿、細いフレームの眼鏡、髪色は赤茶色、それに今耳で声を聴いて無いぞ?頭に直接話し掛けて来られたような?コイツはヤバイ奴だ!あの糞神が言っていた、敵の奴らなのか!マジかよ!ここで殺される!




「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ?私はアナタの教育係りの「目連もくれん」と言います」




教育係り?こんな奴が?ヤンキーがカモにしそうなガリガリ君が?こんな奴が?良い表現するなら、優しそう。悪い表現なら何も出来なそうなこんな奴が!




「大丈夫ですよ?私はこう見えても強いですから?」




あれ?俺の心が読まれているのか?


神と居た時も俺が声に出していないのにあの神、普通に返事して来ていたもんな?


それにコイツも?どういう事だ?顔に出ていたか?




「顔には出ていませんよ?顔から出ているのは汗だけの様ですけど?」




さて説明も面倒なのでこれで分かりますか?


えっ!なんで、どういう事なんだよ!




「これも神通力の力です。あなたも使える能力はありますが、使い方が分からなければ意味のない力です。ですがあなたは先程、力を使っていました?気が付きましたか?」




力をさっきまで使っていた?何だ?・・・・・・あつ!




分かりましたかか?」




「この部屋に居ない看護師達の会話が聞こえたのと、変な記者会見と小学校に行ったらイジメられる映像が頭に流れて来た!」




「あなたに聞こえたのは実際に看護師たちが話をしていた事です。どんなに小さな声でも聞こえる能力「天耳通」


という力です。あなたの助けを必要とする者が居れば地球の裏側に居ようが、あなたにその声は届きます、そして、あなたが見た映像は未来を予測・透視する能力


「天眼通」になります。最後に私と神があなたの心を読んでいるのでは?


とあなたは不思議に感じていました、それも能力の一つになります。能力名は「他心通」こちらの能力はなんとなく分かると思いますが、読心術、テレパシーというと分かりやすいと思います。だから、あなたの考えは筒抜け何ですよ?」




なるほど?じゃあ俺が見た映像はこれから起きる事なのか?後は看護師たちの声が聞こえなくなったのはなんでなんだ?使い方って言っていたが、俺にもこんな事が出来る様になるのか?


だとしたら、あの糞神が言っていた、敵にも勝てる様になるのか?




目の前に立つ目連の圧倒的な威圧感を再確認した、この男の眼には今まで自分が漫画やアニメでしか知らなかった強者という存在、その存在に自分が近付ける能力も与えられた事、教育係という事で自分に危害を与えずに協力出来る仲間、そして、魂で感じた事を口に出した。




「俺をアンタの様に強くしてくれ!」






まだ、三田統太の名を授かる10年も前の話であった。






視点変更・神・目連


「目連どう思う?アイツ使えるか?」




「さぁ?鍛えてみないと何とも言えませんね?ですが戻って来たなら」




「じゃあ俺様が直接、奴に力を授けてやろうかな?」




「力ですか?どの程度与えるのですか?」




「釈迦を超える力にしようかの?」




「師匠以上の力をですか!それは、ただの人間には早すぎます、それに師匠が悟りを開くをまでに、どれだけの苦難を超えて来たか、この者にそこまで与える価値があるとは?」




「俺様に物申すとは偉くなったな?目連よ?お前、俺様との契約を忘れた訳ではあるまい?」




「いえ、申し訳ありません。」




私にこの神を討ち取る事が出来るなら、その首をこのまま背後から一瞬で、床に落としてやるが、このバケモノはそれを許さない。




私がその首を落とす前に私の胴体を両断するだろう、だが、このバケモノはそうで無いとダメなのだ。でないと殺せない・・・ですよね?俺様が神よ。




「目連?おい、聞いておるか!」




「あっ申し訳ありません」




「貴様に無心通を教えたのはやはり失敗だったな?貴様は俺様の話を聞かなくなった。」




「アハハ、申し訳ありませんって、それに何です?寂しいんですか?」


*無心通・他心通とは真逆の回りの音という音を耳に届かない様にする。




「貴様は殺されたいようだな?言ってみよ?どう殺されたい?出来るだけ希望に副って殺してやるから、ほれ?申してみ?」




「アハハ!あっ!部屋の電気消して来るの忘れたんで消して来ます!」




目連は神足力を使い消えて逃げた。


*神足通はテレポーテーション・瞬間移動の様な物である、使用者が思えば何処にでも移動できてしまう。




「ったく、目連の奴め、俺様が1人であの人間の相手をしないと、いけなくなったでは無いか!さて、どうの様に遊んでやろうか?あの玩具はまだ手に入れたばかりだからな!」




「あぁぁ、神が悪い顔しちゃってるよ、あの子大丈夫かな?反抗し過ぎると本当に殺されるから、程々にしてくれれば良いんだけど?まぁ殺されたら殺されたで良いか?いきなり師匠以上なんて私は許しませんよ。」




神は小児病棟の看護師に乗り移った。




「何だ?この人間の体、外目よりも重たいぞ!だから人間は怠けるから嫌いなのだ」




さてと、この肉体に入ればあの童貞ニートも気が付く事もあるまい、あの単細胞な男の事だ、反応など容易に想像できるが、ダメだ、もう面白い!


