第19章~セイレーンたちと行く人魚の国冒険記~

第448話~神々の王クリント ホルストとヴィクトリアはクリントに愛を語る~

 セイレーンとクリントを連れてガイアスの町の海産物料理のレストランに入った。

 ここのレストランは以前一度行ったことがあるレストランで、とてもおいしかった記憶がある。


「いらっしゃいませ。お席へどうぞ」


 店員さんに案内されて席に着くと、メニューを開き、料理を注文する。


「え~と。この『シェフのお勧め 海鮮パスタランチセット』が七人前と、それに合わせて適当にワインを。後、子供たちには『ハンバーグパスタ』とオレンジジュースをください」

「畏まりました」


 そうやって店員さんに注文すると、すぐに前菜と飲み物が出てきたので、それを飲みながら話をすることにする。

 まずは俺たちの方の挨拶からだ。


「初めまして。クリント様。ホルスト・エレクトロンと申します。よろしくお願いします」

「エリカ・エレクトロンです。よろしくお願いします」


 と、こんな感じで順番に挨拶して行く。

 そして、俺たちの挨拶が終わったら今度はヴィクトリアのおじいさんが挨拶してくる。


「私が、ヴィクトリアの祖父のクリントだ。よろしく頼む」


 そんな感じでお互いに挨拶が終わった後、おじいさんは俺のことをじろっと睨みつけてきた。

 この視線の感じ方には覚えがある。

 ヴィクトリアのお父さんやお兄さんが俺に最初に会った時に向けてきた視線と同じものだったからだ。


 それが分かった俺は、ああこの人もか、そう思ったのだった。


★★★


 そうやって挨拶が終わった後、俺はおじいさんに色々と質問された。


「ホルスト君と言ったかね。マールスに聞いた話だと、君はうちの孫娘と付き合っているそうだが、どこまで行っているのかね?」

「まあ、何と言いますか。将来のことを話しあうくらいの仲にはなっていますね」

「将来のことだと?それはどういうことを話しあっているのだ?」

「子供は何人欲しいだとか、子供はこういう風に育てたいだとか、子供の名前はどうしようだとか。そういう事を話しています」

「何!子供だと!」


 子供と聞いて、それまで穏やかで紳士的だったおじいさんが態度を一変させる。


「子供の話までしているということは、もうヴィクトリアとはそういう仲になっているという事か?」

「一応は……」

「何ということだ!お前、この私に黙ってヴィクトリアとそんな関係になるなんて、許せん!」


 そう言いながら、席を立ちあがると俺の方へ向かって来ようとする。

 だが、隣の席にいたセイレーンがおじいさんの袖を掴んでそれを止める。


「お父様。一体何をなさるおつもりですか?」

「決まっているだろう。この人間の小僧に制裁を加え……」


 と、おじいさんがそこまで言ったところで、セイレーンがおじいさんの尻をギュッとつねる。

 それが痛かったらしく、思い切り飛び上がりながらおじいさんがセイレーンに文句を言う。


「こら、セイレーン。お前はお父様に何をするのだ!」

「お父様こそ、ホルスト君に何をするつもりなのですか?大体、お父様はお母様に『下界に行ってもいいけれど、余計なことはするんじゃないわよ!』って、言われているではないですか。ここでホルスト君に何かしたら、家に帰っても家族に総スカンを食らうだけで、二度と家へは入らせてもらえないですよ!」

「ぐっ」


 しかし、セイレーンに反撃されるとあっさりと言い負かされ黙り込んでしまった。


 俺としては助かったが、このまま放って置くと後で面倒くさくなる気がする。

 なので、助け船を出すことにする。


「まあまあセイレーン様。おじいさんもヴィクトリアのことが心配でそう言ってくれているわけですから、そう責めないであげてください。それよりも、もうすぐメインの料理が出てくると思いますので、大事な話は料理を食べた後、場所を移してしましょう」

「まあ、ホルスト君は優しいのね。いいわ。こんな素敵な雰囲気のレストランで騒ぎを起こすのも迷惑だし、さっきからよい匂いが漂ってきてお腹が空いてたまらないから、まずはお腹を満たさないとね。続きは場所を変えてからにしましょう。お父様もそれでいいですね?」

「う、うむ」


 ということで、話はまとまり、話の続きは場所を移してからということになったのでった。


★★★


 その後、場所をホテルの貸会議室に移して話し合いは行われた。

 参加者は俺、ヴィクトリア、おじいさん、セイレーンの四人だ。

 他のみんなは町の方へ遊びに行っている。


 まあ、これは俺とヴィクトリア、おじいさんたちの問題だからな。

 他のメンバーまで巻き込むわけにはいかなかった。


 それでおじいさんとの話し合いだが、俺とヴィクトリアの作戦としては、俺たちがいかに真剣に付き合っているかを説明することにした。


「おじい様、聞いてください。ワタクシとホルストさんは真面目に将来を考えているんですの。ワタクシ、ホルストさんのこと、本気で愛しています。だから、ワタクシたちの仲を認めてください」

「ヴィクトリアのおじいさん。ヴィクトリアの言う通り俺も本気でヴィクトリアの事を愛しています。頑張って幸せな家庭を築きたいと思っているのです。ヴィクトリアのことは一生大事にします。ですから俺たちの仲を認めてください」


 そうやって、俺たちは二人で代わる代わる俺たちがいかに真面目に愛し合っているかを訴え続けた。


 俺たちがそうやって必死におじいさんに話し続けている横では。


「お父様。ホルスト君とヴィクトリアの二人とも真面目に付き合っているようですし、お兄様とソルセルリお姉ちゃんも二人のことは認めています。親が認めているのに、祖父がそうやってしゃしゃり出てきて反対するのもいかがなものかと思いますよ」


 と、セイレーンも俺たちのことを応援してくれていた。

 こうした俺たちの説得攻勢で、おじいさんも多少心を動かしてくれたようで。


「そこまで言うのなら、お前たちの仲を認めてやらんこともない」


 とまで言い始めた。


「おじい様、本当ですか!ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」


 そのおじいさんの言葉を聞いて、俺とヴィクトリアはおじいさんにお礼を言ったのだが、そこはあのヴィクトリアのお父さんのお父さんだ。

 お父さん同様条件を付けてきた。


「ただし、海底の封印遺跡の封印をそこの男が無事に成功できたらの話だ。あそこにはこの私自らが設置した試練がいくつか用意してある。そこの男にそれが突破できるかな?」


 そう言うとおじいさんはフフフと不敵に笑うのだった。


 こうなったら、俺に拒否権はない。

 それに遺跡の封印は必ずやらなければならないことだった。


 だから、俺はおじいさんにこう言うのだった。


「わかりました。おじいさんのその試練、必ずや成し遂げて見せましょう。そして、成し遂げた暁には、ヴィクトリアとのことを認めてもらいますよ」


 最後に俺がおじいさんにそう誓うと会議は終了だ。


 その後は貸会議室を出る。

 そして、ヴィクトリアと一緒にこっそりと建物の裏に回ると、ヴィクトリアを抱きしめながらこう誓い合うのだった。


「おじいさんにも頑張ると誓ったことだし、これから頑張ろうな!」

「はい!」


 そうやって誓い合った後、最後にキスをしてから、俺たちはおじいさんに誓った通りに試練をこなすべく歩き始めるのだった。


 さて、人魚の国ではどんな試練、そしてどんな冒険が待っているのだろうか。


 ワクワクする一方で、ヴィクトリアとのことを考えると一生懸命やらなきゃな、とちょっと緊張する俺なのであった。

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