今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第210話~エルフの国での初仕事! ウィンドウの町の冒険者ギルドにて~
第210話~エルフの国での初仕事! ウィンドウの町の冒険者ギルドにて~
『ウィンドウの町』。
『エルフガーデンの町』を出てから、街道沿いにずっと進んで到達できるエルフの国初めての町である。
「うわー、エルフだらけですね」
町に入って早々ヴィクトリアが当たり前のことを言う。
当然だ。
ここはエルフの国。
普通の人間も住んでいるが、エルフの方が圧倒的に人数は多いのだから。
そんな大勢のエルフたちの間を縫って馬車を進めていると。
「ちょっと、馬車を止めてください」
何やら見つけたらしいヴィクトリアが声を出す。
それで、俺が馬車を止めると、
「銀ちゃん、行こっか」
「はい、ヴィクトリア様」
銀と二人、スタスタと馬車を降りて歩いて行く。
何だろうと思ってみていると。
「ここです、ここ」
二人は1軒の店に入って行った。
店の看板には、『野菜チップス・ドライフルーツ オーガニック』と書かれていた。
★★★
「ふむ、どうやら有名な野菜チップやドライフルーツのチェーン店らしいね」
リネットがエルフの国向けの観光ガイド本を見ながら、俺にそう説明してくれる。
リネットの話によると、ヴィクトリアの入って行った店は結構有名なお店らしかった。
各種の野菜類のチップスやドライフルーツなどを作って売っているらしく、エルフの国へ行くのならこれは絶対に食っておくべきだというものらしかった。
「そういえば、ヴィクトリアさん。まだ王国にいたころから、『エルフの国へ行ったら、これ食べてみたいです』とか、ずっと言っていましたからね。だから、いざ現物を目の前にして、居ても立ってもいられなくなったんだと思いますよ」
ふーん、だからヴィクトリアの奴、見るなり急いで飛び出していったのか。
というか、あいつ、エルフの国には仕事で来ているはずなのに、遊ぶことばかり考えていやがったのか。
本当にしょうがない奴だな。
俺はそう思ったが、もちろん口には出さない。
なぜなら。
「旦那様、私もちょっと行ってきます」
「アタシも」
と、エリカとリネットも俺を置いて件のお店へ行ってしまったからだ。
その二人の顔を見ると、自分たちも行きたかったという顔をしていた。
多分、ヴィクトリア同様二人もエルフの国の観光ガイドをじっくりと読んでいたらしくこの店のことも楽しみにしていたようなのだ。
だから、ここで何か言ったら俺の方の立場がまずくなる。
ということで、俺は4人が買い物を終えるまで、おとなしく馬車の中で待つことにしたのだった。
★★★
「このバナナチップス、とっても美味しいです」
「私は、この野菜スティックが食べやすくていいですね」
「アタシはこのオレンジとブドウのドライフルーツがお気に入りかな」
「銀は、この人参とレンコンの野菜チップスがおいしいと思います」
あれから30分後。
馬車の中では、嫁ズと銀が買ってきたお菓子を食っていた。
みんな、飛び切りの笑顔で食べているので、とてもおいしかったのだと思う。
俺はそれを見て、とてもうれしかった。
嫁たちの機嫌がよいと、俺へのサービスも良くなるからな。
確か、今日はエリカの日だったから期待しておくとしよう。
と、そんなことを考えていると、目的地に着いた。
「おい、目的地に着いたぞ。一旦、おやつは中断して、仕事だぞ」
「「「「は~い」」」」
馬車の中からいい返事が返ってきたので、俺は馬車を停め、嫁たちを連れて目的の建物の中へと入る。
建物の看板には、『冒険者ギルド ウィンドウ支部』と書かれていた。
★★★
「こんにちは。冒険者ギルド、ウィンドウ支部へようこそ。本日はどういったご用件でしょうか」
冒険者ギルドの受付に行くと、銀髪のエルフの女性職員さんが俺たちを出迎えてくれた。
美形が多いと言われるエルフの中でも美人な方だと思う。
もっとも、だからと言って俺は油断して職員さんに見とれたりしない。
