第466話~海底王の試練 暗黒海竜を退治せよ!~

 『王家の徽章』というアイテムを手に入れるため、海底王に謁見を申し出ることにした。


 俺はこの手の手続きが苦手なのでエリカに代行してもらうことにする。

 エリカはヒッグス家の娘としてこういう公的な手続きもこなせるような教育も受けてきている。

 だからこういう俺にはよくわからない役所関係の仕事なんかはよく俺の代わりにやってもらったりしている。


 こういうのはエリカ以外、まあ残りのメンバーでできるとしたらエルフの国で神官長をやっていたネイアくらいかな、あまり詳しくないので本当に助かっている。

 本当こんな優秀な嫁を貰えて俺としてはありがたい限りである。


 俺に頼まれたエリカはテキパキと書類を準備する。


「それでは、旦那様。行ってまいります」


 そして、エリカは王宮へ出かけると手早く謁見の申し込みを済ませて帰って来るのだった。

 帰ってきたエリカに俺はお礼を言う。


「エリカ、本当に助かったよ」

「いえ、この程度の事、妻として当然のことです」

「いいや、こんなこと誰にでもできる事じゃないよ。エリカだからこそだ。いつもありがとう」

「まあ、旦那様ったら……そんなに褒めてもらえて、とてもうれしいです」


 俺に褒めてもらえたエリカは物凄く上機嫌になり、ここはエリカとの仲を深めるチャンスだと感じた俺は、エリカにキスをする。


「エリカ、大好きだよ」

「ああ、旦那様」


 キスをしたことで雰囲気が最高潮に達した俺は、そのままエリカを寝室へと連れ込み、一晩中二人の愛を確かめ合ったのだった。


★★★


 翌日、俺たちは海底王との謁見のために出掛けた。

 メンバーは俺と嫁さんたちの計五人だ。

 まあ、あまり大人数でぞろぞろ王宮に出掛けるのもどうかと思ったので最低限に人数は絞っておいた。


「ママたち、行ってらっしゃい」

「行ってくるわね」


 居残りのメンバーに見送られて迎賓館を出る。


「本日、海底王陛下と謁見の約束があるものですが」


 王宮の入口で受付を済まし、奥へと通される。


「旦那様、先客の方々がいらっしゃるようですね」


 エリカの言う通り奥へ行くとすでに先客が待っていた。

 海底王も王様だからな。謁見を求めてくる客が多いのだと思う。

 仕方がないので俺たちの順番が来るまで待つことにする。


 椅子に座って大人しく順番を待つこと三十分。


「ホルスト様。海底王陛下がお待ちでございます」


 案内の役人が声をかけてきたので、俺たちは謁見の間へと入って行った。


★★★


「ホルストよ。久しぶりであるな。息災であるか?」

「は!海底王陛下、お久しぶりでございます。陛下のご配慮のおかげで私どもも元気で過ごさせてもらっております」


 俺と海底王の謁見はそんな紋切り型の挨拶から始まった。

 ちょっと堅苦しい気もするが、王様との謁見なんてこんなものなのでさっさと話を進めようと思う。


「それで、ホルストよ。この度は何の用で謁見を申し込んできたのかな」

「実は今回は陛下にお願いの儀があってやって参りました」

「願いの儀?何かな?」

「私どもが海底火山の遺跡に挑むために参ったことは以前にお話ししたことがありましたね?」

「うむ、確かにそう申しておったな」

「それでそこへ入るには陛下が持つ『王家の徽章』なるアイテムが必要と伺いましたので、それをお借りできないかと思い、やって参りました」

「ふむ、やはりその件で参ったのか」


 俺のそのお願いに対して、海底王はまるで俺がそのお願いをするのが分かっていたかのように頷くと、玉座に深く腰掛ける。


 いや、分かっていたというか、必ず俺がそのお願いをするという間違いない確信があったのだと思う。

 何せ『王家の徽章』の件についてはセイレーンが海底王に神命として申し付けていたそうだからな。

 そこにセイレーンに認められた俺たちが来たのだから、気になって仕方がなかったのだと思う。


 それはともかく海底王の話は続く。


「ホルストよ。『王家の徽章』は我が先祖がセイレーン様よりお預かりした物。セイレーン様が認めた者が現れたら渡すように申し付かっておる。ゆえに、そなたたちに『王家の徽章』を貸すことに異存はない。ただそれには一つ条件がある」

「条件……ですか?」

「そうだ。お前たちには『王家の徽章』を得るための試練を受けてもらうことにする」


★★★


 試練!


 海底王の試練という言葉を聞いた時、前にセイレーンに『王家の徽章』の話を聞いた時、セイレーンが海底王に頑張って借りなさいと妙に言葉を濁していたことの意味が分かった。

 多分セイレーンは海底王にこう言っていたのだと思う。


「海底王よ。その『王家の徽章』は私が認める戦士が来たら渡しなさい。ただし、その者が『王家の徽章』にふさわしい者か、試練を与えて試しなさい」


 ……ってね。

 いかにもセイレーンなら言い出しそうなことだった。


 ただこれは現実的な手段でもある。

 俺たちはセイレーンの分身体が出て来てくれたおかげで自分たちがセイレーンに認められた戦士だと証明できたが、他の者だとそう簡単には証明できないだろう。

 だからセイレーンも海底王に試練を貸すように指示を出したのだろう。


 となればこの試練は受けなければならなかった。


 ということで俺は海底王にこう返事した。


「試練ですか?分かりました。お受けしましょう。それで、どのような試練でしょうか」

「うむ、実はな。最近王都の近くのアリババ砂漠に暗黒海竜が出現して旅人を襲っておるのだ。そなたらにはその暗黒海竜を退治してほしい?」


★★★


「暗黒海竜ですか?それはどのような魔物でしょうか」


 暗黒海竜の討伐を依頼された俺は海底王に暗黒海竜がどんな魔物なのか聞いてみた。


「暗黒海竜はセイレーン様の眷属である聖なる海竜の一族のうちで邪悪な心に染まって魔物へと堕ちてしまったものたちなのだ。もちろん海竜であるかっらな、その戦闘力はとても高いぞ」


 なるほどセイレーンの眷属である聖なる海竜であったにもかかわらず、完全に魔物と化してしまった海竜ね。

 聖なる海竜が邪悪な意思に支配されることなんてあるのかと思ったりもするが、その点をセイレーンに確認すると。


「ああ、あの子たち、確かに聖なる海竜の一族だったのだけど、その中でも人間や海底人を襲ったりして私の手に負えない子たちだったのよ。それがこの世界に流れる邪悪な意思と接触してしまってますます凶悪になっちゃったの。ここまで邪悪に染まったら退治するしかその暴走を止める手段はないわね」


 と、海底王の話で間違いはないと言っていた。

 それで、それが暴れ回っているから俺たちに退治してほしいという訳か。


「わかりました。そういう事情であれば、このホルスト。見事その暗黒海竜を退治してまいりましょう」

「うむ、ホルストよ。それでは頼んだぞ」


 こうして俺たちは海底王の頼みを引き受け暗黒海竜胎児へと赴くことになったのであった。

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