第150話~VS.グランドタートル~
パリン。
キングエイプの時と同様、黒い球体が破れたかと思うと、中から4魔獣のうちの1匹が顕現した。
「今度は亀か」
今度の4魔獣は亀だった。
体色は緑色で、大きさは前に戦ったキングエイプとそん色なく、蛇のような尻尾を持った亀だった。
「グランドタートル。4魔獣の中で防御最強と呼ばれる魔獣ですね」
現れた亀を見て、ヴィクトリアがそんなことを呟く。
「防御最強?」
「はい。後」
「おい、亀の奴、何か光っているぞ」
その時、リネットが大声で叫んだ。
俺がグランドタートルの方を向くと確かに奴の体、特に尻尾の部分が激しく光っていた。
それを見て、ヴィクトリアが大声で叫ぶ。
「あれは、グランドタートルの必殺技『荷電粒子砲』です。まともに食らったら一瞬で蒸発しちゃいます。早く退避を!」
しかし、その警告は少し遅かった。
「グモオオオオ」
グランドタートルの尻尾が赤く光り、『荷電粒子砲』が発射される。
やばい。このままでは直撃してしまう。
「『猪突猛進』」
すると、いつの間にか元の巨大猪の姿に戻っていたカリュドーンの猪が必殺技で仕掛けていた。
ドゴーン。と、すさまじい音とともにグランドタートルにぶつかっていく。
ビューン。
その衝撃で、『荷電粒子砲』の軌道が逸れ、荷電粒子が湖の湖面に命中する。
すると、湖の水が大量に蒸発し、ものすごい量の水蒸気が発生した。
それを見て、俺たちはまともに食らっていたらまずかったと悟った。
「ホルストさん、あの攻撃は強力ですが連発できません。エネルギーをチャージする必要があります。その間に何とかしましょう」
「ああ、わかった」
ということで、作戦を練ることにする。
★★★
とりあえず、俺は自分の頭の中を確認する。
『神属性魔法』
『神強化+3』
『天火+3』
『天凍+3』
『天雷+3』
『天爆+3』
『天土+2』
『天風+2』
『重力操作+2』
『魔法合成+1』
『地脈操作+1』
『空間操作+2』
『世界の知識+1』
うん。かなり魔法の熟練度が上がっている。『天土』と『天風』以外の攻撃魔法の熟練度が通常時でも+2になっている。これで、かなり魔法の使い勝手が良くなっているはずだ。
それに『空間操作』も熟練度が上がっている。これも地味にうれしかった。
後、何だこれ。『世界の知識』これが新しく増えているが意味が分からなかった。
だから、ヴィクトリアに聞いてみる。
「なあ、ヴィクトリア。俺の魔法のリストに『世界の知識』とかいうのが出てきたんだが」
「『世界の知識』ですか?とうとうそんなのが出てきたんですね。それは、辞典ですね」
「辞典?」
「ええ、能力の対象となった物について知ることができる能力ですね」
「そうなの?じゃあ、『世界の知識』」
俺はヴィクトリアにこの魔法を使ってみる。
「え~『ヴィクトリア:一応女神』って、これだけ?」
「って、なんでワタクシのこと勝手に調べているんですか!失礼ですよ。調べるのなら、アイテムとか敵とかにしてください。後、他人の知られたくないに対しての情報はほとんどわからないように設定されてますよ。悪用できないように」
うん。よくわかった。これ下手に使うと、いろいろなものをぶっ壊しかねないなと。
「じゃあ、亀はどうだ。『世界の知識』」
グランドタートル:4魔獣の一匹。防御最強。必殺技は尻尾から放たれる『荷電粒子砲』。そのエネルギーシールドはありとあらゆる攻撃を防ぐ。貫くには攻撃を一転に集中させる必要あり。弱点は、雷属性攻撃。
なるほど。つまりエネルギーシールドとやらをどうにかして雷の魔法をぶち込めばよい、と。
俺はグランドタートルを見る。
カリュドーンの猪の一撃を食らった後、グランドタートルの回りを透明の幕が覆っている。
多分、あれがエネルギーシ-ルドなのだろう。
