第470話~暗黒海竜を討伐せよ その3 ボス暗黒海竜戦~

 俺の方の準備が整ったのでボス暗黒海竜との決戦を開始する。


「『世界の知識』」


 まずは魔法で相手の情報を探ることから開始する。


『暗黒海竜(強)』

 暗黒海竜の内、より邪悪なエネルギーを多く吸収して強くなった存在。

 特に電撃の攻撃を使用できるようになった点が強化ポイントである。

 それと通常の暗黒海竜と異なり電撃に耐性を持つ。

 倒すのなら力づくで倒すのがベストである。


 ……以上が検索結果である。


 この検索結果を受けて、俺の魔法って本当に役に立つなと思った。

 実は目の前の暗黒海竜……(強)だっけ?まあ、面倒だから暗黒海竜でいいか、にも俺は電撃攻撃を仕掛けて行くつもりだったのだが、魔法のおかげでそれが無駄だとわかり無駄な攻撃をしないで本当に良かったと思う。

 投げ槍に使ったモリだって安くは無いからな。

 これから先ダンジョンの探索も控えていることだし、無駄遣いしなくてよかったと思う。


 とはいえ、これで作戦の目途が立ったので、アドバイス通り力づくでやらせてもらうことにする。


★★★


「エリカ。リネットの防具に雷属性耐性付与の魔法をかけてやってくれ」

「はい、旦那様。『雷属性耐性付与』」


 俺の指示でエリカがリネットの防具に魔法をかける。

 ボワッとリネットの防具が光り、これで耐性付与が完了する。


 今回は力づくでいけと言うアドバイスだったので、俺とリネットの二人で行くことにする。

 力づくということなのでネイアを加えても良かったのだが、ネイアの防具では防御力に若干の不安があるのでリネットと二人で行くことにした。


「エリカたちはヴィクトリアの魔法で守ってもらいながら牽制攻撃を仕掛けてくれ」

「旦那様、畏まりました」

「それじゃあ、リネット、行くぞ」

「うん、任せて!」


 こうして下準備を整えた俺とリネットはボス暗黒海竜へと向かって行った。


★★★


「さすがにでかいな」

「うん、大きいね」


 ボス暗黒海竜に近づくにつれ、その巨大さが徐々にわかって来た。


 海の生き物は重力の影響が少なくなる分地上の生き物よりも大きくなるらしいが、こいつのでかさは群を抜いていた。

 前にフソウ皇国でともにキングエイプを倒した神獣ヤマタノオロチに匹敵するくらいの大きさがあったのだ。

 これだけでもかなり厄介そうな感じだが、こいつはただ体が大きいだけの雑魚ではない。


「フシュルー、フシュルー」


 と、俺たちは近づこうとすると電撃を飛ばして牽制してくるのだった。

 『グレートライジングフィッシュ』も電撃を飛ばしてきたが、暗黒海竜の方が体がでかい分内蔵している魔力が多いのか、威力も高く手数も多かった。


「うお!」

「よっと」


 蹴っこ激しい攻撃だったので、地上よりも動きが制限される分避けるだけで精いっぱいだった。

 このままだとじり貧だな。

 そう思った俺は残ったエリカたちに命令する。


「エリカ、予定通り牽制攻撃を実行しろ!」


★★★


「了解です!旦那様!」


 俺がエリカに命令を飛ばすと、エリカからそんな元気の良い返事が返って来て、ボス暗黒海竜への攻撃が開始される。


「『極大化 精霊召喚 水の精霊』。さあ、水の精霊よ。渦巻きを作ってホルストさんを援護するのです」

「『極大化 暴風』」

「『極大化 暴風』」


 ヴィクトリア、エリカ、ホルスターの三人が次々に渦巻きを作り出してはボス暗黒海竜目掛けて放って行く。


「ブオ」


 次々に自分に襲い掛かってくる渦巻きに驚き、面食らったボス暗黒海竜がエリカたちに対して電撃を放つが。


「『極大化 防御結界』」


 ヴィクトリアの魔法によってことごとく防がれてしまう。

 さらに。


「『武神昇天流 気弾』」


 エリカたちとボス暗黒海竜の攻防の隙を狙ってネイアが気弾を放ち続けている。

