今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第179話~ヴァンパイアとの死闘! そして、ヴァンパイアの遺言~
第179話~ヴァンパイアとの死闘! そして、ヴァンパイアの遺言~
神意召喚を起動させた俺はヴィクトリアから離れるとすぐに状況を確認する。
『神属性魔法』
『神強化+4』
『天火+4』
『天凍+4』
『天雷+4』
『天爆+4』
『天土+3』
『天風+3』
『重力操作+3』
『魔法合成+2』
『地脈操作+2』
『空間操作+3』
『世界の知識+2』
それを見て、俺はあれ?と思った。
ジャスティスから『天の行』の修業を受けたので『神強化』の熟練度が上がっているのは予想通りだったのだが、新しい魔法こそ増えなかったもののすべての魔法の熟練度が上がっていた。
なぜだろうと思って、推察してみるとあることに思い至った。
そう言えば、ジャスティスは『天の行』とは神の力を使うための修業だと言っていた。だから、他の『神属性魔法』の熟練度も一緒に上がったんだ。これらの魔法も神の力を使うものだから。
うん、ジャスティスとの修行はかなり役に立っていたようだ。
俺は素直にジャスティスに感謝した。
さて、状況も確認できたことだし、いざヴァンパイアを叩き潰すとするか。
★★★
「『世界の知識』」
まず、俺は目のヴァンパイアの情報を探ってみる。
『ヴァンパイア(真祖)』
生まれつきヴァンパイアとして生まれてきた純粋な種族としてのヴァンパイア。
かなりの怪力の持ち主で、変身能力も持つ。
魔力が高く様々な魔法を使う。特に、人や動物を操る魔法が得意である。
防御力も高く、生中な攻撃では傷をつけることはできない。
太陽の光、聖属性攻撃、炎攻撃、銀武器での攻撃に弱い。
……と結構いろいろ書いてあるな。参考にはなる。
うん、こうしてみると結構弱点があるな。
なら、こういう攻撃から行ってみるか。
「『天土』」
俺は魔法で無数の銀の槍を作り出すと、ヴァンパイアに向かって放つ。
「ぎゃあああ」
銀の槍はいい感じで命中して、ヴァンパイアが絶叫を上げる。
もちろん、ヴァンパイアもやられっぱなしであるわけがなく、反撃してくる。
「死ぬがよい!」
羽をはばたかせ、真空の刃の嵐を放ってくる。
「『防御結界』」
だが、ヴィクトリアが魔法ですぐに防御したので、俺たちは無傷だった。
ただ、真空の刃に巻き込まれた周囲の建物は真空の刃でバラバラに切り裂かれて崩壊してしまったが。
「『天土』」
真空の刃による攻撃が収まったところで、俺はもう一度銀の槍を放つ。
「二度も同じ攻撃が通用するか!」
だが、今度は俺が放った槍に対して向こうも真空の刃を放ってきて、攻撃を相殺されてしまった。
やはり、二番煎じは通じないか。
仕方ないので、俺は次の手を打つことにする。
「みんな、ちょっと待っていろ」
俺はみんなから離れ、空を飛び、ヴァンパイアの前に立つ。
そして魔法を放つ。
「『魔法合成』」
★★★
俺は前々から考えていた。
魔法合成では2つの魔法しか合成できないのか、と。
前に試した時はできなかった。
ヴィクトリアに相談してみたら、
「『魔法合成』の熟練度が足りないんじゃないですか」
と、人が真剣に相談しているのに、ソファーの上でお菓子を食べつつ、寝そべったままの体勢で、適当なことを言われた。
その時は、こいつ真剣さが足りないな、と腹が立ったものだった。
しかし、熟練度が上がった今ならわかる。
そのヴィクトリアの言こそ正解だった、のだと。
「『魔法合成』、『天火』と『天土』、『天風』の合成魔法。『瞬息の炎の銀槍』」
炎をまとった銀槍が恐ろしい速度でヴァンパイアめがけて飛んでいく。
「無駄だ!」
今度もヴァンパイアが真空の刃で槍を止めようとするが。
「なに?」
今度は槍を覆っている風の膜がヴァンパイアの真空の刃を打ち消してしまい、止めることができなかった。
ドス、ドス、ドス。
次々に槍がヴァンパイアに命中していく。
「きゃあああ」
槍が命中するたびにヴァンパイアが悲鳴を上げ、大量に失血した挙句、負傷個所から炎が上がり、全身をむしばもうとしていた。
今だ!