さてさて?この扉の向こうに奴が居るのか!ん?何だか中は赤子の泣き声が多いな?これでは楽しめんな、しょうがない、無心通を俺様と奴に発動するか。


神は扉を開け中に入り、周りに目を奪われる事も無く、一目散に目的のベビーベッド前まで来た、神が見ると、何処となく余裕のある表情をみせていた。




「ほうー面白い、まだ俺様の事には気が付いていない様だな?」




少し遊んでやろう、顔でも近づけてみるか?なんだこの童貞ニート、目を瞑り頬を赤く染めておるぞ!




「童貞ニートは何を考えている?」




神が話し掛けると、ゆっくりと瞼を開け、不快感が露骨に出た表情を見せた。


手が届きそうで届かない距離それを理解出来ていないのか、小さな拳で殴ろうと腕を振るうが届かない。




「クッヒッヒ」




無様だな人間、あれほど威勢の良かった人間がこんな何も出来ない体になるとは本当に無様で滑稽だぞ、あぁ、ダメだ、可笑しくて腹が痛い、ダメだ可笑しくて涙が。




「この神は笑いに来たのだ!絶対に!」




ほぉ?この人間、俺様の事が多少は理解出来る様になったのか!この人間の事を舐めていた、頭の中は空洞なのかと思っていたからな?褒めてやる人間。




「人間事気が良く俺様を理解できたな?褒めてやろう!だが、滑稽だな!お前は何も出来ない。そのせいで全てを人に頼らないと生きて行けないのだ!糞尿の後始末さえも出来ず人にやってもらうとは、羞恥心を持ち合わせている俺様、神には耐えられないぞ」




「今しかこんな痴態を晒す事は許されない!少し歳を重ねた子供にさえ出来ない!合法的にかつ!お互い将来的には忘れる!」




なにを言うかと思えば、この童貞ニートは・・・頭の中は空洞では無いが、淫乱、乱れておるな。


この様な事を平然と言える人間は奇異な、存在である事は間違いないが問題でもある。


余り、同じ空気を吸っていたら俺様まで可笑しくなりそうだ、伝える事だけ言ったら早々に帰るか。




「お前の変な趣味には興味は無い。まぁこんなつまらない話をする為に、こんな人間の中に入っているのも気持ち悪いから本題に入るかな?ここはお前が居た世界に似た世界なのは、童貞ニートでも気が付いていただろう?この世界では、過度な神への信仰心から過去に神の力を欲した愚者が現れた。その者は自分の君主が無残に死に神に力を求め、国中に住んで居た、民の命を犠牲に神の力を手に入れようとした。


そこで、俺様がその者を葬去ったたが、その者を蘇らせようとする者達が近頃、派手に


動き回っておってな?そこで前世で何もして居なかった、お前にその者達を倒す事を命ずる」




「俺はまだこんな体だ、戦いたい気持ちはあるがまだ時間が掛かる、20年は時間が欲しい、それまで俺も体を鍛えたりしておくからまた来てくれ」




コイツ、俺様から逃げるつもりだな?その様な事を俺様が容易く許すわけがあるまい。




「安心しろ!お前には最強の力を与えてやろう?明日からでも一般人ぐらいなら簡単に倒せる様になるが、蘇らせようとしている者達も神の力を少なからず借りて戦うだろうからな?その為にはお前の言う通り体を鍛えないと流石に死ぬだろうからな?」




「最強の力って何だよ?」




おっ!コイツはやはり馬鹿だ、そんな簡単に釈迦と同じ、もしくはそれ以上の力を与える訳があるまい。それに、同等の力を与えたら、俺様が目連に何をされるか。




「神通力って聞いた事あるだろ?お前には修業した僧侶でも到達する事が出来ない領域、釈迦を超える力をやろう」




「何をしたんだ?」




なんだ?人間はいちいち反応しないと死ぬ病気にでも掛かっているのか?煩い奴だな!




「もう力は与えた、鍛えるのをサボらない様に厳しい奴を用意してやるよ!釈迦より力を持ったスタートなんだ頑張れよ?童貞ニート?」


さて、俺様は帰るか。




「目連!聞こえておるだろ!後は貴様に任せる。


貴様の師を超える力は初めからは与えていないからな!お前の師を超えられるかは貴様次第だ、これでコイツが死んだ時は貴様が働け!元はと言えば貴様が人間の殺しは専門外などと言わなければ、こんな面倒しないで済んだのだ。だろ?師を越えた目連よ?」




「俺様が神よ、その事は言わないで下さい。師匠は師匠です、あと感謝致します。」




既に、天耳通と他心通を使っている?いや、まだコントロール出来ていない。


だが、ここまではっきりとした形で捉える事が出来るのは才能か?それとも偶然?


それにしてもこれは凄い!もう力の片鱗を見せるとは、この者は鍛えれば、もしかするのか?だから、早々に強大な力を与え様などと言ったのですか?神よ?


やはり、俺様が神には敵いません、師匠、私も弟子にすべき者を見つけましたよ。




「それは神通力の力ですよ?あっ!そんなに焦らなくても大丈夫ですよ?私はアナタの教育係りの「目連」と言います」




さて、これから楽しい時間が過ごせそうですね!

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