第435話~月へと続く遺跡 その4 二階・砂漠編 後編~

 ようやくオアシスに到着した。

 オアシスの周りにはヤシの木や草などが生い茂っており、殺風景な砂漠の中で唯一の癒しの空間だった。


「う~ん、やはり砂漠の中で緑に遭遇すると心が休まりますね」


 ヴィクトリアなどそんなことを言いながらオアシスの泉の側の茂みに座り込むと、横になってのんびりとするのだった。


 他のみんなも同じ気持ちだったのだろう。

 ヴィクトリアの真似をして次々と茂みの上に座るか横になるかしている。


 かくいう俺も、その光景を見ていると急に疲れを感じてきて茂みに座り込むと、ヴィクトリアにこう言うのだった。


「なあ、ヴィクトリア。休憩するんだったらもっと本格的にやろうぜ。こんな茂みの上で休むんじゃなく、ちゃんと敷物を出してその上で休もうぜ。それとオアシスの側でも日差しがきついのは変わらないから、日よけのパラソルも出せ。後、おやつのお茶とお菓子も頼むよ」

「ラジャーです」


 俺に指示されたヴィクトリアがそれらの品物を出して、俺たちは本格的に休憩を開始するのであった。


★★★


 お菓子を食べながら一時間ほどのんびりとオアシスの側で休んだ俺たちだったが。


「ねえ。泉で泳ぎたくないですか?」


 とのヴィクトリアの一言で全員で泳ぐことになった。

 砂漠の中を歩いたせいで全身汗で気持ち悪くなったからな。

 泉で泳いでさっぱりしたかったのだと思う。


 実際、誰一人反対せず即座に「大賛成です!」と、全員が言ったくらいだからな。

 すぐさまテントが張られ、女性陣がテントの中で水着に着替えている。


 というか、お前ら水着なんか持っていたのかよ。

 まだ収納リングがあるうちの嫁たちなら話が分かるのだが、妹たちまで持っているとはどういうことだ?

 もしかしてこの状況を想定していたとでもいうのか。

 妹たちにそんな想像はできないと思うから、大方嫁たちの入れ知恵だと思うが、よく分からん。


 まあ、細かいことを気にしていてもしょうがないので、ツッコむのは止めておこうか。

 それよりも今は泳ぎを楽しむことにしよう。

 余計な想像をするよりもその方が健全でいいからな。


★★★


 結論から言うと、砂漠のオアシスで泳ぐのは最高だった。


「キャー、冷たくて気持ちいい!」

「私はこんな風に水辺で遊ぶのって子供の頃、孤児院の近くの川で遊んで以来だよ」

「マーガレットと同じく、私の子供の頃以来ね」

「私は初級学校の時にお父様たちと湖に観光に行って以来かな」


 妹とその仲間たちは久しぶりの水遊びに大はしゃぎだし。ホルスターと銀も。


「ホルスターちゃん、このお魚の浮き輪に乗って泳ぐの楽しいね」

「そうだね。ねえ、銀姉ちゃん。そこの岩の所まで競争しない?」

「うん、いいよ」

「「それ!」」


 二人してお気に入りの魚型の浮き輪マットに乗っていっちょ前に競争なんかをしていた。

 嫁たちは少し泳いで汗を流した後、ビーチの側に椅子とパラソルを並べてそこでのんびりしている。


「本当、砂漠のオアシスで水浴びとは乙な遊びですね」

「やはり水辺の涼やかな風にあたりながらだと、砂漠でものんびりできますね」

「まあ、さっきまで灼熱地獄にいたからね。そこと比べると、ここは天国そのものだからね」

「私、水遊び何て子供の頃叔母さんたちと一緒に言って以来です。とても楽しいです」


 と、とてもご満悦なようであった。

 本当、航空偵察でここを発見できてよかったと思う。


★★★


 ところで、話は変わるけど、嫁たちの水着姿って俺的には気持ちをそそられるんだよね。

 夜の夫婦生活で水着姿どころか、生まれた時の姿のままの嫁たちの姿を知っているにもかかわらずだ。

 多分、水着を着ていた方が体のラインがはっきりして俺の男心を刺激するからだと思う。


 そんなわけで、俺もベッドに寝そべり、嫁たちの水着姿を堪能することにする。

 いい。本当にいい!こんな嫁たちと夜を過ごせる俺って幸せだな。

 そう思うくらいに俺の嫁たちは体つきはとても良かった。


 胸のサイズの大小はあれどみんな俺好みの形をしてくれている。

 腰はきっちりとくびれていて、俺の男心をくすぐって来る。

 本当に見ているだけで幸せになれそうだった。


 え?お前は何を考えているんだって?

