第439話~月へと続く遺跡 その6 四階・都市エリア編 後編~

 白ネコのワルツの試練を突破した俺たちは扉をくぐり、四階のエリアに入って行った。


「今度は都市エリアですね」


 ネイアの言う通り四階は都市エリアだった。

 都市と言っても人が住んでいるわけではなく廃墟だけどね。


 なぜわかるかって?


 結構建物はボロボロだし、人の気配も全くないので廃墟なのは一目瞭然だった。


 ただこう言う廃墟エリアにはお宝が眠っている可能性が高い。

 これは冒険者にとっては一般常識ともいえる知識だ。


「うわーい。廃墟だ!お宝だ!」


 と、妹のやつなんか張り切っているしね。

 ということで、早速お宝探しと行こうと思う。


★★★


「『世界の知識』」


 俺はすぐさまこの階のマップを魔法で作成した。

 これにはこの階の正確な地図が欲しいのと同時に、三階の時みたいにあわよくばお宝の場所が分からないかな、と思って作成したのだった。


「ダメか。やはりそこまでは甘くなかったか」


 ただ現実はそこまで甘くなく、マップにお宝の情報はなかった。

 これはおばあさんからの、この階の宝が欲しいんだったら自分で探しなさいというメッセージだと思う。


 まあ、いい。

 マップも手に入れたことだし、めぼしい建物から探して行こうと思う。


★★★


 マップを吟味した結果、魔道研究所、武器倉庫、迎賓館の三か所を狙うことにした。

 理由は商業ギルドでダンジョンで手に入れた商品を売る場合、魔道具や武器、骨董品が高く売れるからである。

 先に述べた三か所なら、これらの品を効率的に入手できそうだからこの三か所を選んだのだ。


 それに迎賓館なら休むスペースを簡単に確保できる。そう思ったのも理由の一つだ。


 ということで、まずは魔道研究所へ行く。

 魔道研究所は入り口から歩いて三十分くらいの所にあった。


「結構大きな建物ですね。見上げていると首が痛くなりそうです」


 ヴィクトリアがそう言うくらいには魔道研究所は大きかった。

 俺的には最初手分けして建物を探そうと思っていたのだが、この大きさの建物でバラバラに行動すると下手をするとはぐれて行方不明者が出そうな感じだったので、一塊で行動することにした。


 俺たちが一団となってお宝を捜索し始めてすぐ。


「旦那様。私の魔法に反応がありました。隠し部屋ですね」


 エリカがとある場所で隠し部屋を発見した。


「リネット」

「おう!」


 俺が指示を出すとリネットがすぐに壁を破壊して、隠し部屋に入って行く。


「うん、中々の収穫物だね」


 一番に部屋の中に入ったリネットがそう言うくらいには隠し部屋には色々なものが眠っていた。


「ここには魔法薬が多いみたいだな。これは売れば結構なお金になりそうだ」


 特にここには魔法薬が多く、高く売れそうな感じだった。

 それと。


「魔導書も結構ありますね。これは私がいただきますね」


 魔導書も結構あり、エリカはこれを自分の物にするつもりのようだ。

 一応この階に来る前に、欲しい物があったら自分の物にしても良いという風に決めており、エリカは魔導書があったら欲しいと言っていたので、魔導書はエリカの物になる。


 それで残りの魔法薬や魔道具なんかはヴィクトリアが全部回収して、持って帰って売却することになった。


 こんな感じでこの部屋の探索は終了したので次に行く。


「ホルストさん。土の精霊から報告です。ここの真下に地下室があるようです」


 研究所内の探索を再開してすぐに、ヴィクトリアがまた隠し部屋を発見する。

 今度は地下室のようだ。


「うりゃあああ」


 またリネットが咆哮をあげながら床をぶち抜く。


「旦那様、今度もたくさんのお宝ですよ。しかも、今度は魔道具中心みたいですよ」


 エリカの言うように地下室にも大量のお宝があった。

 今度は先ほどと異なり魔道具中心のお宝だった。


「ヴィクトリア」

「ラジャーです」


 もちろん、今度も全部いただく。


 そして、その後もこんな感じで研究所の探索は続き、他にも何か所か隠し部屋を見つけることができ、俺たちは大量のお宝をゲットしたのだった。


★★★


 魔道研究所を出た後は武器倉庫へと向かった。

 武器倉庫は魔道研究所から一時間ほどの場所にあった。


「武器倉庫という割には小さいな」


 武器倉庫は思ったより小さかった。魔道研究所の半分と言ったところだった。

 まあ、大きさは問題ないかな。

 要は良い武器が眠っていればそれでいいわけだし。


 ということで、良い武器を求めて早速捜索開始だ。


★★★


「う~ん、ここハズレだったかな」


 武器倉庫の捜索を開始してしばらくは残念な状況が続いた。

 武器倉庫は五つの区画に分かれていたのだが、そのうちの四つには何も無かったからだ。

 塵ぐらいしか落ちていなかったのだ。


 本当に『がっかり武器倉庫』と言ってもよいような状況だったのだが、最後の区画に来て期待が一気に膨らむ。

 というのも……。


「ここだけ厳重に閉鎖されていますね」


 ヴィクトリアの言う通り、この区画だけ立派な鎖で頑丈に封印されていた。

 これは期待できそうだ。

 そう思っとレはリネットに指示を出す。


「リネット、やれ!」

「任せて!」


 三度リネットに入り口を破壊してもらう。

 ドカンという音とともに鎖が壊れ、中へと道が開く。


「さあ、行くぞ!」


 そして、俺たちは中へと入って行く。


★★★


 結論から言うと、最後の区画には結構な量の武器や防具があった。

 とは言ってもオリハルコン製の最高級の武器などはさすがになかったが、アダマンタイト製やミスリル製の高級な武器防具がいくつかと、一般兵用の良質な鋼や鉄で作られた武器が多数あった。


