今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第214話~エルフの王都 ファウンテン オブ エルフ まずは街の散策から始めよう~
第214話~エルフの王都 ファウンテン オブ エルフ まずは街の散策から始めよう~
「ようやく着きましたね」
町の城壁を見て、エリカがホッとした表情になる。
とはいっても、ここの城壁は石ではない。
土を固めて作った土壁だ。
というのも、エルフの国には良質な石切り場がなく、仮にあったとしても木々が豊かな森のせいで運ぶのが困難なせいで使いにくいことこの上なかった。
だから、エルフの国では王都といえども、こうやって土で壁を造成しているのである。
そう。
ここはエルフの国の王都『ファウンテン オブ エルフ』であった。
★★★
エルフの王都の正門である大手門の前には長蛇の列ができていた。
「はい、順番に並んで、並んで」
エルフの通関局の役人が、大声で列の整理をしている。
列に並んでいるのは8割方エルフであるが、中には人間の商人の姿も見えた。
結構大きな馬車に多くの荷物を積んでいるようだ。
この世界、マジックバッグが普及しているので一度に多くの荷物を運べるのだが、その分盗賊とかに襲われた時の危険も大きくなるので、大勢の護衛をつける必要があった。
で、それらの護衛の人数を連れて行くにはそれなりのスペースがいるわけで、結局大型の馬車が必要となるのだった。
そんなことを考えているうちに列に並んでいた俺たちの順番が来た。
「何か、身分を証明できるものを持っていますか?」
通関係の役人が丁寧に聞いてくる。
これは好感触だった。
大体どこの都市に行っても入り口の兵士や役員というのは高圧的に接してくるのが多いからだ。
だから、旅人に丁寧に接する役人というのは好感が持てた。
多分、上司の指導がよいのだと思う。
「どうぞ」
俺は自分のギルドカードを役人に見せる。
「ほう。Sランクの冒険者ですか。これは信用できる方々ですね。馬車の中にも不審な物はないようですし、もう通ってもらって結構ですよ」
こうして、俺たちは特に問題なく王都の城門を通過することができた。
★★★
「うわー、やっぱりエルフの国では木造建築の家が主流なんですね」
王都の中へ入るなり、ヴィクトリアがそんなことを言いながら、周囲をキョロキョロと見渡し始める。
あまりにもキョロキョロ首を回すものだから、こいつ、いつからフクロウになってしまったんだとついつい思ってしまった。
ちなみに、フクロウは周囲を観察する時、その場から動かずに首をグルグル回して観察する。何せ、フクロウは首を後ろに向けることができるので、後背まで見られるからな。
ただ、ヴィクトリアがこれをやると、いかにも田舎者みたいで恥ずかしい気がするので止めてほしいという気もするのだが、このしぐさはこのしぐさでかわいいので、注意しようかどうか悩ましい所である。
まあ、ひどすぎた時だけ言えばいいか。
それよりも町の様子だ。
エルフの町には3つほど目立つ建物がある。
「観光ガイドによると、町の北側にある丘の上にあるのが、『王城』と『月の女神ルーナの神殿』と『魔法を司る女神ソルセルリの神殿』だね」
リネットが観光ガイドを見ながらそう説明してくれる。
エルフは大昔から森の中に住んでいる種族で、月が自分たちに力を与えてくれると信じているらしい。
その上、魔法が得意な者が多い。もっとも、ウィンドウの町のコンドルさんのように魔法を使えず戦士をやっている人もいるのではあるが。
まあ、そんなわけでエルフは、『月の女神ルーナ』と『魔法を司る女神ソルセルリ』を信仰しているというわけだ。
「それはそうとして、ルーナ様とソルセルリ様って、確かヴィクトリアの」
「えー、ワタクシのおばあ様とお母様ですね」
俺の質問にヴィクトリアがそう答える。
渋い顔をしているので、あまり言いたくないのだと思う。
こいつの家族は基本優秀だ。
まあセイレーンやジャスティスのように能力はともかく性格は……というのもいるが、能力は高い。
その中で自分だけポンコツなのを自覚はしているのだろう。
だから、家族のことを話したがらないのだと思う。
俺は渋い顔をするヴィクトリアの頭を撫でてやる。
「そんな顔をするな。俺は何があろうとヴィクトリアのことが好きだからな。だから、まあ、うまく言えないけど、俺はお前といつまでも一緒に居たいと思っている」
「ホルストさん……」
俺の言葉を聞いて感極まったのか、ヴィクトリアが俺に抱き着いてきた。
ほっぺたを俺の胸に引っ付けて、全力で抱き着いてくる。
俺はそんなヴィクトリアの頭をさらになでなでしてやる。
すると、ヴィクトリアは俺を抱きしめる腕の力を強くするのだった。
と、ここまではよかったのだが、ここでヴィクトリアの様子を見て羨ましいと思ったのか、エリカとリネットまで俺に抱き着いてきた。
「旦那様」
「ホルスト君」
二人とも、ヴィクトリア同様、力いっぱい抱き着いてくる。
正直、嫁さん3人を同時に相手にするのは俺的にも大変なのだが、ここは男の甲斐性の見せ所とばかりに、頑張って3人のことをかわいがってやる。
