今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第452話~セイレーンによる海底都市講座 ついでに家族で海中遊泳会~
第452話~セイレーンによる海底都市講座 ついでに家族で海中遊泳会~
『グレートライジングフィッシュ』を倒した後は順調に旅が続いた。
魔物の影は一切なかった。
まあ、あれだけの戦闘があったわけだし、他の雑魚共もその様子を見ていたはずで、俺たちには敵わないとでも思って、岩場の陰にでも隠れて大人しくしているのだと思う。
おかげで俺たちは楽ができるので、大歓迎だがな。
それはともかく、先程の戦闘の状況を嫁たちに話したところ。
「「「ふーん。海の中でそんなに自由自在に泳げるのって素敵ですね」」」
と、俺とヴィクトリアが水中で自由に活動できていたことに興味が沸いたらしい。
「ちょっとその辺りのサンゴ礁にでも寄って、少し泳いでいきませんか?」
そう俺におねだりしてきた。
神命のために頑張っている最中なのに、そんな寄り道をしても良いのだろうか。
俺はそう思い悩んだが。
「いいじゃない。少しくらい遊んでも。海神の私としては皆にもっと海の魅力を知ってほしいし」
嫁たちだけでなくセイレーンまでそんなことを言い出したので、こうなるともう俺に拒否権は無く、結局近くのサンゴ礁にノーチラス号を停め、サンゴ礁見物をしていくことになったのだった。
★★★
リネットだ。
アタシたちは今ノーチラス号の船外に出てサンゴ礁見物をしている。
アタシたちは海の主の『海竜の加護』の効果で水中でも息ができるし、自由自在に動き回ることができている。
それは今までに味わったことがないとても不思議な感覚だった。
力を入れなければ水中にふわりと留まって、ゆっくりと浮いていられる。
そこから得られる感覚が何とも心地の良いものだった。
この感覚はアタシ以外のみんなも気に入っているらしく。
「何と言いますか。こうして水中に自在に浮かぶという感覚は不思議なものですね」
「本当そうですね。水中に浮かんでいると、どこにも体重がかかっていなくて、全身の力が抜けたような感じでとても気持ち良いですね」
「その通りです。ワタクシなんかあまりにも気持ち良すぎてこのまま眠ってしまいそうです」
と、口々に水中に浮かぶことの気持ち良さを褒めていた。
ホルスター君と銀ちゃんも。
「銀姉ちゃん。水中でこうやって自由自在に動き回れるのって面白いね」
「本当、面白いね」
そうやって適当に水中を動き回って楽しそうに遊んでいる。
「お父様。魚に餌をやる時はもっと優しく上げてください。さもないと魚が逃げるでしょうが」
「うむ。すまん。次からは気を付けるからそんなに怒らないでくれ」
セイレーン様とクリント様は魚への餌やりを楽しんでいるようだ。
ただクリント様は餌やりがあまり上手くないらしく、セイレーン様に怒られていたりしている。
娘に怒られたクリント様はしょぼんと肩を落とされて、気落ちしているように見える。
こういう点、ヴィクトリアちゃんに怒られた時にマールス様によく似ていて親子なんだなと思う。
そして、肝心のサンゴ礁の景色はと言うと、こちらも素晴らしいものだった。
色とりどりのサンゴの周りにはやはり色とりどりの小魚たちが無数にいて、それがサンゴの中から外、外から中へと出たり入ったりする光景は見ていてとても心が癒されるものだった。
水中に浮かびながらそれらの景色を眺めるのは、まるで天国で天女の舞でも見ているかのようで、至福の時だった。
こんな体験ができるだけでも、本当ホルスト君の奥さんになって良かったと思う。
★★★
何か嫁さんたちが滅茶苦茶リラックスしている。
全員がうっとりとした顔で、水中でぷかぷかとのんびり寝ころびながら、ずーっとサンゴ礁や周囲の魚たちの様子を飽きることなく見続けている。
見ているだけで俺まで幸せになれる素晴らしい光景だった。
何がいいって、ここからだとよく見えるんだよな。
嫁たちのきわどい部分が。
またそれかよと思われるかもしれないが、だってこんなの普段の嫁たちなら絶対やらないんだぜ。
それが、こういういつもとちょっと違ったシチュエーションだと勝手にやってくれるんだ。
ここで拝んでおかないでいつ見ておくというんだ。
ということで、しばらく俺は嫁たちを見て楽しんだ。
そして、十分に楽しんだ後は。
「ホルスターに銀。パパと鬼ごっこでもしようか」
「「うん」」
と、何事もなかったかのように子供たちと遊んでやり、上手くごまかすのであった。
★★★
さて、サンゴ礁見物を楽しんだ後は再び海底王国へと向かい始める。
「あと一時間ほどで海底王国に着くからね」
セイレーンの話だとそういう事らしいので、そろそろ上陸の準備を始めることにする。
まずはセイレーンに海底王国についての説明を受ける。
「海底王国と一口で言っても、そこは地上とあまり変わらない場所なのよね」
「そうなのですか?」
「少なくとも都市部には『海竜の加護』のような特殊な膜が張り巡らされていて、そのおかげで地上と同じように息ができるし、人々の暮らしも地上とそう変わったものではないわ。海底の人々も都市にいる時は地上の人々と見た目は変わらないわね」
「へえ、海底の人々も地上の人たちとそんなに変わらないのですか。しかし、伝承によると海底には人魚や魚人たちがたくさん住んでいるということだったはずですが、その点はどうなっているのでしょうか」
「ふふふ、そう話を急かさないでちょうだい。私は今都市部では、って言ったでしょ?賢いホルスト君ならこの意味が分かるでしょう?」
「なるほど、つまり都市部では地上と変わらないけどそれ以外では違うということですか?」
「そうよ。賢い子は好きよ」
そこまで言うと、セイレーンは一旦話を止め、目の前のテーブルに置かれていたお茶を一口飲み、落ち着いてから話を再開する。
「海底の人々はね。都市部にいる時は地上の人たちと同じ姿なのだけど、水中に一歩入った瞬間、足が魚の尾になり、人魚や魚人の姿に変わるのよ」
「なるほど、そういう仕組み何ですね。それなら伝承とも符合するので納得です」
「ホルスト君って理解が早くていいわあ。まさにその通りなの。伝承に出てくる人魚って海底の人々の一つの側面に過ぎないの。ということで、その点を踏まえて海底の人たちとも仲良くしてあげてね」
「はい、わかりました」
これでセイレーンの説明は終わりだった。
さて、セイレーンのおかげで海底王国に関する予備知識も手に入ったことだし、いよいよ海底王国に入国だ。
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