第443話~嫁たちの御両親に旅行をプレゼントする 前編~

 さて、ダンジョンの探索をしてお金を稼いで懐も豊かになり、時間に余裕もできたことだし、前々からやろうと思っていたエリカとリネットの両親、それにネイアの叔母さん夫婦への親孝行でもしようと思う。


 以前、ヴィクトリアの御両親を旅行に連れて行ったが、エリカたちの親は連れて行っていない。

 それでは片手落ちというものなので、今回まとめて連れて行くことにしたのだ。


 ちなみにエリカたちの希望としては。


「「「私たちとしては一度劇を見ながらのディナーショーを楽しんでみたいです」」」


 と、ヴィクトリアと一緒に行った劇を見られるディナーショーへ行ってみたいということだったのでそこのホテルに最終的には泊まることにする。


 問題はそこ以外にどこへ行くかということで、四人で相談に相談を重ねて、三人の御両親が気に入ってくれそうなと場所をチョイスしておいた。


 こんな感じで完璧な計画を立てた俺たちは、三人の両親に声をかける。

 すると。


「是非行きたい」


 と、返事が返ってきたので、いざ作戦決行と相成ったのであった。


★★★


 エリカたちの御両親を旅行に連れて行く約束の日、俺はエリカたちと朝からご両親の所を回った。


「お父様、お母様。それでは参りましょうか」

「ああ、行こうか」

「今日はどこへ連れて行ってくれるのかしら」

「お父さん、お母さん、行くよ」

「おお、行くか」

「ええ、楽しみにしているわ」

「叔母さん、叔父さん。行きましょうか」

「今日はよろしく頼むな」

「ホルストさん、今日はよろしくね」


 そうやって三か所ほど回り、それぞれの御両親を回収してから目的地へと向かう。


 ちなみに、エリカとリネットの御両親と、ネイアの叔母さん夫婦は初対面なので挨拶してもらった。


「よろしくお願いします」


 エリカとリネットの両親がそれなりに偉い人だと知って、ネイアの叔母さん夫婦がちょっと固くなっていたが、大したトラブルもなく挨拶も終わり、俺たちは目的地へと移動した。


★★★


 まず最初に行ったのはこの前のネイアとのデートでも行ったフソウ皇国のナニワの町の水族館だ。


「海のないエルフの国にはああいった施設はありませんので、是非叔母さんたちに見せてあげたいですね」


 とのネイアの提案でここへ来た。

 というか、海のある国でもナニワの町くらいしか水族館てないんだけどね。


 それはともかく、水族館のバカでかい水槽の中でで魚が自由に泳いでいるのを見たエリカたちの御両親は大喜びだった。

 ネイアの叔母さん夫婦はもちろんのこと、エリカやリネットの御両親も水族館は初めてらしく、水槽の中を泳ぐ色とりどりの魚の群れに感動しっぱなしである。


「旦那様、ここの水槽を泳ぐ魚はとても色がきれいで素敵ですね」

「ああ、僕もこんな色とりどりの魚を見るのは初めてだよ」

「あんたあ。魚って、こんなに大群で泳ぐんだね」

「そうだな。ワシも初めて知ったよ」

「こんないろいろな色の魚が世の中に入るんですね」

「まあ、エルフの森にいるのは茶色とか黒の川魚くらいだからな」


 こんな感じで六人とも目を泳がせながら魚が泳ぐ光景に見入っていた。

 どうやらとても満足してくれているようで、旅行を計画してくれた俺たちとしてはとてもうれしい。


 しかし、お父さん、お母さん方。驚くのはまだこれからですよ。


★★★


 水族館で魚が泳ぐ様子を堪能した後は、場所を変える。


「『空間操作』」


 そうやって、魔法で移動した先は。


「旦那様、やはり月はいつ来ても素敵な場所ですね」


 月だった。


「私の両親は色々な場所に旅行に行っておりますが、月にはまだ行ったことがないはずです。だから是非連れて行ってあげたいです」


 と、エリカが提案してきたのでこうしてやって来たのだった。


 まあ、エリカの言う通りだろう。

 エリカの実家はお金持ちなので、エリカ自身、色々な所へ連れて行ってもらったみたいだが、月へ連れて行ってもらったことはないと思う。

 大体『月へ続く遺跡』の攻略者一号は俺たちで他に攻略者はいないのだから、まあ俺たちはダンジョン攻略前に一度魔法で月へ連れて行ってもらっているけど、俺たち以外に月に行った人間がいるわけがなかった。


