【第七片】 腐れ縁はなるべく切るな

入学式が行われた次の日の会科高校。

この高校の校門付近で、少し騒ぎになっていた。そんな場所に登校してきた木場浩正は、その騒ぎの様子を少し伺った。


「はーい、注目!!スポーツ研究部、部員募集中!!一緒に研究しようぜ!!質問もどんどん募集するぜ」


そこには舞い散る桜と同じ色の髪に、黒キャップを被った少年が、部員の募集のビラをばら撒いていた。

そんな彼の周りで野次馬をしていた学生の一人が、手をあげた。


「はい、ちょっと質問―!!」


「いいぞ、いいぞ。どんどん来い」


「スポーツ研究部って何をするのー?」


「よく聞いてくれた!!スポーツ研究をしながら、勝手に運動部の助っ人をすることだ!!」


と、風馬はそう意気揚々に叫ぶと、いつの間にか彼の周りには誰もいなくなっていた。

そんな事実に気が付いた風馬は、ふーっとため息を吐くと、手に持ったビラを見て。


「これは試練か…」


風馬はそう言うと、決め顔をした。

そんな彼の元に、一人の学生が歩いてきた。金髪で褐色肌が目立つ少女、小鹿野麻紀だった。耳にはヘッドフォンを付けており、視線は風馬の方には向いていなかった。


だが、風馬はそんなことはお構いなしだった。


「おーい!!小鹿野麻紀!!おはよう、元気か?俺は元気だ。スポーツ研究を一緒にしないか。Do you like sports?」


「…………………うっさい」


と、言う言葉と共に、麻紀は風馬の脛を蹴り、その場を立ち去って行った。


「ぎゃあああああ!!脛が!!俺に子どもができた時に、たっぷりかじらせてやるための脛が!!」


「何やっているんだよ、風馬」


見ていられなかった浩正はようやく風馬の傍へと近づいて、そう言った。


「おう。部員第二号。グッドモーニング」


「なんだ、その呼び方!!強制的に僕を入部させたくせに」


「ええー、そうだったっけ。俺、昨日の夜見た夢で頭いっぱいだから、あんまり覚えてない」


「お前の頭の中にあるのは少なくとも夢じゃねーよ」


「つまり才能か!」


「アホかー!!」


と、浩正はそうツッコミを入れた。

だが、そんな二人の間に大柄な先生が、両腕を組んで、仁王立ちしていた。


「おい、お前らか。校門にビラをまき散らかして、この学校の生徒だけではなく、近隣住民の方々にまで迷惑をかけているって奴らは」


「「へ!!?」」


風馬と浩正の二人は同時に、思わずそう呟いてしまった。確かにこの先生の言う通り、風馬が配っていた部員募集のビラが地面にまき散らかされていた。

その後、二人の悲鳴が会科高校に響き渡った。

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