俺は決着をつけるべく、ヴァンパイアに一気に迫っていく。
★★★
「『3属性付与』」
俺はヴァンパイアに近づくと同時に、武器に属性を付与する。
今回は、火、聖、土(銀)の3属性を付与する。
実は何気に3つの属性を武器に付与するのは今回が初めてだ。
『神強化+3』の時も試したができなかった。
そして、今はできるようになった。
これで攻撃の幅が一気に広がったというわけだ。
武器を強化した俺は一気にヴァンパイアのはるか上空まで飛ぶ。
ヴァンパイアの攻撃を俺に集中させて、なるべく市街地に被害が及ばないようにするためだ。
俺が上空に移動すると、予想通り、ヴァンパイアが俺めがけて魔法を放ってくる。
「『黒火炎』、『大爆破』」
もちろん、そんな攻撃が俺に通じるはずもなく、俺はさっと避けた。
ドン。
俺が避けた魔法は空中で発動し、強烈な衝撃波が周囲に広がる。
これって、町中に放たれていたら、今頃大惨事だったじゃないか。
俺はヴァンパイアの魔法の威力に今更ながらゾッとする。
改めて早くこいつを始末してしまおうと思う。
「『重力操作』」
魔法を使用して、一気にヴァンパイアに迫る。
「おのれ!」
ヴァンパイアが魔法で俺を迎撃してくるが、どれも俺をとらえることはできない。
「これなら」
一か八か、爪を巨大化させて攻撃してきたりもしてきた。
さっき屋敷のでやって来た攻撃の焼き直しだったが、これが中々鋭かった。
「おっと」
かわすのは難なくできたのだが、かわした爪が民家に直撃し、民家を真っ二つにしてしまった。
未関係な人間に被害が出る!
そう思った俺は2撃目は避けなかった。
ガキン。
俺のクリーガとヴァンパイアの爪がぶつかり合う。
もちろん勝ったのは……。
「よし、爪を叩き切ったぞ!」
俺の方だ。爪を切られたヴァンパイアが体勢を崩す。
その隙をつき、ヴァンパイアの懐に一気に飛び込む。
「地獄に落ちろ」
そしてクリーガを思い切り横に薙ぎ払い、ヴァンパイアの胴を真っ二つにしてやる。
「ぎゃあああ」
ヴァンパイアが絶叫を上げる。別れた体のパーツが燃え上がる。
下半身の方は一瞬で燃え上がり灰になったが、上半身の方は多少頑丈なのか一気には燃えず、少しずつ灰になって行っている。
「終わったか?」
これで、終わりかなと思った俺は戦闘態勢を解こうとした。
その時。
★★★
「おのれえ」
ヴァンパイアの残った上半身が動き始めた。
体を炎で焼かれつつあるのにまだ動けるとか、すごい生命力だ。
上半身は残った羽をはばたかせて上空へ飛び立つと、大声で叫ぶ。
「こうなったら、この町の人間のエネルギーを吸い尽くしてやる。奥義『大血壊だいけっかい』」
ヴァンパイアが叫びながら両手を上にあげると、上空に赤い塊が出現する。
それを見て、ヴィクトリアが大声で叫ぶ。
「ホルストさん、大変です!あのヴァンパイア、この町に大規模なエナジー・ドレインを仕掛けようとしています。何とかしないと、町の皆が死んでしまいます。何とかしてください」
何とかしろと言われても……どうすればいいんだ。
俺は困ってしまった。
と、そこにジャスティスがアドバイスを寄こしてくる。
「弟子一号よ。よく聞くのだ。お前は今その刀身に属性を付与しているだろう?」
「はい、していますが」
「その状態で、必殺剣を放つのだ。かなり高度な技術だが、今のお前にならできるはずだ」
「属性を付与したまま必殺剣を放つ?そんなことが……」
「私が保証する。その技ならばヴァンパイアの企みを粉砕できるだろう。さあ、放て!」
「はい!」
俺はジャスティスの指示通りに武器を構える。
「『3属性付与 究極十字斬』」
そして、必殺剣を放つ!
ビュビュビュ。
放たれた必殺剣はいつもと手ごたえが違った。いつもより威力が高い気がした。
「ぎゃああああ」
そのまま直進した必殺剣はヴァンパイアと赤い球体を粉砕した。
砕かれた上半身と球体は一瞬で蒸発し、ヴァンパイアの首だけが地面に落ちていくのが確認できた。
「あの首を放っておくのは危険だな」
そう判断した俺はヴィクトリアに声をかける。
「ヴィクトリア、後はお前の『聖光』の魔法でとどめを刺せ」
「ラジャーです」
ということで、ヴィクトリアを連れてヴァンパイアの首の所へ行く。
「うう……」
近づいてみると、驚いたことにまだ首は生きていた。
ぶつぶつと何かつぶやいている。本当にすごい生命力だ。
まあ、いい。それもこれで見納めだ。
「ヴィクトリア、やれ!」
「『聖光』」
ヴィクトリアが魔法を放つと、ヴァンパイアの顔が徐々に薄くなっていく。
それを見て、俺はようやく終わったなと、事件の終了を実感できた。
だが、ここで。
「我が神よ。申し訳ありません。あなたのためにブラッドソードを作ろうとしたのですが、失敗してしまいました。お許しください」
ヴァンパイアが消滅間際、そんなことをほざきやがった。
て、いうか、ブラッドソードって何?お前、何しようとしていたの?