 俺達としてはこの前行ったところではあれなのであるが、嫁さんたちの御両親なら絶対に喜んでくれると考えたのやって来たのだった。


 ということで、月に初めて連れて来てもらった六人はこれまた大喜びだ。


「旦那様、私たちのいた大地ってあんなに青かったのですね。この光景を見られて、私、とても心が震えました」

「レベッカ。僕もそう思うよ。この光景は僕が見てきた景色の中で間違いなく最高のものだ。こんな光景を見せてくれたホルスト君たちには感謝だね」

「そうですね、旦那様」


 エリカの両親はそう言いながら抱き合って二人だけの世界に入っているし。


「あんた、あれを見たかい?私たちのいた所ってあんなに青かったんだね。凄い光景過ぎて、言葉が出てこないわあ」

「そうだな。ワシも驚きが隠せないよ。それより、あの青って海の色だろ?ワシは景色の美しさもそうだが、実は海の方が大地より広いことに驚いている。人間って、実は狭い場所に住んでいるんだなと思った」


 リネットの両親もエリカの両親同様に感動して抱き合って惑星を見ている。

 普段無口なリネットのお父さんが妙におしゃべりになっているので、この素晴らしい光景が二人にかなりの感動を与えたことがうかがえる。


「あんた、きれいだね」

「ああ、生きているうちにこんな光景が拝めるとは思っていなかったよ」


 ネイアの叔母さん夫婦も、口数こそ少なかったが、目を輝かせながら俺たちの惑星のことを見ている。

 こちらも他の二組同様、この景色に感動しているようだった。


 こんな感じで三組とも月から見える景色に感動してくれたようで何よりだ。

 さて、それではこの景色を見ながら食事をしようと思う。


★★★


「皆さん、食事の用意ができましたよ」


 エリカたち三人が食事の準備を終えたので、食事を開始する。

 俺が魔法で整地した月の大地の上にイスとテーブルを置き、その上に食事を並べる。


 食事は今さっき俺が魔法を使って受け取って来たホテルのオードブルに、嫁たちの手作り料理が一品ずつ。

 それに。


「エリカ、この丸いものは何?」

「お母様、それは『月見団子』ですよ。ヴィクトリアさんが、『月に行くのなら、これを食べるべきですよ』と勧めてくるので作ってきました」


 ヴィクトリアのお勧めで作った月見団子だった。

 どうも月見をする時に食べる伝統料理らしい。


 というか、月に行くのに月見ってどういう事よと思ったが、味見したらおいしかったので良しとする。


 さて、そんな感じで食事が始まったのだが、最高の気分でとてもおいしく食べることができた。


 当然だ。こんな最高の景色を眺めながら食べる食事なのだからおいしいに決まっている。

 それに用意した料理も出来立てのホテルのオードブルの他に、料理の腕に優れた俺の嫁たちの手作り料理だ。


 これでおいしくないなんて抜かすやつがいたら、俺がぶん殴ってやる!


 そう思えるくらいのシチュエーションと料理なのだ。


 ということで、俺たちは月で最高の一時を過ごすことができ、嫁の御両親たちに素敵な旅行をプレゼントでき、十分満足したのだった。


★★★


 さて、月旅行を堪能した後は地上へ戻ることにする。


「『空間操作』」


 そうやって、俺の魔法で一瞬で移動した先は……。

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