そのうちに3人とも満足そうな顔になったので、かわいがるのをやめ、目的地に向けて出発することにする。
★★★
「旦那様、あそこみたいですよ」
王都の城門から1時間ほど馬車を走らせたところに目的地はあった。
それで、目的地にあるものを見たエリカが興奮気味に言う。
「あれが『エルフの泉』か」
そう、俺たちが目的地にしたのは通称『エルフの泉』と呼ばれる場所だった。
ここはエルフという種族発祥の地とも言われていて、最初のエルフはこの泉から誕生したという伝承がある。
まあ、どこにでもあるような伝承なのだが、エルフの間では信じられていて一生に一度はこの泉にお祈りに来るのが習わしだという。
実際、この町の名前『ファウンテン オブ エルフ』も訳せばエルフの泉だしね。
それで、俺たちがここに来た理由だが。
「旦那様、ここの泉でお祈りすると、将来元気な子供が生まれるそうですよ。ですから、最近ではエルフだけでなく、人間も観光がてら訪れるようになった、とか」
どうやらエリカは観光ガイドを読んでそのことを知ったらしい。
数日前から、王都に着いたら是非行きましょうと、ずっと俺に言っている。
いや、エリカだけではない。
「ホルストさん、王都に着いたら、絶対に『エルフの泉』へ行きましょうね」
「ホルスト君。アタシ、『エルフの泉』、行きたいな」
ヴィクトリアとリネットも俺の顔を見ながら、そうせがんでくる。
まあ、二人ともずっと俺に元気な子供が欲しいって、おねだりしているからな。
だから、こういう場所があると聞けば行ってみたくなるのだろうと思う。
本当、かわいい嫁たちだ。
こんな女の子たちが俺の嫁になってくれて、俺は本当に幸せだ。
さて。まあ、折角泉に来たことだし、お祈りをするとしよう。
「よし、それじゃあ、お祈りするか」
「「「はい」」」
ということで、皆でお祈りする。
泉の前に置かれた寄進箱に銀貨を入れて、お祈りを始める。
「「「「元気な子供が生まれますように」」」」
全員でそうお願いする。
その後は泉の側の有料スペースを借りて休憩する。
え?こんなところに有料スペースとか、あるのかって?
それがあるんだよ。
そもそもここの泉の周囲は保護区になっていて景色がいいのだ。
だから、泉を見に来る観光客も多く、そういう人たち用に休憩スペースを貸し出しているというわけだ。
そんなわけで、全員で休憩スペースに座ってのんびりしているわけだが、
「何か、お腹が空きましたね。朝ごはん食べてから何も食べてないですしね」
と、ヴィクトリアがそんなことを言い始めた。
そういえばそうだったな。
ならば、景色でも眺めながら飯でも食うとするか。
「ここの泉の入り口の所に、屋台がいくつか並んでいたな。そこで何か買って食べるか」
「「「「「賛成」」」」」
ということで、全員で屋台の方へ行くことにする。
★★★
「うわー、おいしそうな屋台が並んでいますね」
屋台を見たヴィクトリアがとっても嬉しそうな顔をする。
ここの屋台は全部で10店舗ほどあり、昼飯として十分なものから、ちょっとした軽食、デザートまで一通りそろっていた。
ちょうど昼時だったので、俺たち以外に食べ物を買いに来た観光客も多く、結構な人でにぎわっていた。
「みんな、欲しい物を買えよ」
「「「「はい」」」」
俺が好きなだけ買えと言ったので、皆で屋台を順番に回ってほしいものを次々に買って行っている。
30分後。
「お前ら、そんなに食えるのか?」
「「「「大丈夫です。残ったら、後でおやつにします」」」」
嫁たちが大量のピザ、フライドポテト、唐揚げ、クレープ、ジュースなどを買って、両手に持ちかねている光景がそこにあった。
まあ、羽目を外し過ぎて、ちょっと多めに買っただけの話だと思う。
食べられるというのなら、それはべつにいいのだが。
「あの人たち、なんかすごい量買っていますね」
ちょっと、よそ様の視線が痛いのが気になるが。まあ、気にしなければそれまでだ。
それはともかく、昼飯も買ったし、食べるとしよう。
★★★
「うん、きれいな景色を食べながら飯を食うのはうまいな」
屋台で昼食を調達した後、俺たちは借りていた休憩スペースでご飯を食べた。
食べきれないほど買ってたと思っていたのに、みんなお腹が空いていたのか、バクバク食べているので、すでに半分ほどなくなっている。
もちろん、俺も食べているが、それよりも女性陣の方がよく食べている気がする。
「あら、この唐揚げ、ちょっと辛口だけどおいしいですね。お酒に合いそうですね」
「あ、エリカさん、そのベーコンのピザ、おいしそうですね。ワタクシにも一口ください」
「銀ちゃん、そのぶどうジュース取ってくれる?」
「はい、リネット様」
というか、皆嬉しそうに食べているので、見ている俺も満足だ。
こうして、俺たちは楽しく昼食を食べるのだった。
★★★
「さて、飯も食ったことだし、そろそろヒッグス家の商館へ行こうか」
「「「「はい」」」」
昼食が終わった後は、ここでの拠点とするヒッグス家の商館へ向かうことにする。
「パトリック、頼むぞ」
「ブヒヒン」
そして、俺はパトリックを走らせてヒッグス家の商館へと向かうのだった。
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