第437話~月へと続く遺跡 その6 三階・洞窟編 後編~

 さて、マップができたので先へ進むことになったわけだが、俺たちの敵は広大な洞窟だけではない。

 道中魔物も出た。


「ちっ。今度はグールとレギオンの混成軍か。ここはアンデッドが多いな」


 特にこの洞窟はアンデッドが多く、先ほどから何度も遭遇している。


 アンデッドと言えばヴィクトリアの出番だ。

 先ほどから出てきたアンデッドを全部倒してきている。


「さあ、またまたワタクシの出番ですね」


 そうやって今回も張り切ってアンデッド共に向かって行っている。


「まあ、ヴィクトリア、待て」


 と、ここで俺はヴィクトリアを止める。


「ホルストさん、何ですか?」

「アンデッドを倒すのはいいんだが、お前が全部倒していたら、マーガレットたちの訓練にならないだろ?」

「そうですね。それは気がつきませんでした。でも、今回はレギオンもいますよ?レギオンの相手は妹ちゃんたちには難しいのでは?」

「レギオンはお前が倒せ。残りのグールを妹たちにやらせる」

「ラジャーです」


 そうやってヴィクトリアとの間で話がまとまったところで次は妹たちの方を見る。


「そんなわけだ。グールはお前たちが倒せ。レイラは火属性の魔法で攻撃しろ。残りの三人はエリカに『聖属性付与』の魔法をかけてもらって対応しろ」

「了解よ。お兄ちゃん」

「「「わかりました」」」


 こんな感じで作戦が決まったので、行動開始だ。


★★★


「『聖属性付与』」


 まず俺の指示通りエリカが三人の武器に聖属性を付与してやって作戦開始だ。


「『火矢』」


 妹のやつが先制攻撃として隊列の先頭にいるグールに『火矢』の魔法を放つ。


「ギャアア」


 妹の魔法をもろに食らったグールは、断末魔の悲鳴を上げながらゴオオオオと勢いよく燃え上がり、天へと召されて行く。


「うおおお」

「たあああ」


 妹の魔法に続いてマーガレットとベラが咆哮を上げながら突撃して行く。

 ザシュッ、ドスッと、剣戟の音が鳴り響くと同時に数匹のグールが昇天して行く。

 二人とも腕を上げたな。

 その様子を見た俺はそんなことを思いながら、二人の腕が着実に上がっていたことを喜ぶのだった。


「二人とも援護するね。行け!」


 そんな二人を援護するためにフレデリカが聖属性を付与された矢を放つ。

 エリカの魔法が付与された矢の威力はすさまじく、バシュンと大きな音を立てて一発でグールを昇天させてしまう。


「『火矢』」


 フレデリカに合わせて妹も援護の魔法を放ち、マーガレットたちの援護を欠かさない。

 この四人、仲が良いだけあって中々良い連携攻撃ができるなと思った。


 ちなみに四人が攻撃している間にもこの軍団のボスであるレギオンが四人に襲い掛かろうとしてきたが。


「『極大化 防御結界』」


 ヴィクトリアの魔法が目の前に立ちふがって、全く四人に手を出せないでいた。

 そうこうしているうちにグールの掃討は順調に進み。


「これで最後だ!」


 マーガレットが最後のグールを斬り捨てて、グールの掃討は完了だ。

 そして、グールの掃討が完了したことでいよいよ真打の登場である。


「さあ!とどめです。『極大化 聖光』」

「グギャアアア」


 最後にヴィクトリアがレギオンに聖光の魔法を放ちレギオンが断末魔の悲鳴を上げながら消滅し、戦闘終了だ。


 以前別の遺跡でレギオンと戦闘したときは大分苦戦したものだったが、今のヴィクトリアのレベルだったら楽勝だった。

 それを見て、俺たちも確実に強くなったんだなと実感できた。


★★★


 魔物を倒した後は移動を再開する。

 基本俺たちは俺の作成したマップを見ながら最短ルートで進んでいる。


 しかし、時には寄り道することもある。

 その時とは……。


「あ、ホルストさん。ありました。宝箱ですよ!宝箱!」


 それは最短ルートの近くに宝箱があった場合である。

 俺の魔法はとても便利で、このように宝箱の位置まで表示してくれる場合があるのだ。

 まあ、表示のない場合もあるのだが、今回はあったので折角だから回収させてもらうことにする。


「ふむ。今回の宝箱に罠とかは無いようですね」


 エリカが魔法で宝箱の安全を確かめると同時に。


「お宝、いただき!」


 と、うちの妹が早速開けに行こうとする。

 本当強欲なやつだ。

 だが、お前は一つ忘れている。


「待ちなさい、レイラさん!今回はホルスターと銀ちゃんが宝箱を開ける番ですよ」

「てへ、そうでした」


 宝箱に向かって走ろうとして即座にエリカに首根っこを掴まれて止められた妹のやつが笑ってごまかしている。


 宝箱を開ける瞬間はとても楽しい。

 そして、その瞬間を独り占めするのはよろしくない。

 そこで今回は宝箱を見つけたら順番に開けて行こうということになっている。


 それで今回はホルスターと銀の番なので、妹はお呼びではない。

 それなのにそれを忘れて開けようとは、本当に不届きなやつだ。

 後でエリカにしっかり説教されるがいい!


 さて、それで肝心の宝箱の中身だが。


「「せーの」」


 ホルスターと銀が二人で協力して思い宝箱のふたを開けると、その中から出てきたのは。


「これはミスリル銀の弓だね」


 ミスリル製の弓だった。

 しかもこの弓の真ん中辺りには赤い宝玉がついていて、そこから魔力を感じることができた。

 多分、何らかの魔法が付与された魔法弓なのだと思う。


「ホルスター、ちょっと貸してみな。……『世界の知識』」


 『ミスリルの弓』

 ミスリル製の弓。

 中心の魔石には『敏捷強化』の魔法が宿っているので、これを利用して素早く射る事が可能である。

 ……とのことだった。


 やはり魔法の弓だったらしい。

 これは高く売れそうだな。

 俺がそう思っていると、ホルスターがこんなことを言って来た。


「ねえ、パパ。この弓、僕と銀姉ちゃんでもらっちゃダメかな?」

「何だ?ホルスターたちはこの弓が欲しいのか?」

「うん。だって僕たちが初めて開けた宝箱で手に入れたお宝だもの」

「ふむ」


 つまりは思い出の品としてこの弓が欲しいという事か。

 ……まあ、別に俺は構わないが、お宝はパーティーの共有財産なのでみんなの意見の聞く必要がある。

 まずは嫁たちの顔を見ると。


「「「「私たちは良いですよ」」」」


 と、四人は言ってくれたので嫁たちっはこの弓をホルスターと銀のものにするのに賛成の様だ。

 俺は次に妹たちを見る。


「「「「私たちも構わないですよ」」」」


 と、こちらもオーケーなようだった。

 ただ一人妹のやつだけは惜しそうな顔をしていたけど、さすがに空気を読んだのか何も言ってこなかった。


 ということで、この弓はホルスターと銀の物になることが決まった。


「大切にするんだぞ」

「「うん」」


 弓をもらえた二人はとてもかわいらしい笑顔をするのだった。

 この笑顔を見られただけでも、二人に弓をあげて良かったと思った。


★★★


 こんな感じで洞窟エリアを歩くこと数時間。


「お!ようやくゴールに着いたみたいだな」


 ようやく宇津木の階層へ行くための階段に辿り着いた。

 いつものように入り口の扉の月の紋章に魔力を流し込むと、パタンと扉が開く。

 中を確認すると、いつものように次へ行くための階段がそこにはあった。


「さあ、次へ行くぞ!」


 そして、俺たちは次の階を目指して、また階段を登って行くのだった。

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