今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第216話~2つの女神の神殿 そして、超絶美人なエルフの女性神官長との出会い~
第216話~2つの女神の神殿 そして、超絶美人なエルフの女性神官長との出会い~
エルフの王都『ファウンテン オブ エルフ』に着いた次の日。
「ホルスター、お着替えできた?」
「うん、できたよ、ママ」
「って、あなた、襟が少し曲がっているじゃない。……はい、これでよし!着替えた後は一度くらい鏡を見るようにしなさい」
「うん、ママ」
これから出かけるに際して、ホルスターがエリカから注意を受けていた。
最近、ホルスターは自分一人でお着替えできるようになったので、一人で着替えた後、こうやって誰かに見てもらうようになっている。
「あら、銀ちゃん、かわいいですね」
「うん、その白のワンピースよく似合っているね」
ホルスターの傍らでは、銀がヴィクトリアとリネットにいじられていた。
白色のフリル多めのワンピースを着せられ、髪もポニーテイルにすっきりとまとめられて、すっかりよそ行きの格好をしている。
「さあ、準備もできたようですし、お出かけしましょうか」
出かける準備ができたので、全員で館を出て目的地に向かう。
「ホルスト様、出発の準備はできております」
商館の入り口へ行くと、トムさんが待ち構えていて、俺たちを案内してくれる。
トムさんについて行くと、商館の入り口には馬車が待機してあった。
これは昨日トムさんに頼んで手配してもらっていたものだ。
これに乗って、今日は目的地に行くのだ。
ちなみに今日はパトリックは休みだ。
パトリックは旅の間ずっと頑張って俺たちを引っ張ってくれた。
おかげで、大分疲れもたまっていることと思う。
だから、たまにはゆっくりさせてやりたいと思い、しばらくはのんびりとさせてやるつもりだ。
「パトリック、ゆっくり休めよ」
「ブヒヒン」
朝、様子を見にったら、そうやって嬉しそうに鳴いていた。
多分、今頃は飼い葉でもはみながら、のんびりしていると思う。
それはともかく、準備万端整ったので、出かけるとしよう。
★★★
「パパ、おっきい建物だね」
目的地に着くと、ホルスターが目的の建物を見上げながらキャッキャとはしゃいでいる。
「うん、噂通り立派な神殿だね」
リネットも目的地の建物を見ながらしきりに頷いている。
ここはエルフの王都の三大建物と呼ばれる建物の一つ『月の女神ルーナの神殿』だ。
「おばあ様の神殿も立派なものですけど、隣のお母様の神殿も立派なものですね」
『月の女神ルーナの神殿』を横目に見ながら、ヴィクトリアが隣にある『魔法を司る女神ソルセルリの神殿』を見ながらそんなことを言う。
こっちのソルセルリの神殿も三大建物のうちの一つで、かなり立派なものだ。
エルフたちはルーナとソルセルリに対する信仰が厚い。
だからこそ、こうして立派な神殿が建てられているというわけだ。
ちなみに、この二人の神々、ヴィクトリアのばあちゃんと母ちゃんだ。
「まあ、家族の仲はよかったですよ」
二人のことを聞いたら、ヴィクトリアはそんなことを言っていた。
それ以上は言いたくなさそうだったので聞かなかった。
「まあ、それはともかく中へ行こうか」
外から神殿を見ていてもそれだけではつまらないので、中へ入って見学することにした。
★★★
「ヴァレンシュタイン王国の聖都の神殿も人が多かったですけど、ここも多いですね」
馬車を降りて神殿の方へ歩いて向かうと、神殿の入り口には長蛇の列ができていた。
老若男女問わずたくさんのエルフとたくさんの人間の観光客が列に並んでいた。
これだけの人が待っているとなると、普通なら神殿に入るには大分時間がかかるはずだ。
ただ、今回、俺たちにはある手段があった。
それはちょっと邪道な手だったが、別に犯罪ではないので、並んで待っている人たちには悪いが利用させてもらうことにする。
「こっちだな」
俺は皆を連れて神殿の裏口の方へ行く。
そして裏の勝手口にたどり着くと、商館の支配人のハリスンさんに聞いていた通り、扉の横に付いている呼び鈴を鳴らす。
チリリン。
と、甲高い音が鳴る。
ちなみにこの呼び鈴はヒッグス家の商品で、この入り口の呼び鈴を鳴らすと建物の中に設置された呼び鈴が呼応し、そっちの呼び鈴も一緒に鳴るという代物だ。
結構高価な物だそうだが、今の神官長が就任する時に贈り物として贈ったらしかった。
まあ、呼び鈴の話はこのくらいにして、俺たちは中から反応があるのを待つ。
すると。
「どちら様でしょうか」
中から中年の小太りの神官服を着た男性エルフが出てきた。
「お初にお目にかかります。自分はホルストと申します。ヒッグス商会の支配人のハリスンさんの紹介できました」
「ハリスン様の?ああ、お話はお伺いしています。どうぞ、こちらへ」
そう言うと、中年の神官さんは俺たちを中へ案内してくれるのだった。
★★★
「『月の女神ルーナ』様と『魔法を司る女神ソルセルリ』様の神殿へようこそ。私、二つの神殿の神官長を務めさせてもらっていますネイアと申します」
神殿の奥にある神官長室に通された俺たちは、そこで二つの神殿の神官長であるネイアさんの挨拶を受けた。
ネイアさんはエルフの中でも特に顔立ちの整った美人さんのエルフだ。
長く美しい金髪の持ち主で、それを自然な感じでおろしている。
その様子は、まるで金色のコートを着ているようだった。
年齢はよくわからないが、そんなに年上という感じではなかった。
