第467話~暗黒海竜への挑戦! 暗黒海竜の下へ向かう~

 海底王から暗黒海竜の討伐の依頼を請け負った俺たちは暗黒海竜討伐のための準備にいそしんだ。

 セイレーンの話だと、『暗黒海竜って電撃の攻撃に弱いのよね」ということだったのでそれに合わせた装備を買いに行く。


 まずはリネットとネイア用に武器を買う。


「そこにある電属性が付与されたモリとカイザーナックルをくれ」

「毎度ありがとうございます」


 モリはリネットが支援攻撃用にカイザーナックルはリネットが打撃攻撃をする時に威力を上げるために使う。

 ネイアのカイザーナックルはともかく、モリまで買ったのは。


「電の属性を付与した槍を支援に使ってもいいんだけど、水中だったらモリの方が扱いやすいと思うんだよね」


 というリネットの意見により買うことにしたのだった。

 まあ、槍を投げるために一々エリカに属性を付与してもらうのも手間だから俺もそれでよいと思う。


 その他に道中の食料なども仕入れて準備は完了だ。

 それでは、暗黒海竜の所に向かおうと思う。


★★★


 暗黒海竜と戦うために俺たちはアリババ砂漠と呼ばれる場所に向かった。


 海底王国において、砂漠とは深い水域でサンゴなどが無く、生物が生息していない不毛の地のことであった。


 セイレーンの話によると、「とても殺風景でつまらない所よ」ということらしいので、特に景色とかに期待が持てる場所ではないらしかった。

 ただし海底王国にとっては重要な交易路らしく、ここで商人が襲われたりすると経済的に死活問題となるらしい。


 ということで俺たちにお鉢が回って来たという訳だ。


 それは良いのだが、暗黒海竜の討伐が試練であるということに俺は違和感を覚えた。

 なぜなら暗黒海竜がアリババ砂漠で暴れているのは何百年も前からという訳では決してなく、ここ一か月ほどの話らしかった。


 そんな最近起こった事件が俺たちの試練になっているってどういう事?

 そう思った俺がセイレーンに問いただしてみると。


「私、海底王には『王家の徽章』を渡す際に試練を課せとは言っておいたのだけど、どんな試練を課すかまでは指定していなかったのよね。だから何を試練にするか、海底王も悩んで、暗黒海竜の討伐を今回試練にしたんじゃないの?」


 との話だった。


 つまりセイレーンが試練の内容を海底王に丸投げしていたという訳だ。

 それで、急に俺たちが現れて試練の内容に困ってしまった海底王が、急遽暗黒海竜の討伐を試練にしたという事のようだ。


 そのセイレーンの話を聞いて俺は思ったね。

 セイレーン、結構大雑把だな、と。

 ヴィクトリアにもそういう所があるので、本当に二人はそっくりだと思う。


 まあ、いい。

 どんな依頼だろうと試練だというのなら乗り越えてやろうじゃないか。


 そう思い気を取り直した俺たちは、潜水艇に乗るとアリババ砂漠へと出発するのだった。


★★★


 アリババ砂漠までは潜水艇で二日ほどの距離だったので、着くまでの間は潜水艇の中でのんびりと過ごすことにする。


 ということで、潜水艇を操縦している俺と音波装置をいじっているリネット以外は潜水艦の後部にあるリビングルームでのんびりと遊んでいた。


 そんな彼女たちが今興じているのは海底王国で流行っているというおもちゃだった。

 『ケチャラ』という名前のボードゲームで、相手よりも多くの陣地を獲得した方が勝ちというゲームだった。


 割と単純なゲームらしく子供でも容易にできるので、トリトンの町では大会も開催されており、出場部門も子供の部、大人の部、女性の部といくつかあるらしくとても賑わっているらしかった。

 俺もやってみたが、ルールが単純な割には戦略性が高く奥の深いゲームだと思った。


 それで、今皆でおやつを賭けながらゲームに興じているようだった。


「はい!お父様、これで私の勝ちですね!そのチョコチップクッキー寄こしなさい!」

「う、うむ。折角ヴィクトリアがくれたクッキーなのに仕方がないな」


 ヴィクトリアのおじいさんは先ほどからセイレーンにお菓子を巻き上げられ続けている。

 ヴィクトリアのおじいさん、別に頭は悪くないと思うのだが、食い物がかかったセイレーンの気迫は本物だ。

 それに押し負け、ゲームに負け続け、すでに結構な量のお菓子を分捕られている。


 セイレーンもおじいさんがくみしやすいと思ったのか、さっきからおじいさんとばかりゲームをしているし。


「エリカさん、今度は私の勝ちですね」

「ふふふ。ネイアさんも中々やりますね」


 エリカとネイアはずっと互角の勝負を続けている。

 この二人このゲームの実力は互角ぐらいで良い勝負を行えているようだ。


「これで僕の勝ちだね。ヴィクトリアお姉ちゃん」

「ホルスターちゃん、やるう。カッコいい!」

「ああ、また負けてしまいました。ワタクシのお菓子が……」


 ヴィクトリアは先ほどからホルスターと銀のちびっ子コンビに五連敗している。

 いい大人が子供相手にボードゲームで負けるなよと思うが、ホルスターも銀も頭はいいからな。

 実際ホルスター何か俺でも頭がいいなと思うこともあるしな。

 だからポンコツなヴィクトリアが勝てないのにも頷けるのだった。


 皆がそうやって楽しんでいる間、俺はリネットとイチャイチャしていた。

 音波装置の送受信機を持ったまま椅子ごと俺の側によって来させて、一緒になってお話している。


 え?危なくないのかって?

 大丈夫だ。リネットの耳は良いから受信機の音を聞き逃すことは無いだろうし、俺もリネットもジャスティスの修業を受けているからな。

 多少他のことをしながらでも、メインの仕事を十分にこなすことができるようになっていた。


 それで二人で何の話をしているかと言うと、愛を語っていた。

 とは言っても大したことをしているわけではない。


「なあ、リネット。最近、シャンプー変えたりした?」

「わかる?この前、トリトンの町で『マーメイドプリンセス』ってお店に行ったじゃない?あそこで売っていたシャンプー、とても匂いが良かったからみんなで買って、今使っているんだよ」


 そういうちょっとした雑談をしたり。


「ところで、この前の音楽祭でさ。どこかの歌手のグループが、聞いているとこっちが恥ずかしくなるような恋の歌を歌っていただろう?覚えているか?」

「うん。覚えているよ。あれは良かったね」

「実は、俺、あの歌練習して歌えるようにしたんだ。あんまり宇なくは無いけどさ、聞いてくれないか?」

「え?ホルスト君が歌を歌ってくれるの?いいな。是非聞かせてよ」

「それでは……」


 と、慣れない歌を歌ってはリネットを楽しませたりして二人きりの時間を満喫したのだった。

 こんな感じで、潜水艦で楽しく過ごしつつ、予定通り二日ほどでアリババ砂漠へと到着したのだった。


★★★


 ちなみに俺の歌は、航海中に嫁たち全員に聞かせたのだが、割と評判がよく、嫁たち全員に「惚れ直しました」と、褒めてもらえたのだった。


 この日のためにこっそりと歌の練習をしていて、本当に良かったと思った。

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