俺は詳しい話を聞き出そうとして、ヴィクトリアを止めようとしたがもう遅かった。
「ふっ」
最後にそんな不敵な笑みを残して、ヴァンパイアは跡形もなく消えてしまった。
この野郎!最後に意味深なこと言いやがって。絶対、俺が悔しがると思ってわざとやっただろう!
消えたヴァンパイアの首があった所を蹴り飛ばしながら、俺は地団太を踏んで悔しがるのだった。
★★★
「それでは後はお願いします」
「畏まりました」
諸悪の根源であった吸血鬼を倒したので、事後処理を警備隊の人に頼んで帰ることにした。
警備隊の人の報告によると、ヴァンパイアのせいでいくつかの建物が崩壊したが、犠牲者は出なかったとのことだ。
建物はともかく、人に犠牲者が出ずによかったと思う。
警備隊の人もそう思ったらしく、
「あれだけのヴァンパイアを相手に犠牲者無しとか、さすがですな」
と、褒めてくれた。
それはともかく。
「嫌だ!ヒッグス家の屋敷とか行きたくない!」
捕まえた妹をヒッグス家の屋敷に連れて行くので俺は忙しかった。
「うるせえ!修道院を脱走した挙句、ヴァンパイアの手下なんかやりやがって、お前のようなやつは帰って説教だ!」
「脱走はともかく、ヴァンパイアの手下とか、記憶がないんですが」
「黙れ!記憶があろうがなかろうが、お前が手下であった事実は覆らないんだ。その件で俺は明日から関係各所に頭を下げて回らなきゃあらないんだぞ!全部お前の勝手な行動のせいだからな。来ないというのなら、縛り上げて強制連行だ。その場合、王都の人たちに縛り上げられたお前の情けない姿を見てもらうことになるが、そっちの方がいいか?」
「うう……おとなしくついて行きます」
こうして、俺は妹をヒッグス家の屋敷に連れて行くことにした。
ちなみに、妹の友達のフレデリカとかいう金髪の子はおとなしくついてきた。
「よろしくお願いします」
そう礼儀正しいセリフを言っておとなしくついてきた。
妹の友達にしては礼儀正しい子だと思った。
ただ、少し気になったのは話す時に彼女の顔が赤かったことだ。
色々あったから疲れて熱でもあるのだろうか。
医者でも手配してみてもらおうかと思う。
さて、今日はたくさんのことが一度に起きて疲れた。
「みんな、帰るぞ」
こうして、仕事を終えた俺たちは帰路に着いたのだった。
★★★
家に帰った後、俺は考えた。
「あのヴァンパイア、何を考えているのだろう」
先程から何度もそう独り言をつぶやいている。
あのヴァンパイアの最期の言葉が気になって仕方がないからだ。
神?ブラッドソード?
あのヴァンパイアはそんな遺言じみた言葉を残して消えて行った。
「ブラッドソードは生物の生命エネルギーを吸収する魔剣です」
ヴィクトリアに聞いたらそんなことを教えてくれた。
それを知ると、ヴァンパイアのやつ恐ろしいものを作っていたんだなと思うが、
同時に一つの疑問が湧く。
「生命エネルギーを吸収することのできるヴァンパイアが、何でブラッドソードなんかを欲しがるんだ?」
本当に訳が分からなかった。
もしかしたら、ヴァンパイアの言っていた神とやらが関係あるのか?
とすれば、その神は相当な邪神ということになるが、この世界にそれほどの邪神がいるのだろうか?
そこで俺は思い出す。俺たちも相当な邪神の復活を阻止しようと動いていることに。
「まさか、ヴァンパイアの言う神って、俺たちが関わっているのと同じ存在なのか?」
俺の中でそんな考えが浮かんでくるが真相は分からない。
証拠がなさすぎるからだ。
まあ、いい。この先嫌でも邪神と関わって行くことになるのだから、そのうち何かわかる可能性もある。
そう考えると、急に気が楽になった俺は横になる。
そして、明日以降の妹がやらかしたことの後始末に備えて、ゆっくりと休むのだった。
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