閑話休題30~銀のお菓子天国~

 これは、ウィンドウの町の『オーガニック』というお菓子屋さんに行った時の話です。


 皆様、こんにちは。

 私、銀と申します。

 私こう見えても狐でして、女神ヴィクトリア様にお仕えして立派な神獣になるため日々努力しております。


 それで、今ヴィクトリア様たちとエルフの国の王都へ旅をしている最中なのですが、そのエルフの国の最初の町のウィンドウという所のお菓子屋さんに現在います。


「銀ちゃん、このお菓子屋さん、おいしそうですね」

「はい、ヴィクトリア様」


 ヴィクトリア様が銀をそのお菓子屋さんに誘ってくれたので、銀もついて行ったというわけです。

 実は銀、ここへ来るのをずっと楽しみにしていました。


「銀ちゃん、このお菓子、食べてみたいね」

「そうですね、ヴィクトリア様」

「エルフの国へ行ったら、これを売っているお店があるそうですから、エルフの国へ行ったら行ってみましょうね」

「はい、ヴィクトリア様」


 ヴィクトリア様はこのお店に行くのをずっと楽しみにしていました。

 エリカ様やリネット様たちと一緒にじっとエルフの国の観光ガイドを見ながらあれやこれやとお話していました。

 それで、エルフの町についてお目当てのお店を見つけるなり、ホルスト様に馬車を停めてもらってこうして来たというわけです。


 それで、こうして銀も一緒にお店に入ったわけですが、入るなり目を見張ることになりました。


「うわー、お菓子がたくさんある。ここはまるでお菓子天国ですね」


 目の前にはお野菜や果物を使って作られたお菓子がたくさん並んでいます。

 実は銀。お肉やエビフライや甘いお菓子も好きなのですが、お野菜も好きなのです。

 銀は狐なので雑食でお野菜とかも結構食べるのですよ。


「味見、どうですか」


 銀がそうやってお菓子を眺めていると、店員さんが味見をするように勧めてくれました。


「ありがとうございます」


 もちろん、遠慮せずにいただきます。

 ニンジンのチップを一枚手に取り、口に運びます。

 モグモグ。……うん、おいしいです。


「これは中々ですね」


 ヴィクトリア様も野菜チップを食べて満足そうに笑っています。


「「こんにちは~」」


 と、銀たちが食べているとエリカ様とリネット様もお店に入ってきました。

 もちろん、エリカ様たちも店員さんに勧められて、お菓子を食べます。


「とてもおいしいですね」

「うん、このドライフルーツ、アタシの好みだね」


 二人とも満足されたようで、おいしそうに試食しています。


「これは買いですね」

「私もそう思います」

「アタシも大賛成」


 お三方の意見が一致したようなので、早速買い物の開始です。


「銀ちゃんも普段からお仕事手伝ってくれているからね。野菜チップ気にいったんでしょ?ワタクシが買ってあげますから、好きなだけ買いなさい」

「ありがとうございます」


 ヴィクトリア様にそうおっしゃっていただいたので、銀も遠慮せずに買い物をします。


「どれにしようかな~」


 目の前にたくさん並べられたお菓子を見ながら銀は悩みます。

 銀も女の子なので、実は買い物が好きなのですが、銀はまだ修業中の身。


 ホルスト様は、


「銀も一人で外に行く時なんかお小遣いがあった方がいいだろう?毎月いくらか渡すようにしようか?」


と、おっしゃってくださるのですが、


「銀は修行中の身。それに皆様に十分物は買ってもらっています。ですから、いらないです」


そう言って、断っています。


 ただ、将来大きくなって自分でお金を稼げるようになったら、いっぱい買い物したいですね。

 それはともかく、今日は好きなものが目の前にたくさんあるので欲しいだけ買ってもらいます。


「うーん、このニンジンとレンコンのチップは特においしかったので、これ単体のをいくつか買って、後は色々なお野菜が入ったのをいくつかと、……そうだ!ホルスターちゃんと一緒に食べる用に果物のやつも買いましょう」


 自分が欲しいものだけではなく、ホルスターちゃんとの分も買います。


 え?銀はホルスターちゃんのことをどう思っているかですって。

 もちろん、銀はホルスターちゃんのこと大好きですよ。

 だって、ホルスターちゃん、とっても銀に甘えてくるんですもの。

 まるで弟みたいでとってもかわいいですよ。


 銀はお姉さんはいるのですが、下の妹や弟はいないのでずっとほしかったのです。

 だから、ホルスターちゃんがいてくれて銀は幸せですよ。


 さて、買うものも決めたので、後はヴィクトリア様に買ってもらうだけです。


★★★


 お店を出た後は、馬車の中でお菓子パーティーです。


「さあ、皆さん、たくさん食べましょうね」


 ヴィクトリア様が音頭を取って、皆で食べます。


「おいしいですね」

「エルフの国まで来たかいがありました」

「最高だね」


 ヴィクトリア様たちはおいしいお菓子が食べられて満足そうです。


「本当、おいしいです。これならホルスターちゃんも気に入ってくれそうです」


 もちろん、銀もお気に入りのお菓子がたくさん食べられて、大満足です。


 そうやってお菓子を食べながらも、ヴィクトリア様たちは女子トークを続けます。


「しかし、こうやってみんなでお菓子を食べるのも悪くありませんが、夜寝る前にベッドの上で旦那様と二人で食べるのもいいですね」

「それもいいですけど、ワタクシは野宿の時に、見張りをしているホルストさんの横へ行って一緒に食べるシチュエーションが好きですね」

「アタシはどちらかというとエリカちゃん派かな。外だとちょっと落ち着かないから部屋の中がいいな」


 どうやら、今日の議題はホルスト様と二人きりでお菓子を食べるならどこがいいか、ということらしいです。


 銀はまだ子供ですのでヴィクトリア様たちのおっしゃるような異性として好き、ということの意味はまだよく理解できないのですが、お三方がホルスト様について楽しそうに話しているのを見ると、何となく楽しそうだな、というのはわかります。


 銀も大きくなったら、皆様と同じように男の子を好きになるのでしょうか。

 他の女の子と一緒に好きな男の子について話すことはあるのでしょうか。

 将来どうなるかはよくわからないですが、皆様を見ていると、何となく羨ましいなと思います。


 そんなことを考えていたら、何となく外の景色を見たくなりました。

 ヴィクトリア様たちを横目に馬車の窓から外を眺めると、小さいエルフの男の子と女の子が木の上で並んで座って、一緒に木の実を食べているのを見えました。


 それを見て、銀はもうちょっと大きくなったら、ホルスターちゃんとあんな風に木の上で一緒にお菓子を食べたいなと思いました。


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