第十五話 邂逅 ー参ー
Yは指の間に挟んだナイフを投げ、ルス・ソンブラ以外の男達の首に刺した。
男達は倒れ、ルス・ソンブラはじりじりと後ろに下がる。
その様子を俺は静かに見つめる。
「あ、あんたは何者なんだい?」
「知る必要なない。あと、叫んだらあんたの悪事をバラすよ?」
Yにそう言われ、ルス・ソンブラは何も知らないというような顔をし、助けを乞うた。
「何を言っているの? 悪事? 私は歌劇(オペラ)歌手よ? 何もやましいことなんてないわ!」
ルス・ソンブラを壁に押さえつけ、Yはルス・ソンブラの耳元で囁く。
「よく言うよ。あんたがやってるのは”歌劇”じゃなくて、”樂劇”(オペラ)だろ」
ルス・ソンブラはYに蹴りを入れ、脇を通って俺の方に逃げてきた。
俺は足をひっかけさせてルス・ソンブラを転ばせた。
起き上がろうとしたルス・ソンブラと俺は銃をお互いに向けた。
お互いがニヤリと笑う。
「これは驚いた。まさか"奇術師"(マジシャン)と"道化師"(ピエロ)が御執心の"黒の狙撃手"(ブラックスナイパー)様に会えるなんてねえ」
「!? 今なんて言った? 奇術師ってことはお前は悪魔の息吹(アリントデルディアブロ)の──」
俺の言葉を遮るようにYが俺に体当たりしてきた。
俺とYはもつれるように地面に倒れた。
その拍子に、舐めていた飴が噛み砕かれた。
Yに向かって俺は怒鳴った。
「危ないだろうが! それに奴は……」
そう言いつつ、ルス・ソンブラに目をやると、そこにはルス・ソンブラの銃を押さえ、首にトランプを突きつけている、仮面をつけ、白いシルクハットを被った白いスーツ姿の男がいた。
あいつは……間違いない……いや、間違いようがない……!
「てめえっ、あの時の奇術師か!」
「X、落ち着け。奴があんた達を向こうから見てたから……すまない……」
俺はYにつかまれて頭突きをされ、口移しで何かを飲まされた。
視界がぐらつく。
どうやら、即効性のある睡眠薬を飲まされたようだ。
俺の前に立ち、Yは俺の持っていた銃を奇術師とルス・ソンブラの方に向ける。
奇術師は笑う。
「ははっ。お嬢さん、あなたは望の物語(ストーリー)に必要だから、生かしておくよ。まあ君は用済みだけどね」
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