閑話休題23~その頃の妹 逃亡編~
レイラ・エレクトロンです。
その日も私は朝から厳しい修行に耐えていました。
「シスターレイラ。また朝食のパンを一個ちょろまかしましたね。罰として、滝行に行ってきなさい」
「はい」
「シスターレイラ。今度は後輩の子に水くみの仕事を押し付けましたね。罰として、居残って聖書の写経をしなさい」
「はい」
そうやって、朝から厳しい修行にいそしんでいました。
えっ?何か余計な修行を増やしてないかって?
そんなことはないです。
私は単に修行を効率的にやろうとしただけです。
そのためには少しでもお腹をいっぱいにしなければならないですし、水くみなんか真面目にしてたら午後の授業中に眠くなって集中できません。
だから後輩の子にかわりにやってもらっただけの話です。
だというのに、修道院長を始めここの年寄り共の嗅覚の鋭いことといったら……。
犬以上です。
すぐに見つかってしまいます。
本当にねちこいと言ったらありゃしないです。
何で年を取ったら人間頭が固くなるなるのでしょうか。
嫌ですね。ああはなりたくはないですね。
え?お前が真面目に生活すれば怒られたりしないだろうって?
あーあー、聞こえません。
そもそも私は真面目にやっているのです。
ちょっと効率的に生活しようとしただけなのです。
古臭い修道院の因習にとらわれず生きようとしただけです。
頭の固い修道院長たちにはそれが分からないだけなのです。
本当困った人たちです。
ああ、早くこんな所から出たいなあ。
★★★
「レイラ、例の物が届いたよ」
そんなある日、悪友のフレデリカが私の所へやってきました。
「本当?見せて、見せて」
私はフレデリカにその荷物とやらを見せてもらいました。
「あら、結構素敵じゃない」
私はフレデリカら受け取った荷物を見て、うっとりしました。
それは一着の、何の変哲もない服でした。
本当に普通の服で、そこらの村娘が着ているような地味なやつです。
正直、都会育ちのお嬢様である私に似合うような代物ではありませんが、それでも今着ているこのダサダサのシスター服よりは大分マシです。
それにこの服は私にとっての切り札でもあります。
何のかって?
それは……。
「レイラ、こっちも見てみて」
と、ここでフレデリカがもう一つの切り札を出してきました。
それはカツラ、いやその言い方はダサいのでウィッグと呼びましょう、一つのウィッグでした。
早速被って、手鏡で見てみます。
「うん、これなら修道院の子には見えないわね」
私が被ったウィッグは、顎下くらいの長さのボブカットのものでした。
ちょっと長さが短くて、前髪もパッツンとしているので、ちょっと子供っぽく見えますが、まあ、ここから逃げるために変装する分には十分でしょう。
そう。私とフレデリカがこんな服やウィッグを調達した理由。
それはここから逃げ出すための変装道具でした。
「ふふふ、これなら成功しそうね」
「そうだな。ふふふ」
私とフレデリカは一緒になってほくそ笑みます。
さて、準備は整いました。
後は逃げ出すだけです。
★★★
「みんな、寝たね」
「ああ、じゃあ決行するよ」
その日の晩、私たちは早速逃亡を試みました。
まあ、『思い立ったが吉日』、『善は急げ』という言葉もあることですし、こういうことはさっさとやってのけるのがいいと思います。
まず、このダサいシスター服を脱ぎ、村娘の服を着ます。
そして、星明りを頼りに手鏡を見ながらウィッグを被ります。
「これで、準備オーケーですね」
「それじゃあ、行こうか」
私たちは部屋の他の子たちを起こさないようにそーっと部屋を出ます。
そして、不寝番の修道女に見つからないように修道院の外へ出ることに成功します。
「さあ、後はこの山道を下るだけだ」
「ええ、この先に私たちの輝かしい未来が待っているんですね」
私たちは手を取り合い、喜び勇んで山道を駆け出します。
この時の私たちは知りませんでした。
この先の私たちに待ち受けている過酷な運命を。
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