【第六片】 友達とは親切と迷惑を掛け合いができる奴のこと

木場浩正は自宅へと帰宅した。もう日が暮れ始めているため、家の外はもう暗くなっている。

そんな中、浩正はリビングの方へと向かうと、テレビの前に置いてあるソファに身を投げた。


「ただいま~」


「あ、お帰り。制服にシワ出来ちゃうから、さっさとハンガーにかけときなよ」


「姉ちゃんなのに、母ちゃんみたいなこと言うなよ~」


「何か文句でも?」


「ないですー」


怠そうに浩正は身を投げたソファから立ち上がり、学ランを脱ぐと、ハンガーがまとめてある方へと歩いて行った。だが、そんな彼の後ろ姿を見て、浩正の姉は言った。


「浩正、入学式だからっていうのもあるかもしれないけど、なんか良いことあった?」


「え、どうして?」


「だってあんた、帰って来てからずっと楽しそうな表情しているんだもん」


そんな姉の言葉に、浩正は足を止めた。

そして、今日一日、あの空野風馬という男に、振り回されたことを思い出していた。朝には勝手に入部届を書かされ、入学して早々に共に遅刻させられ、放課後にはゲームセンターやファストフード店などに半ば強制に連れていかれ、入学式で早く終わるはずだったのに、帰ってきたのはもう夕暮れ。

体も疲労感が半端ではない。けど、彼は言う。


「入学して早々、はた迷惑で、人騒がせな友達ができたんだ。本当に最低な奴だけど」


今まで地味な生活を送ってきた木場浩正という男のこれからが、桜色に染まることを予感させる、そんな日だった。

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