第441話~ダンジョン攻略後のお楽しみ~

 ボスのミスリルゴーレムを倒して遺跡の外へ出ると、そこはもう月だった。

 月の大地から空を見上げると、俺たちのいた青い惑星が浮かんでいた。


「うわ!何、あそこの青いのが私たちが住んでいる所なの?滅茶苦茶きれい!」

「青いのじゃなくて、ヴィクトリアさんによると、惑星って言うらしいよ。黒い中で青い惑星って滅茶苦茶映えるね!」

「こうやって、月から自分たちのいた場所を見ることができるなんて……最高だよね!」

「本当、素敵!こういう所は素敵な旦那様と来たいな!それで二人っきりで……キャー、想像するだけで恥ずかしい!」


 特に月に来るのが初めての妹とその仲間の子たちが大はしゃぎだ。


 四人の気持ちはよくわかる。

 こんなきれいな風景を見て感動しない人間などいないからだ。

 誰しもこんな風景を見たら妹たちのように大はしゃぎすると思う。


 前にこの景色を見たことのあるエリカやホルスターたちでさえ。


「「「この景色何度見ても最高ですね」」」

「ホルスターちゃん。銀、ホルスターちゃんとまたこの光景を見られて幸せだよ」

「僕もだよ。銀姉ちゃん」


 興奮しっぱなしだし。

 俺の嫁の中でこの光景を初めて見るネイアに至っては。


「ホルストさん、とってもきれいですね。こんな光景が見られるなんて信じられないです。今度来るときはおばさんたちも連れてきたいですね」


 そう言いながら、顔をうっとりさせ、ここぞとばかりに俺にしがみついて甘えてきたからな。


 というか、叔母さんたちも連れて来たいか。

 そう言われればこの景色を俺たちだけで独占するのはもったいない気もする。

 そうだな。そのうち嫁たちの家族も連れて来て、皆で一緒にこの景色を見物するのも悪くないかもしれない。

 よし!そのうち皆を連れてまたここへ来よう。


 俺はそう思うのだった。


★★★


 さて、その後は三時間ほどお茶を飲みながらこの素晴らしい景色を楽しむと、ノースフォートレスの町へと戻る。

 そして、そのまま冒険者ギルドの隣の商業ギルドへ駈け込む。


「こんにちは」

「これは、ホルスト様。ようこそお越しくださいました。本日はどういったご用件でしょうか」

「実は買い取りをお願いしたいんだけど」

「はい、畏まりました。それで何を買い取りましょうか?」

「実を言うと、買い取ってほしいものはたくさんあるんだ。ここではそれを全部出せないから、倉庫へ移動してもいいかな」

「はい、どうぞ」


 そんなやり取りの後、俺たちは倉庫へと移動する。


「ヴィクトリア、頼む」

「ラジャーです」


 そして、ヴィクトリアに頼んで収穫物を倉庫に並べる。

 魔道具に武器、骨董品に鉱石、魔物の素材と数百点もの収穫物がずらりと並べられる。

 それを見て職員さんが驚いている。


「こんなにたくさんの品をお売りいただけるのですか?」

「ああ、とあるダンジョンへ潜ってきた成果なんだ。全部売るよ」

「畏まりました。ただこれだけの品を買い取るとなると、私の一存では出来かねますので支配人を呼んでもよろしいですか?」

「ああ、いいよ」

「では、すぐに呼んできますのでお待ちください」


 そう言って職員さんは一旦この場から離れるのだった。


★★★


 五分後、職員さんは商業ギルドの支配人のマットさんと冒険者ギルドのギルドマスターのダンパさんを連れて戻って来た。


「ホルスト殿、またたくさんの品物を持ち込んでくれたみたいだね」

「ええ、エルフの国のダンジョンへ潜って来たので、その収穫物を持ってきました」

「そうなんだ。それは大変だったね。それで、ここに並んでいるのが買い取ってほしい商品かい?」

「はい、買い取ってもらえますか?」

「もちろんだよ。ただし、数が多いので少し査定に時間がかかるけど大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です。お願いします」


 そうやってダンパさんたちとの間で話がまとまり査定が始まる。

 査定は商業ギルドと冒険者ギルドの職員さん、合わせて十五人で行われた。

 結構な人数で査定するわけだが、品数を考えると、この位の人数は必要だと思う。


 ただこれだけの人数がいても査定にはかなりの時間がかかり、結局査定が終わったのは深夜になってからだった。


★★★


 査定の結果を述べると、合計で金貨千枚ちょっとになった。

 これを参加人数で割り、妹たちには一人金貨百枚を渡してやった。


 四人のうち妹だけは何食わぬ顔で受け取っていたが、他の三人は。


「「「私たち、ほとんどホルストさんたちについて行っただけなのに、こんな大金、受け取れません」」」


 と、報酬の受け取りを拒否しようとした。


 本当遠慮深い子たちだ。

 まあ、いきなり金貨百枚という大金をもらえるとなったらビビるのもわからないでもないが、お前たちは十分に役に立ってくれたのだから遠慮することはないと思うぞ。


 そんな三人にエリカが声をかけてやる。


「まあ、慎み深い子たちですね。でも、遠慮する必要などないのですよ。あなたたちは頑張ったのですから。まあ、いきなりこんな大金を見たら不安になるのもわかりますが、あなたたちはギルドに口座を持っているのですから、そこに預けとけば安心ですよ。それに、お嫁に行ったらいくらでもお金はかかるのですから、遠慮せずに受け取って、将来生まれて来るであろう子供のために使ってやりなさい」

「「「そこまで言っていただけるのですか。わかりました。ありがたくいただきます」」」


 と、エリカに説得された三人は何とかお金を受け取ってくれたのだった。


 さて、こんな感じで今回のダンジョン探索は終了した。

 その後はギルドの居酒屋で祝杯をあげ、日付が変わった頃、お開きとなり。


「またな」

「はい、今回はありがとうございました」


 と、最後に沿挨拶をかわして解散となったのだった。

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