閑話休題21~その頃の妹 その2~

「もう、嫌だ!」


 その晩、私レイラ・エレクトロンは、布団の中で一人涙を流していた。

 なぜ泣いているのですかって?

 それは悪事がばれて今日の夕食を抜きにされてしまったからだ。


「シスターレイラ、これは何ですか?」


 今日の昼間、修道院長に呼び出された私は一冊のノートを突きつけられた。

 それは私が授業で使っているノートだった。


「そ、それは……」


 そのノートの一ページには、ある一枚の絵が描かれていた。

 それは私のくそ兄貴をモチーフにして描かれた鬼の絵だった。


 当然、授業中に授業をさぼって描いたものだった。

 わりあいうまく描いたと自分では自画自賛していたが、もちろん、こんなものが修道院長のお気に召すはずがない。

 目を吊り上げて追及してくる。


「これは、授業中に描いたものですか?」

「えーと、それは……」

「とぼけてもダメですよ。あなたが授業中以外はノートを触らないことは調査済みですよ」

「……はい、その通りです」


 私は渋々認めた。


「はあ、そうですか。しかし、シスターレイラ。あなたはこんなことをして世間に申し訳ないとは思わないのですか」

「……世間に申し訳ない?どういう意味でしょうか」


 妙に対象が大きかったので私は意味が分からず、思わず聞き返した。


「いいですか。シスターレイラ。あなたのそのノートは世の中の人々がなけなしのお金を当修道院に寄付してくれたお金で購入している物です。それを勉学のために使わず、そんなものを書いて、己の遊興のために使うとは一体どういうつもりですか」

「そ、それは……」


 私には、返す言葉がすぐに思いつかず、黙りこくってしまった。

 それを見て、修道院長がはあとため息を吐く。


「シスターレイラ。あなたはまだまだ修行が足りないようですね。罰として、今日の夕飯は抜きです。それと、今日は自習室にこもって、反省文を明日までに書きなさい」

「……はい」


 こうして、私はノートに落書きした代償として罰を受けることになったのであった。


★★★


「うう、お腹空いたよお」


 私はお腹が空いてたまりませんでした。

 この辛い修道院生活の中でご飯は数少ない楽しみの一つです。

 正直、メニューとしては碌でもないものです。


「うう、固くておいしくない黒パンでも、薄い塩味のジャガイモのスープでもいいから食べたいよ」


 ただ、そんなメニューでも命を繋ぐための大切なご飯です。

 それが食べられないのは、はっきり言って死活問題です。


「うう、こうなったら」


 お腹が空いてたまらなかった私は、こっそり部屋を抜け出します。

 そして、裏庭の井戸に行き、つるべを動かして、井戸から水を汲みます。


 ゴク、ゴク。

 私はその水を飲み干します。

 もちろん、すきっ腹を少しでもごまかすための行為だったのですが。


「うう、全然お腹がいっぱいにならない」


 もちろん、水を飲んだくらいで腹が満ちるわけがなく、お腹がタプタプになって終わりです。

 私は空を見上げます。


「あ、流れ星」


 すると、夜空に流れ星が流れているのが見えました。

 聞く話によると、流れ星にお願いすると、願いが叶うそうです。

 私は急いでお祈りします。


「ああ、神様。どうかお腹いっぱい食べられますように」


 そうお願いしました。

 その後は特にすることもなく、山の上だと夜は寒かったので、部屋に戻りました。


★★★


「なあ、ここから逃げないか?」

「え?」


 ある日、悪友のフレデリカがそんな風に私を誘ってきた。


「逃げるって……そんなのうまく行くわけがないじゃない」

「ふふふ、だから故郷の友人にいいものを頼もうと思うんだ」

「いいもの?何それ?」

「ひ・み・つ。到着してからのお楽しみだ。どうする?私に協力して一緒に逃げるんならレイラの分も頼んであげるけど」

「うん、もちろん協力する。私も、もうここでの生活は耐えられない」


 と、ここで私もフレデリカの話に乗ってしまいました。

 本当にここでの生活が嫌になって、少しでも早くここから逃げ出したいと思ってしまったからです。


 しかし、この時の私は、この自分の行いによってもたらされる悲劇をまだ知りませんでした。


ーーーーーーー


 これにて第8章終了です。


 ここまで読んでいただいて、気にっていただけた方、続きが気になる方は、フォロー、レビュー(★)、応援コメント(♥)など入れていただくと、作者のモチベーションが上がるので、よろしくお願いします。


それでは、これからも頑張って執筆してまいりますので、応援よろしくお願いします。

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