第460話~ようやくまともな部屋に移される やった!これで普通に生活できる!~

 さて、ヒッポカンプ公爵の処分も終わったことだし、セイレーン(分身体)が海底王に話しかける。


「ごめんね。突然お邪魔して騒ぎまで起こしちゃって。でも、自分が認めた子たちがあのバカ公爵にいじめられているのを見て、どうしても我慢できなかったの」

「いえ、セイレーン様に謝っていただくようなことではありません。ヒッポカンプ公爵の行動、我が叔父ながら行き過ぎではないかと、私めも思っておりましたので。むしろ、我が叔父がセイレーン様を疑うなどという神をも恐れぬ所業をしたにもかかわらず、叔父の暴走を止められなかった私に何の罰も下さないでいてくれていることに感謝しております」

「あら、感謝なんかしなくてもいいのに。私は天からあなたの行動を見ていたけど、あなたはあのバカ公爵の行動を制止しようと必死に頑張っていたでしょう?だから、あなたが反省するようなことは何もないのよ。それよりもね」


 そこまで言うと、セイレーン(分身体)は一度海底王から目を離し、俺たちの方を少しだけ見てニコリとほほ笑む。

 その笑顔は俺に笑いかけてくる時のヴィクトリアとそっくりで、ああヴィクトリアとこの人ってやっぱり血が繋がっているんだなと、再認識させられる。


 俺たちの方を見た後、セイレーンは再び海底王の方を見てこう言うのだった。


「それよりも、あの子たちのことをお願いね。彼らが泊まっていた家、内装もボロかったみたいだし、食事とかも自分で用意していたみたいなの。折角私が送り込んだ子たちなのだからもうちょっと歓迎してあげてね」

「はい!もちろんでございます!セイレーン様にそう頼まれた以上、私どもとしては全力でお世話させていただきます」


 セイレーン(分身体)に頼まれて海底王は、そう宣言するとすぐに部下を呼び。


「おい!すぐにホルスト殿たちを歓迎するための準備をするのだ!」

「ははっ!」


 と、命令するのだった。

 それを見たセイレーン(分身体)は満足の笑みを浮かべ。


「それじゃあ、私は帰るから、後はよろしくね」

「はい!お任せください!」


 そう言い残すと、天界へと帰って行ったのだった。


★★★


 その後、俺たちは大変忙しくなった。


 まずは宿泊先を移動した。

 昨日までのボロ家から、王宮の側にある迎賓館に宿泊先が変わった。


 それが意味するところが何かと言うと、俺たちの地位がただの地上人の客から国賓待遇へと大幅に向上したということだった。

 おかげで世話係の侍女や下男が二十人ほどついて俺たちの世話をしてくれるようになった。


「ホルスト様。海底王陛下から皆様の世話を精一杯するようにと言いつけられておりますオーズと申します。御用があれば何なりとお申し付けください」


 お世話係の責任者が俺の前に来てそう断言してくれた。

 この責任者のオーズという人は、誠実で信用できそうな感じの人だったので、色々と頼みごとをしても大丈夫だと感じたので、全面的に世話を任せることにした。


 そうやってお世話係がついたことの他に、泊まる部屋が急に豪華になった。

 宝石サンゴや金銀で飾られたうえで、高級そうな絵画や調度品が置かれた最高級の待遇の部屋だった。


 もちろん部屋のベッドもふかふかで。


「このベッドならよく寝られそうで大満足です!」


 ヴィクトリアなど早速ベッドに横になってはのんびりとくつろぐのであった。

 というか、ヴィクトリア以外もこの待遇改善には大満足で。


「ようやくまともな部屋に泊まれそうですね」

「ここなら旅の疲れもとれそうで満足だよ」


 等々、全員がこの待遇改善を歓迎するのだった。


★★★


 ちなみに、昨日まで俺たちが泊まっていたボロ家。

 あれを用意したのはヒッポカンプ公爵だったらしい。


 海底王はもっと普通のちゃんとした家を手配してくれていたらしいのだが。


「あんな奴らなど、寝ることができる程度の家で十分だ!」


 と、海底王も感知していない所で役人に命令してあの家を俺たちに当てがったらしかった。


 本当に素晴らしい公爵様だ。

 俺たちのためにわざわざあんなボロ家まで用意してくれるなんて。

 本当に腹が立ってしょうがないやつだ。


 俺たち全員そう思ったものだったが、特にヴィクトリアのおじいさんの怒りがすさまじかった。


「おのれ!あのカエル野郎め!よくも我々にあんなひどい扱いをしてくれたものよ!」


 と、大声をあげながら顔をエビのように真っ赤にしてぷりぷりと怒っていた。


 それを見て、俺は知らね、と思った。

 よりにもよってヴィクトリアのおじいさんをここまで怒らせるなんて。


 あいつ、すでにセイレーンによってカエルの姿にされて見世物にされているが、絶対その程度では済まないと思うぞ。

 水槽の中に蛇が侵入してきて、恐ろしい思いを味わうことになるとか、何かの間違いで水槽の外に出られたはいいが、人々に踏みつぶされそうになるとか、とにかく禄でもない目に遭う未来しか想像できなかった。


 最悪、デリックたちみたいに地獄へでも墜とされるんじゃないかと思うが、俺としては一切同情できなかった。


 だって、あいつのせいで嫁さんたちの機嫌が悪くなって俺大変だったし。

 もし、そのことで俺と嫁さんたちの仲が悪くなったりしたらどうしてくれてたんだよ!と、本当に悩んだものだった。


 ということで、あの公爵にはせいぜいひどい目に遭ってほしいものだ。

 そう俺は心から願うのだった。

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