それはともかく、神官長とかいうえらい人に挨拶されたので、俺たちも挨拶をする。
「初めまして。ホルストと申します。それとこっちは俺の家族です。今日は神殿の見学時間の昼休憩中に神殿の中を見せてくれるということで。ぜひよろしくお願いします」
そう、俺がさっき言っていた神殿見学に使った邪道な手。
それはヒッグス商会の伝手を使って、昼の休憩時間に神殿見学させてもらうというものだった。
俺の挨拶を受けて、ネイアさんがにっこりとほほ笑む。
「別に大したことではございません。ハリソン様を始め、ヒッグス商会の方には日頃お世話になっておりますし、何だったら私のイトコとかも働かせてもらっておりますし」
「へえ、そうなんですか」
「ええ、マロンと申しまして、今は商館で売り子をしているそうですよ」
マロン?ああ、俺たちが最初商館に訪れたときのあの子か。
そう言われてみれば、あの子と目の前のネイアさん。どことなく似ている気がする。
「その上、ヒッグス商会の方々には寄進とか魔道具の購入とかで色々お世話になっておりますのでヒッグス家のお嬢様とその婿様がいらっしゃったとなれば、このくらい何でもないことです」
「そう言ってもらえると、こちらとしてもありがたいです」
「それよりも、昼休憩までまだ時間があります。その間、お話しませんか?」
「お話ですか?」
「ええ、聞くところによると皆様方はあちこち冒険なされて、数多くの魔物たちを討伐してきたとか。私、そういうお話を聞くの好きなんです。よければ、そのお話をしていただけませんか」
「いいですよ」
こうして俺たちはネイアさんに俺たちの冒険話をするのだった。
★★★
「とても楽しかったです」
神殿の中心部への道すがら、ネイアさんがそう楽しそうに感想を漏らす。
俺たちの冒険譚を話したくらいでこんなに喜んでもらえて何よりだ。
俺たちも頑張って話した甲斐があるというものだ。
それはそうとして、神殿の中心部への道中、俺は気が付いたことがあった。
「何か神殿の中、とても忙しそうですね。みなさん、とても忙し気に動き回っていますし」
「ええ、そうなんですよ。実はもうすぐルーナ様とソルセリス様のお祭りなんです。ですから、その準備で忙しいのです」
「ああ、そういうことなんですね。それで、準備の方はいかがですか?順調ですか?」
「まあ、祭りの資材とかそういうのは順調なんですけど、一つ困ったことがありまして」
「そうなんですか?」
と、俺がそう言った時、ネイアさんが、あ、という顔をした。
慌てて言い直す。
「えーと、今の私の発言は忘れてください。大したことではありませんので」
ネイアさんの慌てぶりを見るにとても大したことがあったように見えたが、本人が言いたくなさそうなのにツッコむのは悪いと思い、
「そうですか。困ったことがありましたら、俺たちにできることでしたら協力しますので、気軽に言ってくださいね」
とだけ、言っておいた。
そうこうしているうちに、神殿の中心部に着いた。
★★★
「うわあ、立派なおばあ……ルーナ様とソルセルリ様のの木像ですね」
ネイアさんが案内してくれた『月の女神ルーナ』の神殿の礼拝堂にはルーナとソルセルリの神像が祭られてあった。
ここでの二人の立場はルーナが本尊、ソルセルリが脇本尊といったところである。
『魔法を司る女神ソルセルリ』の礼拝堂にもやはり二人の神像があるが、そこでは逆の祭られ方をしているということだ。
なお二人の神像は木製で、色とりどりに色が塗られている。
で、それをヴィクトリアが近寄って興味深そうに見ているわけだが、こうして並んでみるとよくわかる。
ヴィクトリアって、お母さんやおばあさんの面影が強いな、って。
まあ、ヴィクトリアの父方のおばあさんのアリスタと母方のおじいさんは姉弟という話だから、家族にそっくりなのが多いのだと思う。
実際、ヴィクトリアってアリスタやセイレーンにも似ているからな。
俺がそんなことを考えていると、ネイアさんがこんなことを言い出した。
「えーと、そちらの方。確かホルスト様の側室様ですよね」
「はい、ヴィクトリアです」
「そうだ。ヴィクトリア様でした。……ところで、ヴィクトリア様ってルーナ様やソルセルリ様によく似ていらっしゃいますね」
あ、やっぱりそのことに気がついちゃったか。
まあ、ネイアさんは毎日ルーナとソルセルリの神像を眺めているわけで、ヴィクトリアが二人にそっくりなことに気が付いても不思議ではなかった。
「まあ、よく言われますね」
「よく言われる……のですか?」
あ、このバカ!なに口走ってやがる。
俺が慌ててフォローに入る。
「実は俺たち、前にヴァレンシュタイン王国の聖都にも行ったことがありまして、そこにも神像がありますので、似たようなことを言われたことがあるんですよ」
「ああ、そういうことですか」
俺の話を聞いてネイアさんは納得してくれたようで、それ以上は何も言ってこなかった。
本当、ヴィクトリアの発言のせいで面倒なことになりそうだったが、大事にならずに済んでよかったと思う。
★★★
その後、『魔法を司る女神ソルセルリ』の神殿も見学させてもらった。
こっちの神像ももう一つの神殿と同様立派なものだった。
一通り見学を終えた俺たちは帰ることにした。
「今日はお世話になりました」
「いえ、いえ。私の方こそ貴重なお話を聞かせてもらって楽しかったです。また、ぜひお越しください」
最後にそうネイアさんとあいさつを交わした後、俺たちは神殿を離れるのだった。
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