第155話~二人との添い寝~
「ようやく、二人にちゃんと告白してきたみたいですね」
エリカにヴィクトリアとリネットに告白してきたことを報告すると、エリカはようやく納得したような顔になった。
「それで、二人は旦那様のことを受け入れてくれましたか?」
「ああ、二人とも俺のことが大好きだと言ってたぞ」
「それはよろしゅうございました。それでは、旦那様たちには次のステップに移っていただくことにしましょうか」
「次のステップ?」
いぶかしがる俺に、エリカはズバリ言ってくる。
「ええ、旦那様には二人のことを抱いてほしく思います」
「抱く?!」
エリカの発言に俺は驚き慌てふためいた。
「旦那様、何を慌てているのですか?今までだって、私のことを散々抱いてきたではないですか。この程度、慌てることではありませんよ」
「でも、お前……」
「それに、二人もまだ心の準備が完全にはできていません。だから、抱くと言っても、とりあえず同衾、つまり添い寝してあげてください」
「添い寝?……添い寝かあ」
添い寝と聞いて大分ハードルが下がった俺は、ホッとするのだった。
「それでは、旦那様。私が手配しますので、二人と寝てあげてくださいね」
ということで、俺はヴィクトリアとリネットと添い寝することになった。
★★★
それから数日後。
俺は添い寝することになったのだが……。
これは一体どういうことだ!
エリカに言われて、指定された部屋に入っていった俺は驚愕した。
指定された部屋には、人が5人くらい寝られる大きなベッドが置いてあったのだが、その上には……・。
「ホルストさん、今日はよろしくお願いします」
「ホルスト君。今日はよろしく頼む」
何と、ヴィクトリアとリネットの二人が正座して座っていた。
添い寝するのはいいけど、二人同時とか聞いてないよ。
俺は非常に困惑するのだった。
しかし、今更逃げることはできない。
「ああ、よろしく頼む」
俺はおとなしく二人の側に座るのだった。
その後、しばらくは3人とも言葉を発せず静かなままだったが、そのうちにヴィクトリアが最初に動いた。
「なんか、落ち着きませんね。何か飲み物でも用意しますね」
そう言って立ち上がると、すぐ側に置いてあった食器棚から飲み物を取ってきた。
「これしかなかったけど、構わないですよね」
そう言いながらヴィクトリアが持ってきたのは、ワインのボトルだった。
「ああ、いいよ」
「アタシも構わないよ」
「では開けますね」
ヴィクトリアがスポットコルクのふたをワインのボトルから抜き、グラスに注ぐ。
「「「いただきます」」」
そして、3人で一斉にそれを飲む。
酒に逃げると言えば聞こえが悪いが、酒を飲んだおかげで大分気持ちが落ち着いた。
酒を飲みながら二人を観察すると、二人の様子が普段と大分違うことに気が付いた。
何というか。なまめかしいな。
二人とも非常に色っぽかった。
二人とも下着が透けて見えそうなくらい布地が薄く露出の多い服を着て、薄っすらと化粧をしていた。
そして、その格好で恥ずかしそうに下を向いていた。
それを見た俺は心の中に熱いものがこみあげてくるのを感じた。
「「「ごちそうさまでした」」」
だから、そうやってワインを飲み終わると同時に、二人の肩に手を伸ばして、俺の方に抱き寄せた。
「「ひゃっ」」
俺に抱き寄せられた二人が短く悲鳴を上げる。
だが、俺はそれを気にも留めず、そのまま二人とともにベッドに横になる。
横になると、俺は二人に命令する。
「お前ら、俺のほっぺたにキスしろ」
「「キス?!」」
キスと聞いて二人が固まってしまった。
しばらくの間、二人はそのまま固まっていたが、やがて……。
「し、仕方ないですね」
「仕方ないな」
硬直が解けた二人が俺にキスをしてきた。
ブチュ。ブチュ。
二人の唇の暖かさが同時に伝わってきた。
俺は十分に満足した。
しばらくその余韻を楽しんだ後、二人を抱き寄せたまま、布団の中に潜り込む。
「さあ、それでは寝るか」
「「はい」」
そして、その晩、俺は二人の暖かさを感じながら心地よく眠るのだった。
★★★
「そうですか。うまく行きましたか」
旦那様にヴィクトリアさんとリネットさんの二人を添い寝させた翌日。
私エリカ・エレクトロンは二人から報告を受けました。
「でも、昨日はあまりよく寝られませんでした」
「アタシも」
ただ、二人ともあまりよく寝られなかったようです。
当然です。
血のつながっていない男性と恋人関係前提で寝るのは二人にとって初めてなのですから。
私も駆け落ちしたとき、初めて旦那様の横で寝た時は、緊張して寝られなかったものです。
「まあ、これでまた一歩前進ですね。ということで、次の目標は……言わなくてもわかっていますよね?」
「「はい」」
「それでは、最終目標に向けて頑張りましょう。エイ、エイ、オー」
「「エイ、エイ、オー」」
最後に3人で一致団結したところでこの議題は終わりました。
★★★
俺がヴィクトリアとリネットの二人と添い寝してから数日後。
「スーザン、元気でやるんだよ」
「ああ、リネットお姉さま、本当に行ってしまわれるのですね」
俺たちがとうとうドワーフ王国から離れる日が来た。
俺たちの見送りには、宰相、セリーナさん、スーザンさんたちとその使用人であるグローブさん、コリンナさんたちが来てくれた。
見送りに来てくれた人たちは、みな一様に寂しそうな顔をしていた。
「まあ、皆さん、これで別に永遠の別れというわけではないのですから、最後は笑って別れましょう」
このままでは埒があきそうになかったので、最後はエリカがそう音頭を取って、笑って別れることになった。
「皆様、お元気で」
「またねえ」
最後はお互いに手を大きく振りながら、笑顔で別れた。
「さて、これでアリスタ様の依頼も一つ片付きましたね」
「ああ、そうだな」
「では、次も頑張って、そのうち暇ができたら、またここに遊びに来ましょう」
「「「「はい」」」」
全員がその意見に大きく頷いた。
これで、ドワーフ地下王国での冒険は終わり、俺たちは帰路に着いたのであった。
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