第442話~詐欺業者成敗!~

 ダンジョンから帰ってしばらくした頃。


「ホルスト君。例のホルスト君の妹さんを騙したとかいう詐欺業者の居場所が判明したよ」


 と、王都のワイトさんから連絡が来た。


 俺はやっと見つかったかと思った。

 実はあの詐欺師の摘発、軍の偉い人であるワイトさんにも協力を頼んでおいたのだ。


「今から捕縛の部隊を送るんだけど、ホルスト君もついてくるかい?」


 と、ワイトさんが誘ってくれたので、もちろん行くことにする。


「リネット、行くぞ」

「任せて!」


 こうして俺は武装したリネットと二人、詐欺業者の摘発のため、王都のワイトさんの所へと向かったのであった。


★★★


 詐欺業者は王都近郊の別荘地に潜伏していた。

 俺とリネットはワイトさんが率いた部隊とともに、詐欺業者がいると思われる別荘に行き、そこを取り囲むと、一斉に突撃する。


「何だ?」


 官憲に急に踏み込まれた詐欺業者のやつはそうやって慌てだし、部下を捨てて逃げ出そうとしたが。


「逃がすわけがないじゃない!」


 と、詐欺業者が逃げるのを見て、猟犬よりも速く追いかけて行ったリネットの手によってあっさりと捕まってしまった。

 こうして詐欺業者を捕まえた後は楽しいお仕置きタイムのお時間だ。


 さあ、詐欺業者よ!年貢の納め時だ!覚悟するがいい!


★★★


 詐欺業者を捕まえた後は尋問の開始だ。


 この尋問の様子は俺たちも見学させてもらった。

 犯人を一面だけガラス張りになっている特殊な尋問室で取り調べてもらったのだ。

 このガラスは特殊なもので、取調室の中から見るとただのガラスにしか見えないが、外から見ると取調室の中の様子が筒抜けという代物だった。


 それで、取調室の外から中の様子を見学させてもらったわけだが、この詐欺業者、中々口を割らなかった。


「知らない」


 の一点張りであった。


 このままでは埒が明かないと思った俺はワイトさんに頼んだ。


「ここは是非俺に尋問させてください」


 と。


★★★


「ホルスト君が尋問したいの?構わないよ」


 そうワイトさんの許可をもらえた俺は詐欺業者の尋問を開始する。


 そんなことをしてもいいのかと思うかもしれないが、どうしても口を割らない犯人に対して、拷問係や魔法使いが無理矢理口を割らせるということは、この世界では普通に行われていることなので、部外者の俺が尋問を行うことくらいのことで誰も文句などは言わなかった。


 ということで、一旦詐欺業者を取調室から出し、俺が中に入る。


 取調室に入った俺は、まず詐欺業者にすさまじい殺気をぶつけてやった。

 俺に殺気をぶつけられた詐欺業者は額から脂汗を出し、顔を真っ青にする。


 詐欺業者と言っても所詮は一般人。

 ここまで生命の危機を感じるような事態に陥ったことなどないのだと思う。


 そんな状態の詐欺業者に対して俺は尋問を開始する。

 とは言っても多くは聞かない。


「さあ、洗いざらい全部吐いてしまえ!」


 それだけである。


 その上で詐欺業者に放つ殺気の量をさらに増やす。

 すると、詐欺業者から流れる汗の量が増え、心臓の鼓動が速くなった。

 さらに気分まで悪くなったのか、「おえ、おえ」と、激しくゲップまでし始めた。


 俺はここで放つ殺気の量を減らしてやる。

 殺気の量を減らすと、詐欺業者の顔色が多少良くなり、流れる汗の量も減った。


 俺はここで優しく話しかけてやる。


「このまま楽になりたかったら大人しく話せ。どうせお前が黙っていても、お前に見捨てられた部下たちがあること無い事全部喋ってしまうと思うぞ。そうしたら、黙っていたお前の方がより重い罪を擦り付けられることになる。そうならないためにも大人しく話せ」


 俺の殺気に当てられて大分心が弱っていたのだろう。

 そうやって、優しく言われた詐欺業者は、「はい」と、短く返事をすると、ポツリポツリと事情を話し始めるのだった。


★★★


 翌日。

 俺とリネットはノースフォートレスの町の警備隊を引き連れて悪徳高利貸し業者の事務所へと突撃した。

 昨日、詐欺業者が洗いざらい吐いたことと、潜伏した別荘の捜索をしたことで証拠の品が見つかったからだ。


 詐欺業者の自白はともかく、証拠の品何て残っていたのかって?


 それが残っているんだよな。

 こういう悪徳業者同士って表面上は協力していても、真の意味での信頼関係というものは無いから、片方が裏切った時のために報復に使うための証拠を残しておくものなのさ。


 ということで、遠慮なく悪徳高利貸し業者を叩き潰せるという訳だ。


「お前らには詐欺業者と結託して詐欺を行っていた嫌疑がかかっている。大人しくお縄に着け!」


 俺が事務所のドアを蹴破り、先陣を切って高利貸しの事務所へ乗り込んでいくと。


「何者だ!」


 と、高利貸しの用心棒らしき連中が出てきたので。


「お前ら何かお呼びじゃねえよ!」


 と一瞬で蹴散らしてやると同時に、警備隊の人たちが乗り込んでいく。


「わー」

「ぎゃー」


 と、警備隊と高利貸したちとの間で小競り合いが発生するも、そこは多勢に無勢。

 高利貸したちは次々にお縄になって行く。


 そんな中で、俺は派手な恰好をした高利貸しのボスらしき奴が裏口から逃げ出すのを見つけた。


「逃がすかよ!」


 もちろん俺がボスを逃がすなんてへまをやるわけがなく、「助けてくれ~」と涙ながらに命乞いするボスを難なく捕まえてしまった。


 こうして、俺たちは詐欺業者だけでなく高利貸しも捕まえることに成功したのだった。


★★★


 結論から言うと、その後の裁判で、詐欺業者と高利貸しは鉱山での強制奴隷の刑となった。

 前にデリックたちが受けたのと同じ刑罰である。

 大勢の人を騙し、大金を巻き上げたのだから当然の報いである。


 ということで、向こう十年ほどは連中は娑婆には出てこられないと思う。


 それで、被害者への弁償だが、全部とはいかないがある程度戻ってきたようだった。


 俺の所にも金貨二十枚ほど戻って来た。

 まあ、結局金貨十枚ほど損をしたわけだが、俺は十分満足した。

 詐欺業者共が後悔して泣きわめく様子を見ることができたし、ついでに今回金を立て替えてやったことで妹のやつが俺に二度と迷惑をかけてこないようにくさびを打ち込むこともできたからだ。


 と、こんな感じで、俺は詐欺業者共にお仕置きを与えることに成功したのだった。

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