 ネイアの気弾の狙いは正確で、見事にボス暗黒海竜にヒットし続け、隔日にダメージを与え続けている。


 そんな風にエリカたちが上手い具合に牽制してくれているおかげで、ボス暗黒海竜の注意が大分俺とリネットから逸れた。


 もちろんその隙を逃したりしない。


「リネット!」

「おう!」


 俺とリネットは一気にボス暗黒海竜に決着をつけに行く。


★★★


 ボス暗黒海竜に十分に近づくことができた俺とリネットは一気に決着をつけることにする。


「とう!」


 リネットがボス暗黒海竜の脳天に一撃を食らわすべく、大きく飛び跳ね、必殺技を放とうと準備する。

 そのリネットの狙いに気がついたのか、ボス暗黒海竜は頭を上下左右に激しく振り、リネットに狙いを絞らせないようにしている。


 こうしてボス暗黒海竜の注意が俺から逸れたところで俺が攻撃の準備をする。


「『魔法合成 『神化 天凍』と『神化 天風』の合成魔法『神化 氷刃の嵐』」


 まず魔法を起動させ、それを剣に乗せる。さらに。


「『フルバースト 一点突破』」


 必殺剣も起動させて、準備は完了だ。


 この技でボス暗黒海竜を必ず仕留める!

 そう覚悟を決めた俺は、ボス暗黒海竜目掛けて魔法と必殺剣の合体技を放つ。


「『氷弾の嵐』と『一点突破』の合体技『氷弾突破』」


★★★


 『氷弾突破』の威力はすさまじかった。


 氷の刃と真空の刃をまとった一点突破は圧倒的で、一瞬でボス暗黒海竜の体を切り裂いていき、ボス暗黒海竜の体に致命傷となる大きな穴をあけることに成功した。

 さらに。


「『フルバースト 飛翔一刀割』」


 リネットがとどめの一撃をボス暗黒海竜にぶちかます。


「グウウ」


 脳天をぐちゃぐちゃにされたボス暗黒海竜は断末魔の叫びをあげると、そのまま海底へと沈んで行った。

 こうして俺たちは暗黒海竜たちを倒すことに成功したのだった。


★★★


 ボス暗黒海竜を倒した後は他に暗黒海竜が残っていたりしないか、周囲の偵察をした。


「『神獣召喚 海の主』」


 海の主まで召喚してアリババ砂漠周辺を徹底的に探索した。

 その結果。


「どうやらこの周囲にもう暗黒海竜はいないみたいだな」


 この周囲にもう暗黒海竜がいないことが判明した。

 それが分かった俺はこれで海底王の試練を果たせたとホッとした。


 それと、この探索の途中で俺たちは、暗黒海竜の巣と思われる場所を発見した。


「ホルストさん、あそこは暗黒海竜の巣ではないですか?」


 水の精霊を使って探索していたヴィクトリアが発見したのだった。


「確かに暗黒海竜の巣らしいな」


 近づいて確認すると、その場所は確かに暗黒海竜の巣であるらしかった。


 なぜそんなことが分かるのかって?

 簡単な話だ。


 そこには暗黒海竜が商人たちから奪ったであろう大量の荷物箱が破壊された状態で置かれていて、荷物の内の食料品が食い荒らされていたからだ。

 多分、荷物箱を奪った暗黒海竜たちが食料品だけを食べて、残りの荷物は放置していたのだと思う。


 そのことを確認した俺たちは残った荷物だけでも回収して、商人たちに返還してあげることにした。

 今回の暗黒海竜の襲撃で商人たちも大分被害を受けていると聞いている。

 だから少しでもその人たちの助けになればと思い回収することにした。


「ヴィクトリア、商人たちの荷物を残らず回収しろ」

「ラジャーです」


 ヴィクトリアに回収を頼んだら一瞬で済んだので、これでここでの仕事は終了だ。


「さて、それじゃあ、トリトンの町へ帰るぞ」


 暗黒海竜を全滅させたことで海底王の試練を果たした俺たちは、意気揚々とトリトンの町へ帰るのだった。

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