今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第444話~嫁たちの御両親に旅行をプレゼントする 後編~
第444話~嫁たちの御両親に旅行をプレゼントする 後編~
「『空間操作』」
月での素敵な一時を過ごした後、俺の魔法で移動した先は。
「ほほう。ここが噂に聞く獣人の国の『闘牛場』か。中々人が多くて、活気がるじゃないか」
リネットのお父さんの言うように獣人の国の闘牛場だった。
ここは文字通り牡牛同士の白熱したバトルが見られる熱い場所だ。
「そういえば、アタシのお父さんたちって闘技場見物が好きでよく見に行くんだよね。それで、獣人の国にいる時に闘牛場なるものの話を聞いたんでお父さんたちにその話をしたら、一度行ってみたいとか言っていたよ」
とのリネットの提案でやって来たのだった。
なお、ここの牡牛は闘牛用に特別に育てられた牛たちで、とても気が荒く、牡牛が目の前にいれば速攻で向かって行くような連中で、どれも強いらしい。
ということで、実は俺も試合を楽しみにしている。
さて、どういう試合を見せてくれるのだろうか?期待したいところである。
★★★
闘牛場の中に入り、事前に予約していたVIPシートに座ると、試合観戦の開始である。
「さて、只今より本日の第三試合、『ヘラクレス号』と『ギルガメッシュ号』の試合の開始です」
俺たちが席に着くと同時に試合が始まる。
「始め!」
審判の開始の合図とともに、牛と牛の角がドゴオンという激しい音を立ててぶつかり合う。
「わーー」
その様子に観客が大興奮して、闘牛場内に大歓声が巻き起こる。
もちろん、それを見て俺たちも黙っているわけがなく、大声で応援を送る。
「「キャー、ヘラクレスちゃん、頑張れ」」
普段は絶対叫んだりしないエリカがお母さんと一緒になって大声でヘラクレスとかいう牛を応援しているし、普段は冷静沈着なエリカのお父さんも。
「ギルガメッシュ!頑張れ~」
と、顔を真っ赤にして応援している。
「「「ギルガメッシュ、そこだ~!押せ~!」」」
リネット一家も一丸となって大声でギルガメッシュを応援しているし、ネイア一家に至っては。
「「「行け!行け!行け!ヘラクレス!」」」
と、大声で叫びながら、さらに大きな音で手を叩いてヘラクレスの方を応援している。
この世界の人間って、基本闘技場とかで試合を観戦するのが好きだ。
それはリネットのお父さんに限った話ではなく、エリカのお父さんたちやネイアの叔母さんたちも同様だったらしく、こうして闘牛場で試合を観戦すると、血沸き肉躍る気分になるのだと思う。
実際、俺を頻繁に闘技場デートに誘うリネット以外の嫁たちも闘技場等での試合が嫌いではなく、普段なら闘技場に連れて行っても声をあげることもないのに、今回に限っては雰囲気にのまれてイケイケドンドンという感じだしね。
本当、場の雰囲気というものは人を普段と違う生き物にするものだと思う。
まあ、かくいう俺も。
「ヘラクレス、そこだ!とどめをさせ!」
と、皆に負けず劣らず熱狂しているしね。
こうやって、俺たちは闘牛を楽しむのであった。
★★★
結局、俺たちは最後まで闘牛の試合を見てしまった。
その間興奮しっぱなしで、ずっと叫び続けだったのですっかり疲れたが。
「楽しかった」
と、みんな満足そうだったので良かったと思う。
さて、闘牛見学ツアーが終わったので、旅行最後のイベント、劇付きのディナーショーへ行こうと思う。
「『空間操作』」
魔法でヴァレンシュタイン王国の王都へ飛ぶと、一直線に例のホテルへ行き、受付を済ませレストランへ行く。
レストランに着くと激が始まるまでの間に食事をする。
ワインを飲み、魚や肉を食べ、大分お腹が膨れて来たところでちょうど劇が始まる。
これは偶然ではなく、ホテル側が狙ってやっているものだ。
ホテル側もお客さんの食の進み具合を見て、客が一番満足してくれそうな時間にやっているのだった。
それで、肝心の劇だが、今回は喜劇の様だった。
自分は勇者だと勘違いしたどこかの国の王子様が冒険活劇に出るという話だった。
最初ヴィクトリアと一緒に来た時は恋愛劇という名の喜劇、次にヴィクトリアの両親を連れて来た時には悲劇が上演されていて、どちらも面白かったので今回も期待していたのだが、やはり期待に違わず面白かった。
「この鋼の剣は金貨二枚になります」
「何?それは安いな」
と、世間知らずの王子様が安物の鋼の剣を高く売りつけられたり。
魔物が巣食うという館に乗り込んでは。
「うむ、魔物がおらぬな。どうやら私の力に恐れおののいて逃げ出したみたいだな。情けない魔物たちよ」
と、先に他の冒険者が乗り込んで魔物を退治しただけの話なのに、妙な勘違いを起こして、しかもそれを世間に言いふらして笑いものにされたりといった物凄く面白い内容だった。
これには嫁たちやそのご両親たちも大爆笑で。
「ははは、笑い過ぎてお腹が裂けそうです」
と、劇が始まってから終わるまでの間ずっと笑いっぱなしだった。
本当、ここの劇はシナリオと言い、役者の演技と言い質が高いと思った。
今度来るときはヴィクトリアや子供たちも含めて、家族全員で来たいな。そう思った。
★★★
劇が終わった後は、俺と嫁たちによるご両親たちへのプレゼント贈呈式が始まった。
プレゼントは前日までに俺と嫁たちで王都の宝飾店を巡って買った装飾品だ。
ブローチやペンダント、指輪など、それぞれに似合いそうな物を厳選して買った。
「「エリカにホルスト君、ありがとうね。大切にするわ」」
「「リネットとホルスト君、ありがとう。喜んで使わせてもらうよ」」
「「ホルスト君にネイア。こんな心のこもったプレゼントをありがとう。一生大事にするよ」」
と、ご両親たちは全員プレゼントを喜んでくれた。
嫁たちを大切に育ててくれたご両親たちに少しでも恩返しできて、とても良かったと思う。
さて、これで今回の旅行の行事は大体終わりだ。
後はここのホテルでゆっくりと休むとしよう。
★★★
今回の旅行では、嫁たちにはご両親たちとゆっくり過ごしてもらうことにした。
だからセミスィートの部屋を三つ取り、それぞれの部屋で嫁と両親たちにゆっくりと夜を過ごしてもらっている。
俺だけ一人で寝るのは寂しい気もするが、まあ仕方がない。
それよりも嫁たちに親との思い出を作って欲しいので、そちらを優先することにする。
そんなわけで久しぶりに一人で寝たわけであるが、ベッドの中で俺はこう思った。
今回は皆の御両親に楽しい旅行をプレゼントすることができて本当に良かった、と。
そんなことを考えていると、いつの間にか眠ってしまい、よく朝起きると、嫁たちの御両親をそれぞれの家へと送り届け、今回の旅行は終了したのだった。
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