閑話休題66~その頃の妹 私ってばどうしてお金に縁が無いのかしら~

 レイラです。


 やったあ!大金ゲットだぜ!


 ということで、今回兄貴たちのダンジョン攻略について行った私は金貨百枚という大金を手に入れることができ、大喜びです。

 これで欲しかったあれやこれやが買える。

 そう楽しい想像をしながらニヤニヤしている私の肩を、兄嫁のエリカがつかみます。


 そして、無慈悲にこう言い放ちます。


「さて、レイラさん。大金を手に入れたことだし、早速貯金しに行きますよ」

「貯金て。でも、もう遅いからギルドの銀行ってしまっているんじゃ」

「大丈夫です。私がダンパさんに頼んで特別に営業してもらっていますから。ということで、すぐに貯金に行きますよ。それで、その後に打ち上げの飲み会をしますよ」

「そんなああ~」


 こうして、私のお金は兄嫁の手により、またもや強制貯金させられたのでした。


★★★


「ああ、あれだけ頑張って、どうして私の手元にはこれだけしかお金が残らないのよ~」


 ダンジョン攻略の打ち上げから帰った後、私は自分の部屋のベッドの中でしくしくと涙を流した。


 今、私の目の前には銀貨が十枚だけある。

 残りのお金は没収されて、すべて銀行の口座行きだ。


 しかも。


「あなたにお金を持たせておくと無駄遣いどころか、無駄に溶かしていくことがこの前の件ではっきりとしましたからね。これ以後は、生活費以上のお金は私の許可なしでは引き出せないようにします」


 と、兄嫁に言い渡されてしまった。

 おまけに兄貴にも。


「このお金は結婚の際に持参金ということで持たせてやるが、通帳はお前の旦那となるやつに管理させて二人一緒じゃないと金を引き出せないようにするからな」


 と、言われてしまった。


 ああ、私のお金なのに将来の旦那と一緒でないと使えないなんて酷すぎる!

 仲間の子たちは自由に使えるというのに!


 もっとも、フレデリカたちは堅実な性格なので全額貯金していたけど。


「まあ、あなたたちは賢い子ですね。ちゃんと無駄遣いしないように余計なお金を持たないようにできるとか。それに比べて……」


 と、兄嫁は三人を褒めつつも、きっちりと私のことを睨んできたのあった。

 怒った兄嫁はとても怖いので、私はただ震えるだけだった。


 そうやってただただ怒られっぱなしの私だったが、一応復讐?のようなものをしておいた。

 打ち上げの時に高い酒と料理を頼んでやったのだ。

 普段なら絶対に頼まないような高級ワインと料理を頼んでバカ食いしてやった。


 会計の時に、兄貴のやつ、うん?という顔をしていたから兄貴的にも高いと思ったに違いない。


 ははは、兄貴よ。ざまあみろ!

 お前の財布にダメージを与えてやったぞ。

 これが私の実力だ!思い知ったか!


 ……って、虚しい。こんなことで復讐したからなんだというのだろうか。

 私の手元にお金が無い事に変わりはないのに。


 それに兄貴はお金持ちだ。

 少々お金を使ったくらいではびくともしないのだ。

 そんな相手にちょっとくらいお金を使わせたくらいでイキるとか、私って本当にバカだ。


★★★


 それにしても、私の将来ってどうなるのだろうか。

 このままだと兄貴の言う通りに結婚ということになる。


 別に結婚自体は構わないのだけれど、それだと絶対兄嫁に何かをしでかさないかと、一生監視されそうなのがネックだ。

 それは避けたいが、どうしようもない。

 兄貴も両親も私の結婚には賛成で、逃げ道が無いからだ。


 このままでは私には自由のない人生しか待っていない。

 そんな人生、私は嫌だった。


 こうなったら何とか兄貴や兄嫁を言いくるめて、ある程度お金を自由に使えるようにしてもらわなければ……。

 もしくは兄貴たちに見つからないようにうまく稼ぐか……。

 私の願いを叶えるにはそのどちらかしか方法が無いだろう。

 そのためにはどうすればいいのだろうか?


 私は無い頭を使って、手段を考えるのだった。

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