今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第215話~エルフの伝承 エルフの禁足地と白い牡鹿のお話~
第215話~エルフの伝承 エルフの禁足地と白い牡鹿のお話~
「やっと着いたな」
ようやく俺たちはここでの拠点として使用する予定のヒッグス家の商館に着いた。
ヒッグス家の商館は商業地区のど真ん中にあり、商業区の中でもひときわ大きくて立派な建物だった。
商館の正面は大きな商家といった造りになっており、何人もの客や従業員たちが出入りしているのが見えた。
商館の裏側には大きな倉庫とヒッグス本家から役員が派遣されてきた時に使う館があった。
この館は普段は使用していないが、ヒッグス家のお偉いさんが来た時に宿泊施設として使うための館だった。
「こんにちは」
とりあえず俺たちは正面玄関から入って行く。
すると、受付のエルフのお姉さんが対応してくれる。
中肉中背くらいで、きれいな金髪をボブヘアにしている目が大きくて愛らしい子だった。
「いらっしゃいませ。ヒッグス商会へようこそ。本日は何をお求めでしょうか?マジックバッグですか?魔道具ですか?いずれもヒッグスタウンの魔道具工房で作られた逸品ぞろいですよ。さあ、何になさいますか」
受付のお姉さんはえらく商売熱心な子だった。
会うなり、熱心に商品を売り込んでくる。
とても元気の良い子だ。
あまりエリカの実家の商売のことは詳しくないが、こういう見た目も良くて仕事熱心な子を雇っておけば商売も繁盛することだと思う。
それはともかく、俺は来訪目的を告げる。
「残念ながら、俺たちは買い物に来たんじゃないんだ。支配人を呼んでくれないか?俺の義父から預かって来た手紙だ。先に支配人には義父から連絡が来ているはずだからそれを渡してくれればわかる。後、義父から商品の輸送も頼まれていて商品もあずかってきているので、後でいいから倉庫に案内してくれ」
「義父?荷物?そう言えば、支配人が何か言っていたような……あ、もしかしてあなたたちは、会長の娘様御一行ですか」
会長。
エリカのお父さんはヒッグス家の経営するヒッグス商会の会長である。
だから、彼女が会長といったのはエリカのお父さんのことである。
「ああ、そうだよ。俺はホルスト・エレクトロン。で、こっちが俺の妻で、会長ことトーマス・ヒッグスの娘のエリカ・エレクトロンだ」
「初めまして、お嬢さん、ご紹介いただいたエリカです。お勤めご苦労様です」
「初めまして、エリカ様にホルスト様。私、ここで働かせてもらっていますマロンといいます。あ、支配人ですね。すぐに呼んでまいりますので、少々お待ちください」
「ええ、頼みますね。マロンさん」
ということで、張り切ったマロンさんは奥に支配人を呼びに行くのだった。
★★★
「ホルスト様に、エリカ様。それに側室の皆様方に銀様。ようこそいらっしゃいました。私、ここの支配人を務めさせてもらっております、ハリスンと申します」
マロンさんに案内されて支配人室に行くと、そこには商館の支配人のハリスンさんがいて、俺たちに挨拶をしてくれた。
ハリスンさんは背が高くがっちりとした体格の中年のエルフで、スーツがよく似合うダンディーな感じの人だった。
「こちらこそよろしくお願いします。ハリスンさん」
一通り挨拶した後は俺たちが拠点とする来客用の館へ行く。
「トムじいさん。みなさんを館へ案内してくれ」
「はい、畏まりました、支配人」
ハリスンさんの指示で館の管理人をしているトムさんが俺たちを案内してくれる。
トムさんは初老のエルフで主に裏方の業務を担当している人だ。
館の管理はもちろん、商館の隣にある従業員寮や従業員食堂の管理を主に担当していた。
「こちらでございます」
トムさんが案内してくれた館は、ヒッグス家の屋敷ほどではないが、結構立派な建物だった。
「うん、バッチリ整っているね」
事前にエリカのお父さんから連絡が来ていたこともあって、館の中はきちんと清掃されていた。
「それでは、旦那様、ヴィクトリアさん、後で」
「ホルスト君、ヴィクトリアちゃん、後でね」
「ヴィクトリア様とホルスト様、また後で」
エリカ、リネット、銀の3人が割り当てられた自分たちの部屋に入って行く中、俺とヴィクトリアは部屋に荷物を置いた後、仕事を片付けに館を出た。
★★★
「えーと、AとBとEの荷物はこっちへ。Cはここへ。Fはこちらへお願いします」
俺に手渡された送付状を見ながら、倉庫係の職員さんがそう頼んでくる。
「ヴィクトリア、その通りにしろ」
「ラジャーです」