 いいじゃないか。俺の嫁たちなんだし。旦那である俺にはそれくらいの権利はあると思う。


 とはいえ、見るのはこれくらいにしておこうか。

 あまりじろじろ見ていたのがバレると、後で嫁たちに怒られそうだし。


 ということで、自分の行為をごまかすためにホルスターの所へ行き。


「なあ、ホルスターに銀。そこの砂浜で砂遊びでもしないか?」

「「うん、いいよ」」


 と、子供たちと遊んでやるのであった。


 これで嫁たちの目をごまかせるといいな。

 そう真剣に願いながら、俺はホルスターたちと遊んだのであった。


★★★


 夜の砂漠は昼間と違って寒い。

 だから盛大に焚火を燃やして暖を取ることにする。

 食事も暖かいものを用意している。


「さあ、あなたたち、将来へ向けての練習ですからね。気合いを入れて作るのですよ」

「「「「はい」」」」


 エリカは妹たちに手伝わせて大量にスープを作らせている。

 まあ合わせて十人以上も人数がいるし、昼間の猛暑や移動、戦闘などで全員が腹ペコだからな。

 五人で頑張って用意した食材を大鍋に入れて、大量のスープを作成している。


 その一方で、ヴィクトリア他残りの嫁たちと銀はバーベキューの用意をしている。


「銀ちゃん、お肉や野菜は食べやすいように小さく切ってから串に刺すのですよ」

「はい、ヴィクトリア様」

「銀ちゃん、その肉アタシが半分切るから、こっちへ持っておいで」

「ご配慮ありがとうございます。リネット様」

「銀ちゃん、こっちの野菜は固くて串に刺しにくいので私が刺しますので、肉だけ串に刺してね」

「はい、ネイア様。そうさせてもらいます」


 そうやって銀に手伝わせながらみんなでバーベキューで焼く大量の串を作っている。

 その一方で俺はホルスターと遊んでやっている。


「ホルスター。パパと一緒に積み木でもやるか」

「うん、いいよ」


 そんな感じで二人で積み木を組み立てている。

 一応、俺も嫁たちの手伝いをしようかな、と思ってそう言ったのだが。


「旦那様にうろちょろされると邪魔なので、そこでホルスターの相手をしていてください!」


 と、追い払われたのでこうして息子の相手をしているのだった。

 そうこうしているうちに、準備ができたようでバーベキュー大会が始まる。


「お代わりはたくさん用意していますので、いくらでも食べてくださいね。それではカンパイ」

「カンパ~イ」


 エリカの開始宣言とともにみんなが一斉に飲み始め、バーベキューが焼かれ始める。


「銀ちゃん、じゃんじゃん食べましょうね」

「はい、ヴィクトリア様」


 焼かれたバーベキューに早速ヴィクトリアが食いついている。

 銀と二人で楽しそうに食べ、一本、また一本と焼いた串が消費されて行く。


「みんな、お肉だよ。お腹いっぱい食べようね」

「「「うん」」」


 それに今日はヴィクトリア以外にも食欲が旺盛なのが四人もいる。

 彼女たちも雑談しながらよく食べているので、串がどんどん消費されて行っている。


 かくいう俺も結構食べている。

 何せ昼間の暑さのせいでかなり消耗したからな。

 食べておかないと明日に差し障る。


 それはヴィクトリア以外の嫁たち、ホルスターも同じようで。


「ホルスター、今日はよく食べますね」

「うん、だってお腹空いているんだもん」

「ネイアちゃんも今日はよく食べるね。珍しいね」

「そういうリネットさんも普段より大分食べているじゃないですか」

「まあ、今日は昼間お腹が空くようなことをして来たからね。仕方ないよ」

「そうですね。私もお腹が減って堪らないですもの」


 と、こちらも楽しく食べていた。


 そんなわけで三十分ほどで串焼きは無くなり、続いてスープと主食のパンも無くなり、最後にデザートとして用意していたお菓子や果物も無くなったところでバーベキューはお開きになったのであった。


 皆と仲良く食べることができて、とても良い夜だったと思う。


★★★


 砂漠のオアシスで楽しい夜を過ごした翌朝。

 夜明けと同時に俺たちはオアシスから離れて問題の遺跡へと出発した。


 なぜそんな早くから出発したのかって?

 決まっている。太陽が昇り切って暑くなる前に遺跡へ到着してしまおうという作戦なのだ。

 この思惑はうまく行き、昨日とは打って変わって快適に砂漠を移動することができた。


 そして、二時間後。


「ようやく遺跡へ到着したな」


 問題の遺跡へと到着した。

 遺跡は一階の森林の遺跡と同じようにこじんまりとした感じで、入り口に扉には月の紋章が描かれていた。

 この遺跡で間違いないようだ。


 俺は扉の月紋章に触ると、魔力を流し込む。

 するとパタンと扉が開く。

 中を覗いてみると一階の時と同様登り階段があった。

 それを指さしながら俺は言う。


「さあ、次へ行くぞ!」

「はい!」


 そして、俺たちは次の階層へと登って行くのだった。

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