 それを見て、俺は妹たちに声をかけてやる。


「お前ら、そろそろ武器を更新したらどうだ?好きなのを自分の物にしなよ」

「「「「いいんですか」」」」

「いいぞ」

「「「「ありがとうございます」」」」


 そんなわけで、まず妹たちが群がり、武器を探すのだった。

 その結果。


「私は、このアダマンタイトの剣と盾をもらいます」


 マーガレットはアダマンタイト製の剣と盾を自分の物にした。


「それでは私はアダマンタイトの槍と胸当てをもらうよ」


 ベラはアダマンタイト製の槍と胸当てを手に入れた。


「それじゃあ、私はミスリル製の弓とこの『膂力りょりょくの籠手こて』という力の上がる魔法がこもった籠手をもらうよ」


 フレデリカはミスリルの弓と魔法付の籠手を取った。


「私はこのアダマンタイトのナイフをもらっちゃお」


 最後に妹のやつはアダマンタイト製のナイフを手に取った。


★★★


 新しい装備を手に入れた妹たちは余程嬉しいのか。


「「「「何か、新しい装備って身に着けているだけで嬉しいものだよね」」」」


 と、大はしゃぎしていた。

 さて、これで妹たちの装備の更新は終了たので、残りは売り払うべく回収だ。


「ヴィクトリア」


「ラジャーです」


 残った武器は寸てヴィクトリアが回収して武器倉庫の探索は終了だ。

 ということで、次へ行こうと思う。


★★★


 最後に訪れたのは迎賓館だ。

 迎賓館と言うだけあって該当の建物は広くて立派な外見の建物だった。


 そして、目論見通りここにはお皿やコップ、壺や花瓶などの値打ちのありそうな調度品が充実していた。


「「「それでは、私たちはこれらの品物をいただきます」」」


 それらのうち気に入ったものをヴィクトリアとリネット、ネイアの三人が自分の物にして、残りはヴィクトリアが回収する。


「今回もお宝をたくさん回収できましたね」


 今回回収できた品を確認しながらヴィクトリアがにんまりしている。

 まあ、気持ちはわかる。俺も大金がゲットできそうでうれしいからな。


 さて、こんな感じで今回のお宝回収は終了したので、次の階のボス戦に備えて休憩するとしよう。


★★★


 今回の休息では迎賓館の施設を利用した。

 迎賓館のいくつかの部屋を掃除してきれいにした上で、そこに簡易ベッドを置き寝ることにする。


「今日は久しぶりにゆっくり寝られそうですね」


 ベッドを用意しながらヴィクトリアが嬉しそうに笑っていた。

 ヴィクトリアはのんびりと寝るのが好きだから、久しぶりにベッドで寝られてうれしいのだと思う。


 そんな感じで三十分ほどでベッドの用意をした後は、食事の時間だ。

 今日の食事はパンにスープに干し肉を炙ったものという簡単なメニューだった。

 別にもっと豪華に食べても良いのだが、明日にボス戦が控えているので食べ過ぎないようにこの位の食事にしておいた。


 食事の後はバスタブを出してお風呂に入ることにする。

 順番は銀とホルスターの子供組からだ。


「ホルスターちゃん、銀姉ちゃんが体を洗ってあげますからね」

「うん、お願い」


 そうやって二人で風呂に入って行った。

 多分、ホルスターのやつ、中で銀にしっかり体を洗われていると思う。

 子供組の次は嫁たちが入った。


「「「「お先に入ります~」」」」


 そう言いながら嫁たちは一緒に風呂に入って行った。

 外から中の様子は見えないが。


「ネイアちゃん、胸の形、いいじゃない。羨ましいよ」

「そういうリネットさんは胸が大きいですね、私的にはそっちの方が羨ましいです」

「エリカさん、お背中を流しますので、座ってください」

「お願いするわ」


 仲良くやっているような声が聞こえてきたので、楽しく入っているのだと思う。

 嫁たちの後は俺が入った。


「う~ん。やっぱり嫁たちが入った後の風呂っていい香りがするよな」


 と、ある種変態的なことをを言いながら、ゆっくりと湯船に浸かる。

 以前は、ヴィクトリアたちと結婚する前はこの行為を恥ずかしく思っていたものだが、今では慣れた。

 何せ夫婦生活をするたびにお互いの匂いや体温を感じる仲になったのだから、この位で一々畏まっていたら生活していけないからな。


 ということで、俺は嫁たちの残り香を楽しみながら俺も風呂でゆっくりしたのであった。


 さて、俺が風呂から出た後は一回湯船を張り替えて妹たちが風呂に入った。

 湯船を張り替えたのは七人も入ってお湯が大分汚れたからだ。

 それで、嫁たち同様、妹たちも楽しそうに風呂へ入っていた。


「ベラ、行くよ。えい!」

「ちょっと、マーガレット。水鉄砲でお湯飛ばすのは子供みたいだから、止めてよ!」

「う~ん。全身をお湯につけると、体中の疲れが抜けて行くようで気持ちいいね」

「本当。極楽、極楽」


 と、こちらもゆっくりと風呂に入ってくれたようで何よりである。

 こんな感じで風呂に入って疲れを癒した後はゆっくりと寝た。


「おやすみなさい」


 そうやってお休みの挨拶を交わした後、柔らかいベッドの上で寝るのは最高だった。


 さて、明日はいよいよボス戦。

 頑張って行こうと思う。

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