第469話~暗黒海竜を討伐せよ その2 二匹の暗黒海竜~

 暗黒海竜が現れた。しかも二匹も。

 なので、早速戦闘に入ることにする。


「エリカ、暗黒海竜が二匹ほど現れた。すぐに応援に来てくれ」

「旦那様、了解です」


 すぐに通信用のペンダントでエリカたちに連絡を取る。

 エリカたちは、『姿隠し』の魔法で姿を隠しながら、俺たちの少し後ろを移動しているはずなので、すぐに駆けつけてくると思う。


 それまでは俺とネイアの二人で暗黒海竜に対応する。

 商人の偽装を排除し、機械魚を放棄して二人で暗黒海竜に挑んでいく。


 え?機械魚を放棄って勿体なくないかって?

 別にそんなことはないと思うぞ。

 機械魚って海底世界ではかなり普及しているからそこまで高価ではないし、荷物箱には砂しか入れてないからな。

 ここで失っても惜しくはない。


 まあ機械魚はホルスターや銀を遊ばすのに使えそうだから、無事だったら回収しようと思う。


 それよりも今は目の前の暗黒海竜だ。

 こっちをさっさと片付けて、とっとと『王家の徽章』を手に入れようと思う。


★★★


 暗黒海竜は二匹いるので一匹ずつ確実に片づけて行く作戦で行こうと思う。


「『武神昇天流 気弾』」

「『極大化 天雷』」


 まずは二匹のうちの一匹に遠距離攻撃を仕掛ける。


「ウギャアア」


 俺とネイアの遠距離からの攻撃を受け、一匹が悲鳴を上げ、動きが止まる。

 どうやら足止めに成功したようだった。


「行くぞ!ネイア!」

「はい!」


 二匹のうちの一匹の足止めに成功した俺たちは、残りの一匹へと一気に接近する。


「『天風』」


 ネイアの手を掴みながら風の魔法で水中に渦巻きを発生させると、その反動を利用して後い馬に残り一匹の暗黒海竜への接近に成功する。


「??」


 あまりの展開の速さに暗黒海竜は対応できず、完全に棒立ち状態になる。

 もちろん、俺とネイアがこんな好機を逃すはずがない。

 俺とネイア、それぞれが必殺技を放ってとどめを刺しに行く。


「『武神昇天流奥義 龍破撃』」

「『フルバースト 一点突破』」


 ネイアは暗黒海竜の頭部を狙い、俺は心臓を狙う。

 ドゴンという鈍い音とともに暗黒海竜の頭蓋骨が砕け、グサッという音とともに暗黒海竜の神像が俺の愛剣クリーガに刺し貫かれる。


「グギュウ」


 一気に二か所も急所をやられた暗黒海竜の瞳から光が消え、体中から力が抜けて行くと同時に、暗黒海竜は海底へと静かに沈んで行った。


 これで一匹倒せた。

 残りはさっき足止めに成功した一匹だけだった。


★★★


 残り一匹の暗黒海竜は、俺たちともう一匹の戦いを見ていたおかげか、仕留めた方の一匹よりもしぶとかった。


「グモオオオ」


 渦巻きを発生させて俺たちの攻撃したり、尻尾を大きく振って海底に散らばる岩を尻尾で叩いて飛ばしてきたりと、遠距離攻撃を仕掛けてくる。

 それらの攻撃をかわして近づいたとしても。


「お、中々強力な頭突きだな」


 首を振り回して俺たちを攻撃してくるので、ここは空いて有利の海中ということもあり、中々難しい状況だった。


 とはいえ、俺たちに打つ手が無いわけでない。


「旦那様、加勢いたします!」


 こちらにもエリカたちが合流したからだ。


★★★


 俺たちに合流するなり、エリカたちは牽制攻撃を開始する。


「『精霊召喚 水の精霊』。さあ、水の精霊よ。巨大な渦を作って暗黒海竜を妨害するのです」


 ヴィクトリアは暗黒海竜が発生させる渦巻よりもさらに巨大な渦巻きを作り出し、暗黒海竜の渦巻きを相殺し、その上で暗黒海竜の行動を制限することに成功する。

 そこに他のメンバーが攻撃を加えて行く。


「『フルバースト 神激の槍』」


 リネットが買ってきた雷属性付与のモリを高速で暗黒海竜へ投げつけ、暗黒海竜に適度にダメージを与えつつ。


「『極大化 雷嵐』」

「『極大化 電撃』」

「『極大化 雷光術』」


 エリカ、ホルスター、銀が魔法で暗黒海竜をかく乱する。

 こうして仲間たちの援護で隙だらけになった暗黒海竜に、俺とネイアが再び特攻をかける。


「『武神昇天流奥義 龍破撃』」

「『フルバースト 一点突破』」


 先ほどと同じように必殺技で暗黒海竜の急所を狙っていく。


 グサッ。ドゴン。

 そして、前と同じく暗黒海竜の心臓と頭蓋骨を破壊し、暗黒海竜を始末する。


「グヘエエ」


 最後は、口からグボボと空気を吐き出しながら、暗黒海竜は海底へと沈んで行くのだった。


★★★


「ヴィクトリア。暗黒海竜を回収だ!」

「ラジャーです」


 二匹の暗黒海竜を討伐した俺はヴィクトリアに暗黒海竜の回収を命令した。

 暗黒海竜自体に対した価値はないが、退治した証拠として海底王に見せるために回収したのだった。


 回収自体はすぐに終わった。

 ヴィクトリアが収納リングを操作し、リングがきらりと光ると同時に暗黒海竜の姿が消える。

 これで、終わりだった。


 ようやく一仕事終えたと思った俺は正直ホッとしたものだったが、この状況はすぐにひっくり返されることになる。


 周囲を警戒していたリネットが警告を発したのだった。


「ホルスト君。新しい暗黒海竜だよ」


 何と三匹目の暗黒海竜が登場したのだった。


★★★


 リネットの警告を受け、新たに現れた暗黒海竜を俺は観察する。

 俺の見る限りでは新しい暗黒海竜は先ほどの二匹より二回りほど大きく強者のオーラを放つ存在だった。


 これは厳しい戦いになるかも。

 そう思った俺はヴィクトリアに命令する。


「ヴィクトリア。いつものやつを頼む」

「ラジャーです」


 俺の命令を受けたヴィクトリアは俺に抱き着いてくるなり、いつものように熱いキスをしてくる。

 すると、俺の体が光り輝き始め神意召喚が発動する。


★★★


「シンイショウカンプログラムヲッキドウシマス」


 いつもの声が俺の頭の中に響き、神意召喚が成功したことを確認すると、俺はすぐに魔法の確認をする。


『神属性魔法』

『神強化+8』

『天火+8』

『天凍+8』

『天雷+8』

『天爆+8』

『天土+8』

『天風+8』

『天罰+8』

『神のオーラ+3』

『神獣召喚+8』

『神約+6』

『重力操作+8』

『魔法合成+8』

『地脈操作+6』

『空間操作+8』

『世界の知識+8』

『十戒+3』


 全体的に魔法の熟練度が上がって、『神のオーラ』という魔法が増えていた。

 後でヴィクトリアに聞いた話だと、この魔法は神気を相手にぶつけることにより、相手を威圧したり攻撃したりしたことができるらしかった。


 そういえば、ヴィクトリアの家族って地上に顕現した時には、神気で相手を威嚇するような事をしてたから、あれと同じようなことができるのだと思う。

 そう考えると、俺の神属性魔法も大分成長したのだと感じられる。


 さて、魔法の確認はこれくらいにして最後の暗黒海竜を倒すとしよう。

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