閑話休題22~混浴しましょう~

「お二人とも覚悟はいいですか?」


 もう数日で王都へ向けて出発するという頃。

 アタシ、リネットとヴィクトリアちゃんはエリカちゃんに呼び出された。

 場所は最近ヒッグスタウンで流行っているというケーキがおいしいと評判のカフェだ。


「私はチョコレートケーキと紅茶を」

「ワタクシはチーズケーキとアップルティーを」

「アタシはモンブランとハーブティーで」


 席に着いて、それぞれ商品を注文した後、エリカちゃんに冒頭の一言を言われたというわけだ。


「覚悟かい?」

「覚悟ですか?」


 アタシたちが聞き返すと、エリカちゃんは大きく頷いた。


「そうです。あなたたち、旦那様と子作りをする覚悟はできましたか?」


 子作り。

 その言葉を聞いて、アタシとヴィクトリアちゃんの顔が一瞬で真っ赤かになる。


 それを見て、エリカちゃんが叱咤激励の言葉をかけてくる。


「何をそんなに恥ずかしがっているのですか。夫婦なら子作りとか普通にすることですよ。そんなに恥ずかしがることではないですよ」


 それに対して、アタシとヴィクトリアちゃんは大きく首を横に振りながら言う。


「いや、そう言われても恥ずかしいものは恥ずかしいよ」

「その通りです。ワタクシも恥ずかしいです」


 それを見て、今度はエリカちゃんがふうとため息をつく。


「あなたたち、私があれだけ手を尽くしてあげたというのに、まだ恥ずかしいとか言い訳をしているのですか」

「「えー、でも」」

「でも、ではないですよ!」


 アタシたちがまだ言い訳するのを見て、とうとうエリカちゃんが怒り始めた。


「あなたたち、旦那様の子を産んで共に頑張ると私に言ったではないですか。あれは嘘だったのですか?」

「嘘ではないです。ワタクシたちもホルストさんの子供、産みたいです。ただ、実際に……となると」

「ちょっと、怖いという意識が出てくるんだよね」

「ふう」


 アタシたちの言い訳を聞いて、再びエリカちゃんがため息をついた。


「まあ、気持ちはわかりますよ。私も旦那様と初めての時は……。でも、あなた方の気持ちはわかりました。仕方ないですよね。人間、何でも初めての時は怖いですものね」


 そして、エリカちゃんはアタシたちのことをチラチラ見ると話を続ける。


「まあ、慣れてきたら自分から旦那様におねだりするようになりますよ。何せあれは気持ちいいですからね。あなたたちも早くそうなるといいですね」


 あ、エリカちゃんが壊れた。

 なんか変なことを言い始めた。

 あれが気持ちいいとか言われても、未経験なアタシたちにはよくわからなかった。


 だから、たじたじになるしかなかった。


 そこへ、ちょっと言葉を間違えたかなと思ったのだろう、エリカちゃんがフォローしてくる。


「と、あなたたちにはまだわからなかったですね。まあ、いきなりあれをするのにためらいがあるというのなら、今回は別のことにチャレンジしますか」

「別のこと?」

「一体、何ですか?」

「旦那様とお風呂に入りましょう」


 お風呂に一緒に入る。

 それを聞いて、アタシとヴィクトリアちゃんの顔が再び真っ赤になる。


「お風呂?」

「あの、本気ですか」

「本気ですよ」


 アタシたちの問いに対して、エリカちゃんはしれっと返してくる。


「まあ、いきなり裸で一緒に入れと言っても、ちょっと無理そうですから、今回はタオルを巻いてもいいですよ」


 裸でなくてもよいと言われて、アタシたちはちょっとだけ安心した。


「お待たせしました。ご注文の品をお届けしました」


 ちょうどその時、注文していた商品が来た。

 アタシたちはそれを飲んで一旦落ち着いてから話を再開する。


「ということで、今日はこれからいろいろ指南してあげますので、話が長くなると思いますが、これも旦那様とうまくやるためです。覚悟してくださいね」


 そして、その後、アタシたちはお風呂に入る時、どうすればホルスト君が喜ぶのかとか、寝る時にどうすれば、より親密になれるのかとか、いろいろ教えてもらったのだった。


 うん、参考になった……のかな?

 こればっかりはやってみないとわからないと思った。

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