閑話休題67~その頃の妹 強制ボランティア~

 レイラです。

 今、私はノースフォートレスのとある孤児院に仲間たちとボランティアに来ています。


 何でボランティアなんかしているのかって?

 それは兄嫁の命令だからです。


 兄貴たちがまた旅に出ると聞いた私は、これで強制家事労働から解放されてしばらく骨休めができると安心していました。

 そうやってのんびりとしていた私の所へ兄嫁がやって来て、無情にもこう言い放ちました。


「あなたたち、私たちがいないからと言って、花嫁修業を怠ってはいけませんよ。私が伝手を頼って孤児院のシスター様に、私たちがいない間、あなたたちが孤児院の仕事を手伝いながら料理や家事のスキルを高められるようにお願いしておきましたので、明日からは毎日孤児院に通って、孤児院のお手伝いをしてきなさい」


 何という事でしょうか!どうやら私たちは明日から孤児院でボランティアをしなくてはならないようです。

 もちろん私は嫌でしたが、兄嫁に心酔しきっている仲間たちは大賛成の様で。


「「「頑張ります」」」


 と、即座に返事してしまいました。

 こうなると私も断るわけにはいかず、「頑張ります」と、弱々しい声で返事するしかないのでした。


★★★


 孤児院でのボランティアは早朝から始まる。

 日が昇った後、一時間くらいで身支度をして家を出ると、孤児院へ向かう。


「「「「おはようございます」」」」

「あら、おはようございます。今日もよろしくね」


 孤児院のシスター様に挨拶するなり食事の準備の開始だ。

 みんなで協力して大鍋でスープを作ったり、豆を煮たり、パンを焼いたりして食事の準備をする。


「うん、いい匂い。……うん、味もバッチリね。今日もいい出来ね」


 味見をしたシスター様にそうやってオーケーをもらうと食事の準備は終了だ。

 次は玄関周りの掃除の時間だ。


「お姉ちゃんたち、今日もお掃除頑張ろうね」

「うん、頑張ろうね」


 ベッドから起きてきた子供たちと一緒に掃除をする。

 ……掃除をするのだが、子供って大人の言うことを中々聞いてくれない。


「うわー、ぶーん」

「どかーん」


 そうやってすぐに脱線して、走り回ったり箒を振り回したりして、遊び始める。


「こら!まじめに掃除しないと、シスター様に怒られるよ」


 そうやって何度も注意してようやく。


「わかったよ」


 と、掃除に復帰してくれるようなことが日常茶飯事だ。

 本当、いくら子供とはいえ掃除の時くらいは真面目にしてほしいと思う。


 掃除の後は子供たちと一緒に食事をとる。


「ほら、食事をするときは遊んでないでちゃんと真っすぐ前を見てご飯を食べなさい!」


 食事中でさえ遊びに走ろうとする子供たちの面倒を見ながら食事をとるのだ。

 もちろん子どたちが素直に言うことを聞いてくれるはずがなく、世話する私たちは食事中振り回されっぱなしなのだ。


 これを毎日やられるのだから私としてはたまったものではないのだが、兄嫁に言わせると。


「あなたたちも将来自分の子供を育てることになるのですから、今の内からちゃんと慣れときなさい」


 という事らしいので、大変でしんどいだけの作業だけど、私には頑張る以外の選択肢はないのだった。


 もっとも、これを大変で嫌だと思っているのは私くらいのもので、他の三人は。


「「「将来のためにも頑張らねば」」」


 と、兄嫁の言葉を真に受けて一生懸命やっているけどね。


 こんな感じで朝一は子供たちの世話で時間が潰れて行くのだった。


★★★


「「「「また来ます」」」」


 その後は、一旦孤児院を離れ冒険者ギルドへ行き仕事を請け、それをこなす。

 そして、夕方頃にまた孤児院へ戻ってくるとまた子供の世話を再開する。


 夕方もまた食事の準備から始まる。

 夕飯は朝食と違って子供たちと一緒に作る。


「ほら、スープに入れるお野菜を切る時には大きさを揃えないとダメよ。そうしないと、熱の伝わり方がバラバラになって、おいしくなくなるからね」

「は~い」


 そんな風に、兄嫁から教わったことを子供たちにも教えながら、一緒に調理するのだ。

 そして、調理が終わるとまた子供たちと一緒にご飯を食べる。


「わーい、どーん」

「ぶーん、ぶーん」

「こら、ご飯食べる時はそっちに集中しなさいって言っているでしょ!」


 相変わらず遊びまくる子供たちの世話に悪戦苦闘しながら、一緒にご飯を食べるのだ。


 え?朝夕二回も孤児院で食事をさせてもらって、孤児院の迷惑にならないのかって?

 その点は問題ないと思う。


「うちの義妹たちがお世話になりますので」


 と、旅立つ前に兄嫁が多額の寄進や食料の寄付をして行ったからだ。


 そもそもここのシスター様はと兄嫁たちは昔からの知り合いらしい。

 ここのシスター様が別の町に赴任していた時からの知り合いで、聞く話によるとシスター様は以前はヒッグスタウンに居たそうだ、今でもお付き合いがあるということだ。


 だから兄嫁たちも兄貴もたまにここでボランティア活動をしたり、毎月多額の寄付もしているらしかった。

 そういう関係性があるから、ここの子たちも私たちを快く受け入れてくれているのだった。


 それで、食事を終えた後は子供たちと食器の後片付けをして、その後は子供たちと遊んだ。


「昔々、ある国に素敵な王子様とお姫様の夫婦がいました」


 今日の遊びは本の読み聞かせで、そうやって絵本を読んでやっている。

 普段は勝手に遊び回って言うことを聞こうとしない子供たちも、この時ばかりはとても大人しく、真剣に私たちが読む本の内容を真剣に聞いてくれるのだった。


 そうやって、食後の遊びの時間が終わったら私たちの今日の花嫁修業も終了だ。


「お姉ちゃんたち、また明日ね」

「またね」


 そうやって挨拶をかわして家に帰る。

 そして家に帰った後は、一杯飲んだりお菓子を食べながら女子トークを楽しんだ後、明日に備えてゆっくりと休むのだった。


★★★


 こんな感じで最近私たちは一日を過ごして言うわけだが、私的には正直きつい日々だった。


 仲間たちは将来を見越して、「将来、素敵な旦那様と愛する子供たちと楽しい家庭を築くため、頑張るぞ!」と張り切っているが、私はこんな面倒くさいことをするのはご免だった。


 いや、私だって素敵な旦那様とかわいい子供たちと楽しい家庭を築くのが嫌だという訳じゃないよ。


 ただ子供や旦那の世話はメイドでも雇ってそっちに大半を押し付けて、自分はお手軽に楽しい家庭を手に入れたいと思っているだけだ。


 しかし、そんなことは兄嫁や兄貴はもちろん、両親や将来の旦那様でさえ許してくれないと思う。

 けれども、なるべく楽には生きたい。そのためにはどうすべきか。


 私は色々と手段を模索するのだった。


ーーーーーーー


 これにて第18章終了です。


 ここまで読んでいただいて、気にっていただけた方、続きが気になる方は、フォロー、レビュー(★)、応援コメント(♥)など入れていただくと、作者のモチベーションが上がるので、よろしくお願いします。


それでは、これからも頑張って執筆してまいりますので、応援よろしくお願いします。

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