ならば、作戦は決まりだ。
「みんな、聞いてくれ」
俺はみんなに作戦を伝える。
★★★
「ふう」
皆に作戦を伝えた後、俺は自分の頭の中を覗いてみる。
『神強化』を選んで、今回の作戦に最適な技がないか探ってみる。
「……あった。『一点突破』」
『一点突破』は、一撃の性能に特化した技だ。先端に全力を集中し、どんな固い装甲でも貫くことができる技だ。
「それじゃあ、俺が奴のエネルギーシールドを何とかするから、その後は、指示通りに集中攻撃だ」
「「「「はい」」」」
俺はみんなにそれだけ言うと、グランドタートルの前に陣取る。
盾を背中に背負い、クリーガを両手で持つ。
「すー」
目を閉じ、深く深呼吸する。
そして。
「『一点突破』」
グランドタートルに向かって、突撃を敢行する。
★★★
「『一点突破』」
俺はグランドタートルに向かって突撃していく。
その勢いはものすごい。
グシャ。
最初、技を開始したときに蹴った地面に小さなクレーターができたほどだ。
「キシャアア」
俺の技を危険だと悟ったグランドタートルの瞳が怪しく光る。
ボワッとグランドタートルの周囲のエネルギーシールドが、俺の攻撃に備えて厚みを増す。
そこへ俺の攻撃が接触する。
バッチーーン。
エネルギーシールドと俺のクリーガがはじけあい、巨大なスパークが発生する。
発生したスパークは周囲の地面や湖面に命中し、そこにあるものを破壊していく。
エリカたちの方にもそのスパークは行ったが、
「『魔法障壁』」
「『防御結界』」
エリカとヴィクトリアの二人が魔法で難なく防いでいた。
一方、俺とグランドタートルの方は一進一退の攻防を繰り広げていた。
ただ、俺の方が少し優勢なようだ。
「大分エネルギーシールドにひびが入って来たな」
エネルギーシールドにひびが入り、それが少しずつ広がっていっていた。
よし!行ける!
俺がそう思った時だった。
「ぐおおおお」
グランドタートルが咆哮をあげる。
「なに?」
すると再びエネルギーシールドが光り、ひびが修復され、その厚みを増す。
それとともに、俺の技が弾かれ、俺の体ごと空中に放り出される。
「きしゃあああ」
そこへグランドタートルが追撃の『荷電粒子砲』を放ってくる。
空中に放り出されたばかりなので、まともに防御体制もとることができない。
正直、俺は終わったと思った。しかし。
「『暴風』」
そんな声がしたかと思うと、俺の周囲に突如突風が起こり、俺を地面にたたきつける。
ビュー。
その時、ちょうど今まで俺がいたところを荷電粒子が通過する。
だが、俺がいなかったので荷電粒子はそのまま素通りし、湖面に命中し、再び大量の水蒸気発生させる。
どうやら、間一髪で奴の攻撃を避けられたようだった。
★★★
「旦那様、ご無事ですか?」
地面に落ちた俺の所へエリカたちが寄ってくる。
「ああ、大丈夫だ」
「よかった。私の魔法で、旦那様を敵の攻撃の軌道から無理矢理そらしましたが、どうやらうまく行ったようですね」
「やはり、あれをやったのはエリカだったか。おかげで助かったよ。ありがとう」
「いえ、当然のことをしたまでです」
いや、本当助かった。
死ぬかと思ったもんな。
まあ、それはともかく、あれで突き破れないなんてなんて頑丈なエネルギーシールドだろうか。
どうしようか。
俺が思案に暮れていると、
「『我らにお手伝いさせてください」」
ネズ吉とカリュドーンの猪がそう声をかけてきた。
「なにか手があるのか?」
「「はい」」
そう言うと、神獣2匹が俺にその手とやらを説明してくれる。
「わかった。それで行こう」
二人の作戦を聞いた俺はそれを実行すべく、再び準備を開始する。
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