何せ、俺の背中を嫁さんたちの6つの瞳がジッと見ているからな。
油断してデレデレしたりなんかすると、後で泣かれる。
そうなると、なだめるのに一苦労だ。
ということで、今回も用件を手短に言う。
「実は、旅の途中で手に入れた魔物の素材を売りたいのだけれど」
そう用件を告げる。
今回俺たちが冒険者ギルドに寄ったのは魔物の素材を売るためだ。
こういうのは、本来商業ギルドで売るのが普通なのだが、ここのようにそんなに大きくない町だと冒険者ギルドが商業ギルドの仕事を兼務していることも多い。
ということで、こうして冒険者ギルドに来たのだった。
「買い取りですか?それでは、ギルドカードをご提示願えますか?」
「わかった」
俺は職員さんに言われるままにギルドカードを取り出し、職員さんに渡す。
途端に職員さんが驚いた顔になる。
「え?Sランク?お兄さん、Sランク冒険者なんですか?」
「ああ、そうだよ」
「私、Sランクの冒険者なんて初めて見ました。これは、是非ギルドマスターにお知らせしなければ」
そう言うと、職員さんはすっ飛んでどこかへ行ってしまった。
あれ、商品の買取は?
と、俺は思ったが、肝心の職員さんがいなくなったので、どうしようもなかった。
★★★
「ウィンドウの町の冒険者ギルドへようこそ。私、ギルドマスターのコンドルと申します」
20分後。
俺たちはウィンドウの町のギルドマスターのコンドルさんと対面していた。
コンドルさんはエルフらしく整った顔立ちの人だったが、線の細い人が多いエルフの男性の中では筋骨隆々としたがっちりとした体格の人だった。
一応、現役時代はBランクの冒険者で、戦士をしていたらしい。
だから、今でもがっしりした体格を維持できているのだと思う。
「あなたが噂のホルスト殿のパーティーですね。ご活躍のほどは聞いておりますぞ」
どうやらコンドルさんは俺たちのことを聞いているらしい。
さすがギルドマスター。
話が早くて助かる。
「ところで、今回はこんな田舎のギルドへどういったご用件で参られたのですか」
「いや、特別な用件というわけではなく、エルフの王都へ行く途中に、魔物の素材を売って旅費の足しにしようと思っただけなのです」
「ほほう、左様ですか。して、何をお売りに?」
「一応、こちらの方では防具の素材にビッグアリゲーターの皮とかが重宝されているとか聞いておりますので、そういうのを売っておこうかなと。後、ここまでの道中で魔物を倒しましたので、そういうのも売ろうかと」
「そうですか。して、売れましたか」
「いや、それが交渉中にこちらの職員さんが是非コンドルさんに会ってほしいということで。まだ売ってはいません」
それを聞いて、コンドルさんが驚いた顔になる。
「それは失礼しました。すぐにでも、交渉の続きを……」
それに対して俺は手を振る。
「別にそんなに急いでお金がいるわけではありませんので、帰りでも大丈夫です」
俺の言葉を聞いてコンドルさんがホッとした顔になる。
それからは雑談をした。
「お茶をお持ちしました」
さっきとは別の女性職員さんがお茶とお菓子を持ってきてくれたので、それらを食べながらお話した。
コンドルさんは元冒険者らしく俺が倒してきた強力な魔物のことを聞いてきたのでそういうのを話すと、とても喜んでくれた。
ある程度話して、そろそろ帰ろうという頃になって、コンドルさんがこんなことを言い始めた。
「ところで、ホルスト殿」
「何でしょうか」
「実は我がギルドは一つ大きな問題を抱えておりまして」
「そうなのですか?」
「はい。それで、ここでホルスト殿と知り合えたのも何かの縁。私どもに協力してもらえないでしょうか」
「一応、お話を聞かせてもらえますか」
一瞬どうしようかと俺は迷ったが、全然話を聞かずに断ったりするのはどうかと思い、コンドルさんの話を聞いてみることにした。
……その結果。俺たちはコンドルさんの頼みを引き受けることになったのであった。
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