俺に言われたヴィクトリアが言われた通りに荷物を出していく。
荷物は主に大型で高価な魔道具だった。
「大型の魔道具って、盗賊たちに狙われやすいんだよ。その点、ホルスト君たちに持って行ってもらえれば安心だよ」
出発前、エリカのお父さんがそんなことを言っていたのを覚えている。
まあ、お父さんも魔道具の輸送の安全性には頭を悩ませているみたいなので、俺に頼んできたのだと思う。
俺的にはお父さんにはホルスターのことといい、俺たちのことといい、色々お世話になっているのでこの程度の仕事を引き受けるくらい何でもない。
「これで、最後ですね」
ヴィクトリアが最後の荷物を出す。
最後の荷物はマジックバックの入った木箱で、大量のマジックバックが入っているのが、木箱の隙間から確認できた。
職員さんはその木箱を開けると、附属の明細書を見ながら中身のチェックをする。
そして、チェックが終わるとにこやかに笑う。
「これで検品終了です。お疲れさまでした」
俺たちをねぎらうかのように、頭をペコリとさせる。
これで、仕事は終了だ。
「検品作業、ご苦労様」
俺たちも職員さんにねぎらいの言葉をかけると、少し休憩したくなったので、自分の部屋に行くのだった。
★★★
「ホルスターちゃん、スゴロクしましょうね」
「うん」
晩御飯が終わった後、銀がホルスターを誘って一緒に遊んでいる。
「ねえ、ママたちも一緒にしようよ」
「「「いいよ」」」
それに嫁たちも加わり、絨毯の上で一緒になって遊んでいる。
え?何でホルスターがここにいるかって?
そんなの俺がエリカの実家から連れてきたからに決まっている。
「久しぶりに親子水入らずで過ごしたいです」
そうエリカが言うので、俺が迎えに行ったというわけだ。
「やったね、ホルスターちゃん。2マス進めだよ」
「はい、じゃあお姉ちゃん2マス進めるね」
「あん、1回休みです」
「やった!トップの人と位置を入れ替える、だって」
「リネットさん、ズルいですよ」
なんか楽しそうにやっているようで何よりだ。
その一方で、俺は管理人のトムさんに話を聞いていた。
「それでは、その勇者様と冒険したエルフの王様の話を聞かせてくれないか?」
「はい。エルフの伝承によりますと、我がエルフ国の初代の王が勇者様とともに旅をし、この地を破壊しようとした邪悪な存在をうち滅ぼしたという話でございます。これは、有名な話で、子供向けの絵本になったり、劇などでも上演されていますので、ホルスト様もご存じではないでしょうか?」
「ああ、聞いたことがあるな」
その話は確かに聞いたことがある。
多分、そんな内容の劇を見たことがあると思う。
「ただ、詳しい話は知らないんだ。聞かせてくれないか?」
「はい。エルフ王は勇者様と魔物を討伐したのですが、魔物を討伐した後、その地に封印を施して邪悪なものが出てこれないようにしたそうです」
「なるほどな」
フソウ皇国やドワーフの国と同じだな。
やはりここにもプラトゥーンを封じるためのかなめ石として、4魔獣の一匹が封じられているのだと確信した。
「それで、その封印ってどんなものなんだろうな。遺跡とかそういうのがあるのか?」
「それがよくわからないのです」
「わからない?」
「はい、何せ禁足地は立ち入り禁止なものでして。ただ、禁足地にすむというダークエルフたちなら何か知っているかもしれません」
「ダークエルフか。エルフとはほとんど交流がないと聞くが、何か会える方法とかないか」
「思いつきませんね。そもそも禁足地に入るには王家の許可がいりますからね。中々難しい話だと思いますよ」
「そうか」
それは大変だなと思った。
今の所俺たちに王家との伝手はない。
まずはそこから探すことだなと俺は思った。
「他に聞きたいことはございますか」
「そうだな。あ、そうだ。禁足地とかに神獣がいるって話を聞かないか?」
「神獣でございますか。私はそういうのに心当たりはございませんが……そう言えば、エルフの国には白い牡鹿の伝承がありますね」
「白い牡鹿?」
「はい、その牡鹿は禁足地に住んでいて、邪悪な存在が禁足地に入ってくるのを阻止していると聞きます。それが神獣かどうか、私にはわかりませんが」
「なるほど!よくわかった。ありがとう」
トムさんの話はとても有意義だった。
まあ、トムさんもこういう話にそこまで詳しくないから、得られる情報はこんなものだと思う。
さて、今できる情報収集は済んだことだし、後はホルスターたちと遊ぶとしよう。
俺は席を立ち、ホルスターたちの方へ向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます